引越してきて、朝から、晩まで、一緒に暮すようになって、面白いように、坊の言葉は標準語に近付いてきた。私の推測だけれど、きっと、今まで、標準語を話す話相手がいなかったのだ。アパートの友達が同郷で、工場では、一日、黙々と作業するのだとすれば、話す訓練の場がない。人の話を聞くことは聞いていただろうから、あとは、ただ、話す訓練だけが出来ていなかったのだ。朗読のときに、言葉の抑揚が、まだ、少し変だったりするけれど、ズーズー弁特有の響はない。聖書の朗読はやめて、今は、ファウストを朗読している。以前も、一度書いたことだけれど、坊は、最近、ファウストに興味を持っていて、一生懸命読んでいる。理由は明らかであーる。熟読した文章を、読んで聞かせてもらう。色々な役を読分けるから、抑揚の練習になると思って。「マーローのフォースタス博士は読んだの?」と聞いたら、図書館にないそうだ。でも、ちゃっかり探してはいたのだ。いじらしい。有隣堂に行けば、ペンギン版があるかもしれない。明日にでも、ベティ・クレアズに行って、坊の靴下を探して、ついでに寄ってみよう。
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