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人の気配がしたので目を覚ますと、ミオやトゥケロが戻ってきていた。テーブルの上にはリューリンもいる。
オリがそれだけ認識したころに、トゥケロも彼女の目覚めに気付いた。
「ああ、起きたか」
「……おはよ。ごめん気付かなかった……。挨拶はどうだった?」
「問題ない。特に怪我もなく勝つことができた」
「勝利勝利でーす、わん!」
「ふふん。見せてやりたかったわ、私の大活躍」
揃って誇らしげに胸を張り、そのバックにはきらきらと星が輝いているようだ。達成感を爽やかに漂わせる三人を目の前に、オリは悟った。
挨拶から始まる無傷の勝利。つい目が遠くを見てしまうのも止められず、ぽつりと呟く。
「私、この村きらいだなぁ……」
無事試合に勝つことができれば、使者として、この村のトップと会談することができるらしい。なんとも分かりやすい形式、というより考え方をしている。
「まーオリは来なくて正解だったかもね。あんた今ごろ鼻水垂れ流しながら頭抱えてたわよ」
妖精は上機嫌に言い、ぐいっと杯を仰いだ。ちなみに中身は酒ではなくて果物の絞り汁である。そしてテーブルにべったりとうつ伏せてしまった。
挨拶という名の一勝負繰り広げてきたらしい三人は、顔こそキラめいているもののさすがに疲れているらしい。オリは、ここの住人であるらしい鳥頭(比喩ではない)から渡された治療セットで、応急手当を手伝いながら、溜息をついた。
「どうした、寝過ぎで疲れたのか?」
「ううん。あ、寝かせておいてくれてありがとう。でも、戦うのなら起こしてくれてよかったのに……」
「戦うのは嫌いだと聞いたが」
「確かにそうだけど、言ってらんないし……。それに、寝てる間にそんなこと……心臓に悪い」
オリは視線を落としたまま、暗い顔をした。
「すまない。だが、俺たちを呼びに来た奴が寝かせておけとうるさかったものだから。この村のやつらは、女子供には優しいからな」
「戦士の村って聞いたのに、ずいぶん優しいこと言うね」
「ああ。ここの奴らは何より力を重視し、誇る。しかしどれも皆、自身の両親――特に母親との絆が強かったらしい。幼い頃からつきっきりで面倒を見てもらったんだろうな。そう、言うなれば、マザコン勢揃いってやつだ」
「悪意を感じる……」
なんでマザコンなんて言葉を知っているのだろう。
「その結果、女性に優しいという村の特性が生まれた……俺はいいことだと思っている。住みたくはないが」
「ここのこと嫌いなの?」
「長く敵対関係にあったから、どうしても、な」
トゥケロの手当(といっても、消毒をして傷薬を塗りつける程度だが)を終えてミオの方を見れば、すでにごろりとくつろいでいた。拳にはボクサーのようにテーピングがされている。
ミオは寝転がりながらオリとトゥケロの話を聞いていたようで、不思議そうに首を傾げている。
「でも、お父さんとお母さんに育てられるのって普通ですよね? 私は父、母、姉と一緒に住んでましたし」
「まあそれぞれ異なるな。ウチの村ではそっちのほうが少数派だ」
なんとなく、分かる気がする。この『草(どきどき動物園)』の住人は一見したところ、肉食を中心としていそうな、「動物」と一般的に形容される生物の姿をした者が多かった。彼らは産まれてすぐその傍らに母がおり、しばらくの間両親から世話をしてもらう。ミオもこのグループにいれていいだろう。
一方トゥケロ達の村、『森(わくわく植物園)』に多かったのは爬虫類や両生類、またはプリェロのように動く植物のような住人である。誕生した時点で親から離れ、自力で生きていかなければならない、そんな状況に置かれている。
とにかく根本的に違うのだ。このような舞台にあって、種族間で諍いが起こるのも無理はない。
