出会い
電気工事の失敗で、気が付いたら、知らない女の人に抱かれていた。どうやら俺は、噂に聞く転生というものをしたらしい。
つまりあれか、前の自分は死んでしまったという事か。
そんなの嫌だぁぁぁ、老後の時の為に必死に貯金したのにぃぃぃ、結婚も経験したかったのにぃぃ、三十歳で死にたくなかった。
これはきっと夢だ、そうに違いない。
だって、窓の外から十五センチ程度の小人妖精が六人がじっと此方を見詰めている。
幼稚園児がそのまま小さくなったようで、とても可愛く見える。
いや待てよ、もしかしたら剣と魔法の世界に転生したのかもしれない。だとしたら、俺にも魔法が使えるのだろうか。
小人妖精を見詰めながら考えていると、小人妖精は窓ガラスをすり抜けて部屋の中に入ってきた。
しかもゆっくりとだが、空中を飛んでこっちに近付いている。
うっそ~~ん、背中に羽が無いのに飛んでるよ。いや、百歩譲って魔法で飛んでるとしよう。だが窓ガラスをすり抜けるのはどう説明する。もしかして幽霊なのか。その証拠に俺を抱いている母親らしき人は、目の前を小人が飛んでいるのに、その存在に気付いていないようだ。
六人の小人は一斉に俺の身体に取り着いた。
えっ、何、何なの、俺を一体どうするつもりだ。
パニクッていると、身体から力が抜け出ている様な感覚に襲われる。どうやら小人が俺からドンドン気力か体力なんかを吸いとっているのを感じられる。
怖いよ、たすけてママぁぁぁぁ
俺は力の限り、オギャア、オギャアと泣き叫んだが、母親らしき人は、俺をあやすだけで、小人を俺から引き剥がしてはくれなかった。やはり母親には小人が見えていないらしい。
どんどん力を吸われて疲れて来た俺は、段々と眠りに落ちてゆく。
ああ、今度目が覚めたらこれが全部夢だったらいいな。
そう思いながら、俺の意識は深い闇の中に落ちて行った。