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短編集  作者: 更級優月
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プラネタリウム


 ある国のある街に、ちょっと変わった家がありました。

 そこには屈強であるものの、子どものように人懐っこい笑顔を持つ父親。頼もしそうであるものの、どこか守ってあげたくなるような母親。そして、晴れた日の夜には必ず屋外で満天の星を眺める、星空観察が大好きな男の子が住んでいました。

 一見どこにでもありそうな家庭ですが、この男の子が住んでいる部屋が変わっているのです。

 それは、天井に描かれた満天の星空。

 まるで、屋内プラネタリウムを鑑賞しているかのような星空が、男の子の部屋の天井に広がっているのでした。


 ある日、仕事に行くという父親と母親を玄関で見送った男の子は、防犯のために鍵を掛けて自分の部屋へと戻りました。ベッドに横になると、大好きな星空観察を始めました。

「あれがシリウス、ペテルギウス、ベガ……」

 ぽつり、ぽつりと、星々の名前が男の子の小さな口からこぼれ出てきます。男の子は満足そうに星空を眺めていましたが、いつのまにか眠ってしまいました。


 しばらくして、男の子はゆっくりと目を覚ましました。

 窓の外はもう真っ暗です。お父さんとお母さんも帰ってきているに違いありません。

 なにより、男の子はおなかが空いています。

 男の子は部屋を出ました。しかし、家の中には静けさと暗闇しかありません。いつもなら、リビングから明るくて暖かい光が溢れているはずなのですが、今日は違います。男の子はいつもとは違う状況に、少し不安を覚え始めました。

 そんな時、玄関の呼び鈴が鳴りました。

 男の子は玄関へ走っていくと、鍵を外しました。そこに大好きなお父さんとお母さんがいると期待しながら。

 しかし、そこに立っていたのは二人のお巡りさんで、男の子のお父さんとお母さんではありませんでした。

「君が××君だね?」

 二人のお巡りさんのうち、優しそうなお巡りさんが、しゃがみ込み、男の子の目の高さで尋ねかけました。

「うん」

「それじゃあ、今から悲しいお知らせを君に聞いてもらうんだけど、大丈夫かな?」

「……うん」

 男の子の了解を得て、お巡りさんは話し始めました。


 それは突然の出来事でした。

 一台の大型トラックが、男の子の両親の乗った乗用車と正面衝突をしたのです。原因はトラック運転手の居眠り。この事故で、乗用車に乗っていた男の子のお父さんとお母さんは、帰らぬ人となってしまったのです。


 男の子はひどく悲しみ、傷つきました。

 幸いにも、男の子の身元はおじさんが預かってくれることになりましたが、男の子は頑として嫌がりました。

 やがて、男の子は塞ぎ込みがちになり、あまり部屋から出てこなくなってしまいました。


 今日も男の子は星空を眺めます。

 満天の星空には、明るく輝く二つの星がありました。

 男の子はその星を見ていると、心が落ち着いていくのを感じ、ゆっくりと瞼を閉じました。


今朝見た夢に加筆したものです。

(初出:2013年9月14日、当サイト)

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