別行動b。坊、隣室。最近始めた英語を勉強中。
さて、坊の恋の行衛は。
坊の、受けた印象では、まったく日本人だと言う。外人の訛はなかった。着ている物も、普通の人と変らない。そう、週末の夕方のことだと、坊は言っていた。だから、制服姿ではなかったのだ。
いくつかの推理。多分日本人だから、「ジョージ」は坪田譲治のような名前。週末の夕方、あそこにいたということは、家も山手。それとも、友達の所にでも行く途中だったか。でも、毒物を持って?何の毒物だろう。実験にでも使うのか。キクヤでは、多分、坊を見て気付いていなかった。ろくに見てもいないし、恰好が違過ぎて。毒を拾ったのが四月の末あたりのことだとすると、あのころの坊は、野球帽にジーンズ、ごわごわしたセーター、今思うと、おかしな恰好だった。マイルドセブンの手提袋なんか持歩いて。誕生日の日は、本当に女の子らしくて、可愛くて、水色のワンピースだったし、頭は、美容院に行ったばかりで、私が見ても、見違えるほど。手を洗うのを見ていたのなら、怪我も、すぐに分っただろう。坊も気にしていたところ、そっと、ポケット・ティッシュを渡して立去った、それで、ほろりと来たのかな。中々出来るな、バイロン卿。レイモン卿とは雲泥。したがいかならん、あはれなるかなばう!卿はまだ学生なのだ。今度卒業としても、十八才。それは良いけれど、大学は、きっとアメリカかヨーロッパ。卒業でないなら、十六か十七。坊を気に掛けてくれるだろうか。あの顔だ、セント・モーズや雙葉の子達も放っておくわけがない。これは難しいぞ。助太刀するか。
昨日、東京見物をした。明後日、晴れたらディズニーランドに行く。
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