というようなことから、段々聞いてみると、はじまりは、私が、いつか、セント・ジョセフの裏で、坊をからかったことに遡る。そのときは、何とも思わなかった。と、本人は言う。ところが、何日かのち、私の所に来るときに、元町公園の石段を登ってきたら、彼が、中程に立っていた。足元を、あちらこちら見回して、何か、角砂糖のような、白いかたまりを拾っていた。坊は、丁度、足元に、ひとかけ落ちていたので、拾って手渡した。向うはびっくりして、拾ってくれたことには、礼を言ったけれど、「実は、これは毒物だから、手を洗わなければいけません。」と言われた。坊は、「大丈夫です。帰ったら洗いますから。」と言って離れようとするのに、「いえ、二人で洗いましょう。」と、上の水飲場まで引張っていかれた。そして、「しっかり洗って下さい。」と、洗うのを見ていた。ポケット・ティッシュを出して、「拾ってくれて有難う。これを使ってください。」と言置いて、何処かに行ってしまった。それ以来、坊はときめいてしまったというわけなのだろう。
6/6(月)の記事は続きます。[編者]
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