プロローグ
痛み、憎悪、そして揺るぎない強大な殺意。
色々なものがごちゃ混ぜになって、正常な思考が出来なくなり、ただただ呆然と心臓がまだ動いている瞬間を浪費していく。
そこは静寂が入り混じるただの小規模の図書館だったはずだ。
客足もまばらで、勉強するには打ってつけだと張り切っていた自分を絞め殺してやりたい気分だ。
しかし、今となってはそれも過ぎ去った時間の一つに過ぎない。狂った殺人鬼は、本当に誰一人として望んでいなかった。
気付いたら風は死臭を孕み、人間を肉片と化せ、自らの右腕を引き裂いていた。
滴る血は恐怖を与え、激痛は意識を破壊し、また脳を煽っていく。初めて見る「死」は、やはり心地の悪いものだった。ふと辺りを見回す。もはや生きている人間は二人しかいない。殺人鬼と自分___。
いつの間にか「死」がすぐ隣までやって来ていたのだ。
時間の経過と共に呼吸が日本刀のように鋭利な痛みを催し、やがて自分は息をするのをやめた。
そんな痛みを抱き抱えて、少年;駒宮礼二は最期を迎えた。
世間を騒がせた残虐な殺人鬼は、二度目の犯行中警察に射殺された。近くの住民達は安堵のため息を漏らしたという。
しかし、実際に十人近くの人間が死んでいるのだ。その部分は、やはり誰も気にしていなかった。