表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の官能小説が大流行した結果、恋愛経験ゼロなのに女嫌い王太子の恋愛指南役になりました  作者: 高八木レイナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/7

プロローグ

新連載始めました。

全23話。毎日20時更新です

 王宮秘蔵書庫。古紙と革装丁の匂いが静かに満ちる、閉ざされた空間で——。


「お前は……男に慣れているんだろう?」


 耳元に落とされた低い声に、リシェルの心臓は止まりそうになった。

 リシェルは片耳を押さえながら、必死に呼吸を整える。頭の中でぐるぐると繰り返されるエリオスの言葉。


(落ち着け。落ち着くんだ、私……!)


 だが、落ち着ける状況ではない。

 まず、見られていた。

 昨日のカフェ——編集長ギルベルトとの打ち合わせを、エリオス殿下は目撃していたらしい。しかも会話まで耳に入っていた可能性が高い。恋愛小説について真剣に語り合っていたあの内容を。


(で、でも……)


 リシェルは恐る恐る、殿下の言葉を反芻する。態度、表情、言葉の端々。


(……気づいて、ない?)


 どうやら彼は、リシェルが官能小説作家『無慈悲な夜の女王』だとは思っていないようだった。それだけは分かった。


 ——ただし。


(ギルベルトさんと付き合っていると思われてる……!?)


 思い当たる節しかない。二人きりのカフェ。恋愛の話。誤解されても致し方のない状況だった。

 ちがうんです殿下——とリシェルは心の中で全力で叫んだ。なぜあの場にいたかといえば、理由はただひとつ、官能小説の打ち合わせだったわけで——。


(口が裂けても言えないでしょう、それは!!)


 リシェルは自分が官能小説家なことは秘密にしているのだ。

 つまり、誤解を解く言葉がない。口を開けば開くほど、深みにはまる予感しかない。

 そのとき、エリオスが静かに続けた。


「俺の……恋愛指南役になってほしい」


(……は?)


 あまりにも想定外の展開に、リシェルの思考は三秒ほど真っ白になった。

 恋愛経験ゼロの官能小説家リシェル・フェルヴァン、二十歳に。

 今この瞬間も、王太子殿下が目の前にいるというだけで胸が痛いほど鳴っている、この自分に。


(無理無理無理無理無理……!!)


 ――しかし。


「……無理か?」


 その声は、先ほどまでとは少しちがった。

 整いすぎた顔に、わずかな不安の色が滲んでいる。

 リシェルは、その顔を見てしまった。


(断れない……)


 ぎゅっとスカートを握る。


「い、いいえ……お役に立てるかは分かりませんが」


 エリオスの表情が、かすかに緩んだ。


「……そうか」


 ——少しだけ、嬉しそうに見えた。

 リシェルは心の中で、もう一度だけ叫んだ。


(私、恋愛経験ゼロなんですけどーーー!!)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