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パパパヤー

ちかごろ色々と身の回りに変化が起きて来た。ちょっと整理してみようと思う。


まず最初は魔法についてだ。


この世界の魔法は、自らの魔力を炎や水に変換するのではなく、世界に満ちる精霊に魔力を捧げて発動する仕組みになっている。


水の魔法を使いたいなら水の精霊に魔力を捧げれば水の魔法が発動し、火の魔法が使いたければ火の精霊に魔力を捧げれば火の魔法が発動する。


威力は捧げた魔力に比例する。


ただし、人間には精霊を認識する事が出来ない。


だが、何故認識出来ないのに人間が精霊の存在を知る事が出来たのか。


ぶっちゃけ神様のおかげなんだよね。


例の神託というやつ。


世界には精霊という目に見えないものが溢れているから、魔力を捧げて力を借りなさいみたいな感じ。


魔力についても、魔力を使うと使う量に比例して身体も疲れるとか。

だったら、体力を魔力に変換して使っているのかと考えたけどそうでもなさそうだし。


魔力って何なんだろう。


伯爵の貰った本にも魔力に関しては、詳しい事は書いてなかった。


ただ魔力を使えば使う程、魔力が増えますよ。みたいな事しか書いてない。


魔法発動には捧げる魔力と呪文が必要らしい。

本にはその呪文が書いてあった。


精霊の他にも神様や悪魔に魔力を捧げることで発動する魔法もあると本に載っていた。


神様や悪魔が気にいった人間に魔法を発動する呪文を教えてくれる。

ちなみに本には神様や悪魔の呪文まで載っているが、魔力を捧げ、呪文を唱えれば必ず発動する精霊魔法と違い、神や悪魔に魔力を捧げ、呪文を唱えても必ず発動するとは限らない。むしろ失敗する方が多いから気にするなと本には書いてあった。


要はお前は気にいらないから力は貸さない。だが魔力は貰うけどね。みたいな感じだろ。

それを考えると神様や悪魔より精霊の方が好感がもてる。


魔法を使えない俺には関係のない話だけどね。


それと蘇生魔法について調べてみたけど、そんな効果の出る魔法は、本の何処にも載っていなかった。

それとなくセシルに尋ねてみたけど、彼女もそんな魔法は存在しないと言っていた。


う―――む、小人さん。あんたら一体何者なんだ。


魔法に関しては、今の所はこんなところかな。


では次はカレンの馬鹿力について検証しよう。


世の中には全く魔力を持たずに生まれる人間が居る。そう言った人間には必ず特殊な能力を持って生まれてきている。


カレンの様に本来の人間が持つ力を遥かに上回って持って生まれる者や、異常に耳や目の能力が高い者達がそれに当たる。


魔力を持たずに肉体の能力が普通の人より高い者を総じて異能者と呼ぶ。


別に彼らは魔力が無いからと言って迫害などされていない。ライター位の火しか起こせないショボイ魔力しか持たない普通の人より遥かに有益な能力と言える。


寧ろハンターに成ろうかと考えている俺にとっては、カレンの馬鹿力の方が余程魅力的にみえる。


だがカレンがより幼い頃は、力の制御に失敗して周りの人達をかなり傷つけたらしい。その所為で、カレンは周りの人達から腫れものを扱うかのように育てられて来たそうだ。と悲しげにカレンから聞いた。