「オリ様も家族と住んでらっしゃったんですよね?」
「……ん、ずっとね。その――リューリンは?」
「ばっかアンタ、私はメルヘンでファンタジーでラブリーでキュートな生き物なの。ママンやパパンなんていないから。まあそれ以前に、私たちには性別なんてもの自体無いんだけど」
まあなんてったって、彼女は腐っても妖精なのだ。普通の生き物と同じように考えないほうがいいのかもしれない。
「その割には女の子っぽいよね」
「別になんでもいいんだけど、女の妖精って多いし自然とね。植物好きだし。それにかわいいでしょ?」
「へーへー」
「反応うすーい。男っぽくしてあげよーか? オホン。……俺のことは構うんじゃねぇ! 逃げろ、早く行くんだ!」
「絶対もっといいセリフあっただろ!」
そんなことを言い合いながらオリとリューリンがけらけら笑っていると、外でなにやらバッサバッサ音がした。
「邪魔をする。水を持ってきた」
ひょいと顔を出したのは、先ほど治療セットをくれた鳥頭だった。
白羽の鳥頭に、茶羽の体と、まるで鷲のような配色だ。全身羽毛に覆われて本当に鳥そのものだが、体長は人間のオリより頭一つ分ほどでかい。筋肉も隆々で、この体躯でよくもまあここまで飛べるものだとオリは心から感心した。あと胸に顔うずめてもふもふしてぇ。
羽とは別にある人間のような手(こっちも羽毛でもふもふしている)には木編みのバスケットが握られていた。中からちゃぷん、と水のたゆたう音がする。
「疲れただろう、ちゃんと全員分あるぞ。今のうちに休憩しておけよ!」
「ああ。心遣い感謝する」
でてくるのは皮製の水筒、コップ、臭い葉っぱ(リューリン曰く湿布代わりになるらしい)。これだけなら近所にピクニックにでも行ったかのようだ。
トゥケロはオリにも水を汲んで渡した。オリはコップの水面を見つめながら、軽く揺らして遊んでみた。
「私なんもしてないけどね」
「ははは、大丈夫だ。またすぐに試合が始まる。活躍したければ準備しておくといい」
何も大丈夫じゃない。
しかし相手が心からそう言っているらしいことに気付くと、オリは「はい」と強張った表情で頷くことしかできなかった。
挨拶がなんで試合みたいになっているのかよく分からない。なぜそれを皆当然のように受け入れているのかもよく分からない。
ここまできてようやく、なぜトゥケロがオリ達を連れてきたのかが分かった。こうしてオリ達を戦わせれば、『森』の村人たちが傷つかずに済む。結果がどうなろうと村同士で怨恨を残さずに済む。突如はいってきた新戦力ということで、このどきどき動物園こと『草』への牽制にもなる。
他にも理由はあるのかもしれないが、オリの頭でぱっと思い浮かぶのはこの程度だった。
「いや、試合じゃない。恩返しだと考えれば……一宿一飯に対するお礼だと考えれば、安いもんだ……。御恩と奉公……いざ鎌倉……」
何故かいきなり深刻な顔付きになったオリに一同首を傾げたが、まあいつものことだと放置した。鳥頭も、仲間が普通に受け入れているのだからと、さらりと流すことにした。
「一休み終えたころにまた戻ってくる。それからすぐ戦えるように準備しておいてくれ」
「あ、はい。あの、さっきもお薬と包帯、ありがとうございました」
「いや、それは兄だ。どれも戦士への配給品だから気にすることもないぞ」
鳥はそれだけ言い残して出て行った。ちょっと気まずい雰囲気のなか残されたオリたちは顔を見合わせたが、彼ら二人の違いを説明できる者は誰もいなかった。
荒縄と丸太で囲まれた、粗末だがやけに広い四角形のリングの中。
悲鳴をあげながら、オリは懸命に転がっていた。
「ぎゃあああ豚はええ!! いぬ!? いぬー!! ぬうううう!?」
「おら待てやゴラァ!!」
相手は豚と犬と、それから山羊だ。もちろん四足歩行でただ鳴いたりするものではない。武器を構え、鎧を着こみ、全力でオリ達を狩りにきているモンスター達だ。どれも細微は異なるがオリの知っている動物のような頭で、人間のように二足で全力ダッシュをかましてくる。
