神様は非処女がお嫌い
荘厳で、煌びやかで、風格ある、最高級ホテル『ヴォラール』に
「うぐおおおおおおおおおおおおお!!!! 」
悲痛に満ちたディードの声が響く。
「なになに?! 」
ヨグヨグは驚いた顔で、ディードの部屋に勝手に侵入する。
「聞いてくれ……」
ディードが力なく笑う。
「うるさいですね~」
フレイヤも勝手に侵入してきた
「とにかく聞いてくれ……」
ディードが真剣な面持ちになる
「あ……ああ」
「まあ、一応……」
ヨグヨグとフレイヤの二人は、抜き身の刃の様なディードの雰囲気に押され気味になりながら、頷く。
「俺は今、パソコンでエロゲーをしていたんだ」
ファンタジック衣装を着た、可愛らしい少女が数人あざといポーズを決めていて、印象的な文字でデカデカと『ファンタジー・アゲイン』と書かれた、画像が映し出されている、パソコンのディスプレイを二人に見せる。
二人とも無言で呆れた顔つきになっていたがディードそんなことはまったくもって気にむせず話を続ける。
「このたくさんいるヒロインの一人、そうこの娘が問題なんだ……」
長いウェーブがかかった銀色の髪で紅い瞳を持ち、魔女みたいな衣装で、ロリ体型のヒロインをディードは指さす。
「そいつの何が問題なんだ? 」
ただの萌ヒロインで特に問題なさそうに見えた、ヨグヨグはそう言う。
「ああ……実はコイツは200年ぐらい生きているロリババアなんだ、まあそれはいい、問題はコイツの歩んできた道なんだ」
ディードの手が震える
「キャラ設定に何かあったの……? 」
ヨグヨグがそう聞くと
「コイツは……コイツは……! 非処女……なんだ」
搾り出すようにディードが声を出す。
「へ?! 」
ヨグヨグは間の抜けた声を出すと。
「ヨグヨグこのキャラ……名前は『フェロルト=フィーガスタ』って言います、この娘は元は普通の町娘だったんですけど、9歳の時に敵国の兵士に街を襲撃されてしまいました、陵辱された後、娼館に売り飛ばされ2年ぐらい娼婦をしていました、その後たまたま客で来たマッドサイエンティスト系のキャラにある実験の適正があると言われて、研究モルモットになりました、あ、ちなみに成長はこの時止まりました、まあそうこうで5年ぐらい過酷な実験の繰り返しで肉体も精神もボロボロになった頃、ついに完成品として凄まじい能力をもった兵器として運用され、戦争で殺戮の限りを強要され実行します、しかしその後、その能力は予想を大きく上回り成長したので、その能力を使い脱国したわけです、その後長い時を経て主人公と出会います、さまざまなイベントを経て、最期は相思相愛で幸せになるという感じです」
フレイヤがヨグヨグに解説する
「へ~不幸な女の子を救う系の話なんだね」
ヨグヨグはそう返す
「はあ、森の奥に住むロリババア魔女っ子と思ったら、穢らわしく悍ましい、売女で実験動物の殺戮マシーンの血と精液に塗りたくられらた人の悪意に汚染されたゴミクソ女だなんて俺のショックは計り知れない……」
ディードは不快そうに顔をしかめる。
「いやでも、彼女は過酷で悲惨な境遇でありまがら、気高く優しいな心は持っていた、主人公に対しても健気な愛情を向けていたじゃないですか」
フレイヤは反論する
「気高く優しい心? 健気な愛情? くだらん……実にくだらない……、宝石とは上手に磨けば美しく価値あるものになる、しかしそこら石ころはいくら磨こうと石のまま、醜く価値はない……それと同じだよ気高く優しい心や健気な愛情でいくら磨こうと、所詮は非処女と言う石にはなん意味もないのだよ」
ディードはゴミを見る様な目で、パソコンのディスプレイに映る、笑顔の少女、フェロルトを見つめる。
「いやまあ、そうかもしれませんけど……でもそうであっても、フェロルトを守り愛した主人公と、主人公を支え愛したフェロルト、お互いにお互いの汚いところや弱いところ、悲惨な過去を受け入れたのは純愛だと思いますよ」
フレイヤは諭すようにそう言うが
「はあ、人はいつもそれを純愛という……受け入れた……違うな、傷を舐め合っているだけだ、現実という悪に敗北し無様に這いつくばった負け犬同士、自分は愛されていると思い込むために受け入れたという言葉でお互い現実逃避しているに過ぎない……いや逃避すら出来てはいない、常に打ちのめされ続けている、全く美しさのかけらも感じない、まるでゴキブリの交尾を見ている気分だったよ……」
嘲り笑ううように口を歪め、ディードは言う
「ディード……なんかキモいですよ……まあ、好みは千差万別、たまたあ合わなかったんですね……はあ、なら仕方がありません、付いてきてください」
フレイヤは部屋を出ていく
ディードも出て行く
ついでにヨグヨグも出て行く
しばらく歩き、エレベータに乗り地下10階で降りると、そこには何もない白く広大な部屋と、黒く小さな四角の物体があった。
「ここは何だ……」
ディードはそうつぶやくと
「ここは無……そしてその黒い箱は『森羅万象を創造する神の箱』……今は何もないこの世界に、何かを与える物、そしてそれは箱の所有者である貴方が決めることです」
フレイヤはディードにむけて黒い箱をかざすと、黒い箱は宙を浮き、ディードの周りを旋回する。
「つまり、俺は神様になったというわけだ」
ディードは新しいオモチャをもらった子供のような顔になる
「そうです、ここで好きな世界を創造してください」
フレイヤは頷く
今ここに……世界創造の神話が始まる……。