そしてこの世界の事だが、行動範囲がこの港湾都市から出れない俺にとっては慌てて勉強する必要は無いので後回ししている。


おっと、忘れてはならないのがロイドさんですよ、ロイドさん。小人さん達と一緒に食べに行きましたよ。


超高級料理、御馳走様でした。


スープ美味しゅうございました。


「うまかった――」


お肉、柔らかくて最高でした。


「さいこ――」


デザートのショートケーキ有難う御座いました。


「あまーい」


この世界にプリンがあったのは知っていたが、まさかケーキもあるとは驚きだ。


しかも料理の中で一番驚いたのがマグロですよ、マグロのカルパッチョ、しかも魚の名前も同じマグロだし驚いたよ。


となればやる事は一つ。マグロと醤油ですよ、日本人なら当たり前ですよ。あっ、今俺日本人じゃないんですけどね。


小遣いを懐に入れて家を出て市場へ向う。

市場に近付くにつれて、段々人の数が多くなってきた。


流石港湾都市、獲れる魚の種類も多く、肉より魚の方が格段に安い。

しかし広いな、この中からマグロを探すのは骨が折れそうだ。


こんな時は市場に詳しい人に訊くに限る。餅は餅屋ってやつだ。

俺のいる場所から近くて店を開いている、お店の一つを覗いてみる。


うーむ色々な魚を売っているが、マグロらしき魚は無かった。おっとサンマみっけ、脂がのって美味そうだ。ついでに買っていくか。


夫婦で魚屋を経営している四十代ぐらいの、腹が出ている、ハゲ頭のおじさんに尋ねるとするか。


「あのーすいません。」


「はい、いらっしゃい。」


「サンマを一匹ください。」


「へい、毎度」


おじさんはサンマの籠一杯のサンマの山から、くちばしの黄色い丸々太ったサンマを一匹手で掴むと、器用にサンマを紙に包んでいく。


「はい、銅貨二枚ね」


俺は財布からお金を取り出し、おじさんに渡すついでに、マグロの売っている場所も訊いてみる。


サンマを包んだ紙袋を右手に持って、教えられた場所を目指す。


しかしこの世界でもマグロはマグロでサンマはサンマと呼ばれている。俺みたいに前世の記憶を持って生まれてくる人が多いのかな。


人でごった返した通路を抜けて、目的地であるマグロを売っている場所にたどり着いた。


おおー、マグロですよマグロ、大トロ、中トロ、赤みと何でもある。しかし値段の付け方が前世と逆だ。赤みの方が高く、大トロの方が安い、大トロなんて一キロ銅貨五枚で買える。食パン一つが銅貨三枚に比べて大トロのなんという安さ。


昔は日本でも、大トロより赤みの方が高かった。冷凍技術の発達で立場が逆転したんだよな。イワシにしても昔は安かった。今では高級品の仲間入りだ。


外国では余り食べない松茸やウニも、日本にくれば高級品となる。


所変われば品変わる、人の価値観なんてそんなものだ。


大トロ一柵と中トロ一柵ずつ、銅貨四枚払って店を後にする。

自然と帰宅の足が速くなる。


「ただいま」


「お帰りなさい」


母親が俺の背を向けながらお帰りなさいの挨拶をして来てくれる。台所で母親は夕食の準備をしている。トントントンと包丁が心地よいリズムを立てている。


なんと、母親が台所にいらっしゃる。これではマグロはともかく、サンマが焼けないではないか。


サンマは隙を見て焼くとして、今はマグロだ。早く刺しみにして食べたい。


自分の部屋に入り、ベッドの下の隠してある食器やナイフ、醤油、味噌が隠してある箱を取り出し、皿の上で器用にマグロをナイフで刺しみにして綺麗に並べる。


料理は見た目も大事だよね。


小人さん用に、小さくマグロをぶつ切りにした物も用意して、小皿に醤油を注ぐ。


箱から俺用と小人さん用の箸を取り出して、マグロを食べる準備は整った。いざ実食。


「「「おいし――」」」


小人さん達は美味そうに食べているが、俺には何故か一味足りなかった。


そうだ、ワサビだよワサビ、すっかり忘れてた。この世界にワサビはあるのか?、それすらも分からない。それにマグロと言ったら寿司だ。酢飯だ。米酢なんてこの世界に生まれて来てから一度もみた事が無い。


みりんは砂糖水で代用すれば良いが、米酢は代用が効かない。米で造られた酢だからこそ、ご飯に合うのだから。


愕然とした俺を、小人さん達は心配して話しかけてくれた。


「どうしたの?――」


「おなかいたいの?――」


「マグロ―」


「だいじょうぶ?――」


「……?」


「なんでもないよ、それより重大な事が判ったんだ。」


「「「なになに――」」」


「うん、実は……」


俺の説明を聞き終えた小人さん達は騒ぎ出した。


「たいへんだ――」


「たべたい――」


「おすし――」


「……なんとかして………」


グルグルと俺の周りを回り始めた。


ワ――、と叫びながら元気に回る小人達。何をするつもりなんだろう。


そして突然立ち止り、俺に向って手を上げて、


「「「「「「パパパヤ―――」」」」」」


俺の目の前には、某有名会社の米酢の瓶と茎をつけたままの生わさびが突然現れた。


ハッキリ言って驚いた。


何これ―、何これ―


米酢の瓶を拾い上げて確認すると、間違い無く本物だった。


驚いてる俺に小人さんが……


「「「「これでおすしたべれる?――」」」」


無邪気な顔で俺に質問してきた。


ホントに小人さん達、何者なんだろうか……。


それに、パパパヤーって何?



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