５／３１（火）曇 別行動ａ
ちょっと坊、お姉ちゃんをからかわないで。安心させるんなら、早く、そう言って頂戴。もう、あの子、本当に厭。でも、愛している。呑込んでやりたい位だわ。女医さんなんだって、まったく。男の人に見られるのは厭だから、わざわざ、鶴見の病院まで行くんだって。「四十才位の、優しい人ですし、全部脱が なくても良いんです。恥ずかしくないですよ。前のボタンを外すだけです。滋子お姉ちゃんも、診てもらったら。」などと。お姉ちゃんのことじゃないの、坊のことよ！道理で、変だと思った。あの日は、朝から暑いのに、長袖を着ていったのは、その為ね。てっきり、最後の日だから、上司に挨拶するので長袖にするの か、でなければ、病みあがりの用心かと思った。何であるにもせよ、これから、そういう所に行くときは、前もって言って頂戴。余計な心配をするでしょう。でも、あの子、自分で気にして、ちゃんと、女医さんまで探して用心するのね。それなら大丈夫だ。そういえば、あの子、私に、下着姿を見られたことも知らないのだわ。寝ぼけていて、全然覚がない。あの、怪訝そうな様子からだと、私に見られるのだって、きっと厭だろう。メンソレータムが分らなかったのかしら。ばれていたら大変なところだった。だのに、なぜ、あんな、ひらひらしたシャツが着られるの！本当に。理解に苦しむ。そればかりか、あんな、緩い下着を着けて。馬鹿ね、本当に。頭隠して尻隠さずでしょう。今まで見られなかったかしら。鎌倉駅では、あの人、きっと覗いていたんだわ、あの慌てぶりは。工場。そうだ、作業着。どんなのだろう。持って帰ってきたかしら。もっと早く出会っていたかった。過去が悔しい。私が、全部教えて、守ってあげたのに。そうではないか。ないんだわね。何を言っているのかしら、私。もん君、過去が悔しい。でも、せめて、未来の彼は、余計な心配をしなくてもすむ。ジョージ君だって！これからは、もう、絶対に、変な恰好はさせないんだから。お姉ちゃんがさせない。
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