5/28(土)曇
別行動b、一時四十五分、我が部屋。坊は、隣で読書か。
昨日、坊の、十九回目の誕生日。午後から、与に、元町で買物。プレゼントは水色のワンピースと、ピンクの波模様の入った靴。五時、キクヤの二階に行って、祝の食事。アパートの友達を誘って、七時頃からパーティーはと提案したが、金曜は、残業を命じられているので出席辞退とのこと。
そのキクヤでのこと。
二階に上るや否や、坊が、慌てたように、私のうしろに隠れて、顔を赤くした。「来ています、来ています。」と小声で言う。みっつのグループが食事をしている中に、一番奥の方に、十人位の団体が陣取っている。セント・ジョセフの制服。学生が七八人と、先生と見られる紳士が二人。学生の方は、先月、ゲーテ座で見た顔ばかり。フォースタス博士に出ていた、演劇部の子たちで、例の、可愛いバイロン君もいれば、こわいフォースタス博士もまじっている。先生のうちの一人は、髪の毛の抜落ちた、六十見当の紳士。初て見る顔だけれど、もう一人の方は、劇場で、坊の隣に掛けていた、口髭を生やした紳士。坊は、前に出ようとせず、私の袖を捉えて、「助けて下さい。お願です、助けて下さい。」と懇願した。私はぴイーんときていたので、「由加里ちゃん綺麗よ?何をどう助けるの?」と惚けて、店の人に、「すみません、奥の席が良いんですが。」と言ったので、すぐ隣のテーブルに案内された。坊は、ちょこちょこついてきながら、着席のときに、ひらりと身をかわして、私が目指した椅子を横取して腰掛けてしまった。目論見に反して、私が団体と向きあい、坊は背を向ける席配置になった。上ってきたはじめは、バイロン君は、私達に注意せずに、隣席のメフィストフェレスと話込んでいたが、この寸劇で気をそらされたのだろう、ちょっと、私を見た。彼は、ただ、何となく目を向けただけなのに、私が、目を見て会釈したので、このあいだのことを思出すらしかった。目を丸くして、見る見る赤くなった。
滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で
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