オリは斧を担いだ豚に追いかけまわされた挙句、地面を転がり、待ち受けていた犬に石剣で戦いを挑む羽目になった。
トゥケロは身軽にひょいと飛び上がると、丸太の一本に飛び乗った。
「おいオリが狂ったぞ! さっき頭打ったのがヤバかったらしい!」
「オリ様はいつもあんな感じですよっ! 馬鹿にしないでください!!」
ミオが向かってきた豚にアッパーを喰らわす。のけぞる相手に追い打ちをかけようとすると、相手はそれを図体のわりに素早い動作でかわし――もともとそれを狙っていたのかもしれないが――トゥケロ目がけて斧を振りかぶった。
そしてそれを分かっていたかのように、どこかうんざりした表情で、トゥケロはひょいと跳んでそれをかわす。
待ち構えていたのは山羊だった。狙いすまし、スマートな動作で持っていた槍を投げつける。振り回すにしては短いと思っていたが、投擲武器だったらしい。当たればトゥケロの腹ど真ん中を貫いていただろう。
しかしその追撃もトゥケロが投げたクナイに弾かれ、無駄に終わった。
「チッ」
舌打ちしたのはどっちだったのだろう。
とにかく豚も山羊も苛立ったように武器を担ぎ直し、またトゥケロへと向かっていく。
取り残されたミオとリューリンは、蚊帳の外にされたような気分で肩を竦めた。
一方、犬とタイマンを張っていたオリはというと、まあまあいい感じに殴り合っていたのだが、ひっかき攻撃を避けて尻餅をついた瞬間、ふくら脛を噛みつかれてしまった。
「ぎっ……!?」
悲鳴を咽喉奥でむりやり押し潰すと、オリは躊躇なくそいつの脳天を棒でしたたかに殴りつけた。傷口が深くなるのも構わず、何度も何度も繰りかえす。
そして顎から力が抜けた隙に逃げだした。逃げだした、というよりは這いつくばって匍匐前進したというほうが正しい。
「いっ、痛い、痛いぃ! うわ歯形から血がだらだらしてる。素人のやり損ねた現代アートみたくなってる。傷深いよぉーなんか変な液体出てる気がする。いや出てない、透明ななんかなんて出てない」
噛まれた部位に手をあてれば、指の隙間から血がだくだくと、面白いくらいの勢いで流れでていく。べらべら喋って意識を繋いでないと、失神してしまいそうになるくらい痛い。
素早く止血するべきなのだろうが、あまりの痛みにオリはそれどころではなかった。足に触れる手がぶるぶる震え、冷や汗が丸まった背中にじわりと浮かぶ。
「オリ様、筋肉をふんって操って怪我と血をぐぐっと押さえて下さい! 血が止まります!」
「ごめん筋肉語わかんない」
「黙りなさいバカ犬! オリ、自分の構成体の一部を傷口に移すのよ! 全体を均一に構成するようイメージするの!」
「ごめん心から分かんない。二人ともなんか気を使わせてごめんね。大丈夫だから」
遠くの二人の声に聞こえるかどうか分からないがブツブツ返事をしていると、傍に立つ気配があった。
静かで凪いだ風のようなそれはトゥケロのものだった。
「気持ち程度にしか効かないが、すごくしみる薬があるぞ」
「参加しなくていいから。それよりさっきから、トゥケロばかり狙われている気がするんだけど」
さっきからオリが懸命に囮を務めているにも関わらず、どいつも必死で追いかけてこないのだ。豚も犬も山羊もちらちらトゥケロを確認しては、そちらの方へ攻撃を仕掛けにいってしまう。念のためミオやリューリンを近くに置いてみても、結果は変わらなかった。
「まあ、少し前まで村同士で争いあっていた仲だからな。何度か見た顔もある」
「鬱憤晴らしか……?」
トゥケロは「多分な」とたいしたことでも無さ気に呟く。
嫌味なことをする、とオリは鼻でも鳴らしてやりたくなったが、激痛で息をするのも辛かったのでやめた。
「それよりオリ、止血したほうがいい。死ぬぞ」
