表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

prologue

 今年もまた、花が咲き乱れる季節がやってきた。

 魔術師が多く暮らすことで有名なフローレ国。国民のほとんどが魔術を使え、使えない人はかなり少ない。そんなフローレ国の首都フィーネには、国立中央魔法学校がある。

 その学校の高学部の教師であるハルル・セイエナ・トラプソンは、自分が担当することになった月組の名簿とにらめっこをしていた。

 彼女は、とある生徒の名前を探していた。

 その少女にとっては、今年が最後の学校生活になる。ハルルは、どうしてもその少女の担任になりたかった。

 名簿とにらめっこを始めて数分が経った。



―――あった!



 ハルルは、名簿の一番上に書かれているクラス名を見ては少女の名前を見る。そして、見間違いでないことを確認した彼女は、喜びの声を上げる。


「やった!」

「嬉しそうだね」


 ハルルの友人が、苦笑しながら言う。ハルルは本当に嬉しそうに笑い、頷く。


「あのね、今年もあの子の担任になれたんだ」

「ハルルは本当に、あの子のこと気に入っているのね」

「もちろん。成績は良い方だし、古代文字に詳しいから」


 ハルルは少女のことを話ながら、数年前のことを思い出していた。

 それは、その少女が入学してきてすぐのことだった。

 この学校は国立であるため、貴族の生徒が多い。そして、レベルも高い。一般人の子供もこの学校に通ってはいるが、貴族の子供から嫌がらせを受けることもある。その少女も一般人だったため、時々嫌がらせを受けていた。

 そんなある日、その少女はクラスメイトの貴族に『貴族ってそんなに偉いの?』と言った。その場にいた担任が、ハルルの友人で、ハルルのもとにこの話が伝わった。


「それに、おもしろい子だから」

「へぇ…。ハルルはそれでいいだろうけど、あの子はちょっと可哀相だな…」

「どうして?」

「だって、その子の高学部の担任が、三年とも全て同じなんだもの」


 すると、ハルルは頬を膨らませて


「ひどーい。別にいいじゃない」


 と言った。ハルルの子供のような態度に、彼女の友人は苦笑する。


「でも、あなたは良い先生だから。きっと、その子も判っているわよ」

「ありがとう」

「ねぇ、少しお茶の時間にしましょう?」

「いいね。ちょっと外の裏庭に行こうよ」

「そうね」


 二人が職員室を去った後、春の風がハルルの机の近くを通った。机の上にあった、クラス名簿が床に落ちる。その名簿の名前の前に、印が付けられている名前が一つだけあった。



―アヤ・フォルアナ・ウィルソン



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