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小人さん

生きている者達にとって死は平等に訪れる。


始まりには終わりが有る様に、世の中の摂理である。


だが、そんな世の摂理を捻じ曲げる存在が居た。


犬の魔物によって食い散らかせられた、かつてレイと呼ばれた遺体の周りに蠢く小さな物体が六つあった。


「しんじゃったー」


「もう魔力たべれないよー」


「やだよー」


「………」


「「「「「「ワ―――――」」」」」」


ワ―――と叫びつつ、レイの周りを取り囲みながら走り回る小人達。


「しぬな―――」


「まけんな――――」


「なべ食べたい――」


「ちからのかぎり生きぬけ―――」


「しんでるよ――」


「………」


「「「「「「ワ――――――」」」」」」


立ち止り両手を上げて叫ぶ小人たち


「「「「「「パパパヤ――――――」」」」」」


叫び終わると遺体が光に包まれて遺体を修復していく。やがて光が収まると完全にレイの身体は再生してレイの心臓は再び動き始める。


「んっ」


ゆっくりとレイは目を開き始める。もう日も傾き、夕焼けの光がレイの目の中に優しく降り注ぐ。


俺は一体、確か犬の魔物に襲われて、それから…


地面に横たわりながらぼんやりと考え込んでいると、小人達が騒ぎ出した。


「成功だ――」


「いきかえった――」


「ぽんず――」


「もうしぬなよ――」


「やった――」


「…よかった……」


小人達の声を聞いて、上半身だけ身体を起こすと、俺の周りは血の海で、服なんかも破れてボロボロでほとんど全裸に近い状態だった。


小人さん達の話と状況から判断して、もしかして俺って一度死んだのか。


「ねえみんな、俺もしかして死んでた?。」


なんとも不思議な質問だが、状況的にそうとしか考えられない。


「うん、しんでた――」


「ばらばらだった――」


「おにぎりたべたい」


きーちゃんの言葉は無視しするとして、どうゆら俺はやはり一度死んだらしいが、小人さん達が破損した俺の肉体を再生して生き返らせてくれたのか。


「皆が俺を生き返らせてくれたのか」


「「「「「「そうだよ―――」」」」」」


やはりそうだったか。しかし、この小人さん達は一体何者なんだ。死者を生き返らせるなんて半端ないぞ。


それとも、もしかしてこの世界では、死んだ人間が生き返るのは割と普通なのか。


おお、勇者よ、死んでしまうとは情けないみたいな感じで…とか、お金を払って生き返らせる場所があるとか。とにかくもっとこの世界について調べてみよう。


さしあたり一番の問題なのは、俺の格好だよな。


ほぼ全裸だよ全裸、四捨五入したら全裸だよ。


俺の大事な処も丸見えだよ。いやだ恥ずかしい。


取り合えずまだ身体に着いている服の残骸で大事なところが隠せるが試してみたが、ターザンの腰布みたいになるには、圧倒的に布が足りなかったので諦めた。


しょうがないので木の葉っぱで隠してみた。


いわゆるアダムファッションだよ。


大事な場所を葉っぱ一枚で隠す格好、俺が子供で良かったよ、大人だったら街に入ったら、間違いなく両手が後ろに回っていただろう。


近くに落ちていたナイフを拾って、みーちゃんに頼んで籠の在る場所まで案内して貰う。


みーちゃんに危険が無いか確かめつつ籠の在る場所まで慎重に進むと、先程少女が戦っていた場所まで戻る事ができた。


既に少女達の姿は無く、その代りに地面には食い散らかされた犬の魔物の死体が散乱していた。魔物の死体を見て、軽く気持ち悪くなったが、魔物の毛皮を見てあるアイディアが閃いた。


毛皮を剥いで、腰に巻けば良いんじゃないかと。


早速実行に移そうとしたが、遠くの方で犬のような遠吠えが聞こえて来てから考えを改める。


これだけの血の死体だ、魔物が寄ってくるかもしれない。それに行き成り初めてで毛皮だけを取る事が出来るのか、その前に気持ち悪くなって吐きそうな予感がする。


諸事情により、毛皮は諦めて籠だけを背中に背負って森の出口まで進む。


まだ明るいので、完全に日が沈むまでここで待機して暗くなってから街へと帰ろう。夜遅く帰ったら両親は怒るだろうが、裸で帰る以上、失う物は何もない。


日が沈むまで小人さん達と会話して時間を潰し、背中に背負った籠を前に回せば、少しぐらいは誤魔化せるだろう。その代り背中がガラ空きになってしまうが仕方が無い。


日が沈み、辺りが暗くなった所で行動を開始する。街の門を潜り、街灯の設置されていない裏路地を出来るだけ使い家へと向かう。暗い為、すれ違う人や俺の後ろを歩いている人も俺の格好に気付いていない。


だが、残り後三百メートルで最大の難関が俺の前に立ちはだかる。俺の家に帰るには、大通りを通らなければ帰れないのだ。なまじ裕福だから良い立地条件にある家が、今回は仇になった。


深呼吸して覚悟を決めて壁に背中を向け、慎重に進む。ここで慌てて駆けて家に帰ろうものなら、要らぬ注目を浴びてしまう。あくまでもひっそりと進む。俺の近くを歩いている数人の人が俺の格好を見て驚いているが、ここまで来たら我慢だ、家はもう少しだと自分に言い聞かせてゆっくりと進む。むしろ気付いた人が俺の姿を確認しようとして近付いて来てくれたわかげでその人達が壁になってくれて、その他の人には見えない。むしろ好都合だ。


そしてのこり五十メートル、ゴールが見えた。


「レイ、やっと見つけた。」


声のした方を見ると、ロイドが俺に近付いてきた。後もう少しなのに、俺に何の用が有るって言うんだよ。俺は背中を壁に向けて、ロイドが近付いて来るのを待った。


「ロイドさん、こんばんわ、僕に何か用ですか。」


ロイドは少し呆れてこう言った。


「レイお前なあ、子供がこんな時間まで外で遊んではダメだろう、お前の両親なんか心配して外を駆けずり回っていたぞ、その所為で俺までお前の捜索に駆り出されちまった。」


「御免なさいロイドさん、森の山菜とりが楽しくて、つい遅くなってしまって。」


「まっ、お前が無事ならそれでいいさ、それよりもどんな成果があったのか、私にも見せてくれないか。」


そう言ってロイドが籠の中を見ようとして俺に近付いて来る、マズイ……


「へえー、結構沢山とれたんだね、このキノコは中々立派だね、こっちもって、あれ?、レイ、お前の格好なんか変だな、その籠ちょっとどかしてみてくれ。」


「止めて下さいロイドさん」


無理矢理、俺から籠を奪うロイド、大人の力に子供の俺が叶う筈も無く、ロイドにあっさりと籠を取られてしまう。


「なんだお前、その格好、股間に葉っぱ一枚って、ワハハハハハハ、腹痛え、」


ロイドの笑い声で周りにいた人々も俺の姿を見て笑いだした。


「「「アハハハハハハ」」」


俺はこの場に居るのが恥ずかしくなって、籠を放置したまま顔を真っ赤にして家に向って走り出した。


「ホントに葉っぱ一枚だけだぁぁ、ワハハハハ――」


俺の走り出す後ろ姿を見て、再度笑いだすロイド


あのやろー絶対に仕返ししてやる。


そう心に誓いながら、俺は家へと帰還した。



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