あなたは、目を瞑って、黙って、一本一本抜かれていた、夢では。病院では?聴診器を当てられたときに、毛先の束を、手首で撫でられたんでしょう?もっとひどいことをされた。お節介にも、お為ごかしにも、「心配な物をお持ですな。ついでに診ておあげましょう。」と、じかに、指先で押され、摩られ、摘まれ、引張られた。何本かは抜落ちて、向うの手に残った。恥をかきながら、黙って、無表情に、体を、ぴーんと伸して、されるがままに。どうして、そんなことをしたの?お姉ちゃんが、これほど守ろうとしているのに。私は、そんなこととは、露ほども知らなくて、馬鹿みたいに、すっかり安心して、一週間を送った。あなたのバースデー・プレゼントを選びながら、本当に満足だった。あなたを、私が守っている。あなたのお乳を守っている、リボンの付いた、少しの隙間もない、防護の帯は、私の身がわり。それほど大事に、大事に、お姉ちゃんは、坊を秘し隠している。坊の、まだ見ぬ人の為に。あなたは、その彼の心をもずたずたにするのよ?坊、もしかして、あなた、あの夢に顕れたような事を、もうされたの?初は抵抗しながら、しまいには、無言で犯されていた。そのうちに、又、いつか、お姉ちゃんが、安心しきっているときに、けろりと、何でもないような顔をして、私の心に、爆弾を落して眠れないようにする気なの?ステンレス製の、あの、鈍く光る毛抜で。一本一本引抜かれて。透通る、白い腕に、一本、又、一本と張付けられ。毛の根元に、血が滲んでいる、無理に引抜くから。それを、全部、口に入れてしまう。二の腕が、薄赤く、血で汚れている。それを、口に入れながら、一本ずつ、数えていかれて。百二十六本。どうして、そのような事をされて、平気でいられるの?坊は女なのよ?綺麗なのよ?お姉ちゃん、あなたを守るために、今までに、随分みっともないことをしてきた。もうへとへとよ。あなたを抱いてお説教したときにだって、精神的に参ってしまった。どれほど、エネルギーを絞ったと思うの。ああ、お茶が欲しい。濃いお茶が欲しい!もう、絶対に、絶対に、見せちゃ駄目!お姉ちゃんだけに見せて良いの。未来の彼だけに見せて良いの。お姉ちゃんも、できるだけ早く見てあげる。坊も、命掛で守らなきゃ駄目!
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