「うおおおお。リューリン、幻覚見せて誤魔化してよぉー」
「そんだけ痛いもん誤魔化せるワケないでしょ。薬あげるから自分で塗って」
「あざっす……」
痙攣するふくら脛に、投げよこされた小さなケースから薬を小指ですくって、塗りこんでいく。流れる血のせいでちゃんと塗れている気がしないが大丈夫なのだろうか。筋肉語を理解するべきなのだろうか。
とオリが思案し始めたところで、ちょっとばかし痛みが和らいできた。薬を塗っているのか血を広げているのかよく分からないまま、とにかくせっせと手を動かす。
しばらくすると、痛みは残るものの流血はおさまった。こいつぁすげぇ。
「ふぅ。さすが妖精さん……」
息をついて身を起こせば、トゥケロが敵の手からひょいひょい逃げ回っているところだった。表情はいたく真剣そのものだが、逆におちょくっているようにも見えるのは何故だろう。真面目な奴なのだが。
(さてどうするかな)
この村の住人から殺される可能性が低いと思われたので、始めはオリが囮になっていた。しかし優先的にトゥケロが狙われているのなら、あまり意味がない。
オリが噛みついてきた犬を叩きのめしたため(死んだ可能性もある)、残りは山羊と豚だ。
「みおーみおー」
「はいっ。なんでしょう!」
「あっちとしては二対一で、おまけに私たちが三人ついてる、みたいな認識なのかな」
「はい。だってさっきから私たち、相手にされてませんもん! オリ様が噛みつかれたのも、それでオリ様を引っ込ませてトゥケロと戦うつもりだったんでしょう」
「うん、清々しいくらいだな。トゥケロが応援を求めてこないのは、なんだろう。一応あっちへの罪滅ぼしみたいな感じなのかな。それとも勝てるって自信の表れ?」
分からん。まあ聞くほどでもあるまい。
「やー、やっぱり二対一っていうのはどうなのかな。そこまでトゥケロのこと信頼できないし。……うん、ミオはリューリンとそろって援護。どっちか片方だけ倒して、後はトゥケロに任せて放置しよう」
聞いていたらしく、飛んできたリューリンが首を傾げた。
「オリは?」
「見物してる!」
爽やかに言い切れば、その小さな手でひっぱたかれた。
当のこの身を除き、自分の愉快な仲間たちは大概ハイスペックだ、とオリは思う。
ミオは一度戦闘に出れば、その脅威の身体能力で八面六臂の活躍をみせる。発達した五感や鋭い野生の勘は、普段から敵を警戒しなければならないオリにとっては、なくてはならないものだ。それから病気になったことが無い(本人が気付いていないだけの可能性もあり)らしいのだが、これもいざという時には最高に役立つスキルだろう。
そんな特性だけでなく外見にも、人よりも獣らしい特徴が多いということに気付いたのは最近だ。
リューリンは幻覚を操ることができる。本人曰く得意とのことだが、小さな体だ。連発することは難しいらしい。杖を使えばその能力も補うことができるのだろうが、普段は弁えているのか、あまり使おうとしない。
また、彼女の植物に関する豊富な知恵は、ありとあらゆる場面で役立ち、オリの生活を支えてくれている。一見に不利に見える小柄な体でさえ、敵の目を欺く際には非常に便利なものに代わるだろう。
正確には仲間ではないものの、臨時で共闘しているトゥケロについては、そのまま忍者のイメージがあてはまる。まず身軽で、気配を隠すのがうまい。懐などに潜ませた投擲用の武器を使用するのも、隠密向けの印象を受ける。それなのにその高い背丈のおかげで、腕力にも優れているのは羨ましく少し妬ましくもある。
そんな彼の一番の武器は、冷静な状況判断力だろう。いつだって全体を見通していて、彼が味方の不利になるように動くことは絶対になかった。
もちろん彼らにはそれぞれ短所もある。
