でも、中にはこんなことを言う子もいた。「お父さんに触られるのも厭なのに、一緒のベッドで寝る位なら、そのまま、眠から覚めない方がましよ。お風呂に入るなんて、死んだってできない。十六にもなって、お父さんとお風呂だなんて、あなた変態じゃない、けがらわしい。」それ以来、ポリーの綽名がついた。今だに、何の意味なのかも分らない。どうせ、テレビ漫画のタイトルか何かだろう。知りたくもない。テレビのない家庭に育って良かった。「ねえ、ポリー、ゆうべは、お父さんとおねんね、お母さんとおねんね?」私は、そういう子を無視するようにした。先生まで、ポリーさんと呼ぶ先生がいた。みんなは面白半分だったけれど、私にとっては、消せない記憶だ。ポリーと言われるのは好きではなかった。パパとママまであざわらわれているようで。でも、私は、学校なんかより、家族とか、教会の方が、ずっと大事だった。人を、変な名前で呼ぶ学校を、下品で価値のない所と見限っていた。だから、家では、何も変えなかった。変えでもすることか、前よりも、一層甘えるようになった。二人は、どんなことかあっても、私を愛してくれる。学校で、何があろうと、家に帰れば、厭なことは忘れて、パパとママと、教会の子達と、ゲームをしたり、本を読んだり、お風呂に入ったり、ピアノを弾いたり、同じベッドで寝るのをなぐさめとした。
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