ミオはうっかりしているとこちらが害を受けるほど考え足らずで、連携プレーも苦手だ。自分第一なリューリンについては、何よりももまず心から信頼することができない。トゥケロは普段は案外大雑把なので、緊急でないことに関しては、案外爪が甘かったりする。
だけど全員、その程度の短所なら打ち消せるほどには強いので、こうして残っていた山羊と豚をあまり時間もかけず倒してしまったのも、当然といったら当然のことだった。
「いや、さすが『森』の精鋭だけある。うちの奴らをあんなにアッサリ片づけちまうなんてな」
『草』のトップは、分かりやすいことにライオンだった。
あまり櫛を通していなさそうなもっさりと長いタテガミは、ぜひとも触ってみたい!、とオリに思わせたが、リューリンにしてみれば苛立ちをさらに募らせるものに過ぎないらしい。
「何よアイツいけしゃあしゃあと……。あのオシャレタテガミを真っ赤に染めてやろうかしら?」
「お、しゃあだけに?」
「は?」
「ごめん……」
こんなに睨まれると思っていなかったオリは、うなだれて身を縮こまらせた。
ライオンは、自分の小指ほどのサイズの妖精に睨まれただけで、はた目から見ても情けないくらいにビビったオリを一瞥し、鼻息を深く吐いた。呆れたようであった。
「ま、苛立つ気持ちは分かるが。こんぐらいで死ぬタマじゃあねえと分かってこそのアレだ。勘弁してくれよ。――それに、こいつを憎く思うあいつらの気持ちも、分からんこともないからな」
「そうだな。俺も分からんこともない」
「ハハッ。お前が言うかよ、それを」
しかし、こういった話し合いというのはもっと堅苦しいものだと思い込んでいたのだが、トゥケロは正座こそきっちりしているものの口調は楽に崩しているし、ライオンもゆったりと胡坐をかいて遠慮のない雰囲気だ。
「それにしてもトゥケロ。お前、なんというか……腕は確かみたいだが、えー、やけに愉快なチビ共を連れてきたな。――で。わざわざお前がここに来たってことは……腹割ってサックリ話そうてことなんだろ?」
「理解が早くて助かる。正直今回の問題は、あの紙きれ一枚で済ませていいもんだとは思えなくてな」
書簡には曰く「知らん」とあったが、実際のところはどうなのかと、腹を割って話にきたのが今回の目的だ。
集落同士いざこざはあるものの、トップ同士はそれなりに気心知れた仲であるらしい。
やけにざっくりしているが、まあそれくらいの意気でなければ、こんな(地上と比べ)せせこましいところでの争い合いつつの共存なんて不可能なのだろう。オリはよそ者らしく冷静に分析した。
「ちょっと、こいつの言うことなんて信じられんの? ずっとぼこり合ってたんでしょ?」
「おいおい、妖精。俺が個人的に憎くて『森』や『川』と殴り合うわけじゃねぇぞ」
「そうなの?」
「あたりめーだ。領土然り獲物然り、だいたいがなんらかの損得勘定に基づいて、ああなるんだ。土地も限られてくるしな。だが、さすがにながーく続け過ぎちまった。今は俺含めた全員……土地もだな。疲れ切っちまった。わざわざそっちにちょっかいかけて、この休息をぶち壊そうとするはずがねぇだろ?」
確かに一理ある。
初対面のオリは彼の言葉と本心についてどう捉えたらいいのか分からないが、トゥケロは信用したらしいし、それなら別に大丈夫だろう。正直、本格的に争いが始まったら始まったで、とっとと下層へとんずらこくだけである。まあ、受けた恩くらいは返すだろうが。
「ま、それにしても。違和感があることに変わりはない。もういっぺん会合を開いて、ガッツリ話し合ったほうがいいかもしれんな。うん」
「ああ。ウチもそう考えていた。それじゃあ参加ということで、問題ないな?」
「当たり前だ。ちょっと待っとけ」
というわけでライオン、参加表明の書類をさらさらっと書き出す。
その書簡を受け取り、トゥケロが懐にしまい込み、これにて『草』でのオリ達の任務は終了となった。
のだが。
「次は『川』だな」
「え?」




