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終末世界で頑張ります  作者: 深蒼 理斗


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第九話:氷壁の国ノーザリア

雪は、降っているというより“そこに在った”。

 空気が白く、息が白く、音が吸い込まれていく。


「……寒すぎだろ」


 ツバサがぼやいた瞬間、凍った風が頬を殴った。

 ユナは肩をすくめながらも、ユウマの歩幅に合わせて隣を歩く。

 恋人として並ぶ距離は近いのに、戦場の緊張は薄れない。


 レンは先頭で、刀の鞘を雪に触れさせない歩き方をしていた。

 ソウマも同じく刀を腰に、無駄のない呼吸で周囲を見ている。

 ユウマはイツキの形見――リュミエードの鍛冶屋で修理・強化された短双剣を、

 外套の内側で確かめた。冷えた鞘の感触が、落ち着きを取り戻させる。


 ユイは少し遅れてついてくる。白紗の奥で唇が動いていた。

 寒さ除けの小さな祈り――“風邪を引くな”とでも言うように、淡い温度が隊の周囲にまとわりつく。


 山脈を越える手前、巨大な壁が見えた。

 石と鉄でできた城壁――だが、城壁というより氷嵐そのものに耐えるための骨格だ。


 壁の上を歩く兵の足取りは重い。

 それでも、目は澄んでいる。

 寒さに負けない目ではなく、寒さを前提に生きる目だった。


「よそ者か」


 見張りの兵が言った。声は荒い。だが敵意ではない。


「アシハラより来た。英雄隊だ」


 レンが短く答える。

 兵は一瞬レンを見て、次にユウマを見る。最後にユナとユイ、ツバサとソウマへ視線を流した。


「……入れ。だが、歩き方で判断する。ノーザリアの寒さは弱者に優しくはない」


 そう言って門が開く。

 開いた瞬間、街の中から声が飛ぶ。


「遠征の連中だろ? 腹減ってるなら、鍋があるぞ!」


「凍え死ぬ前に酒でも飲め!」


 ――距離が近い。

 警戒もある。だが、それ以上に“放っておけない”が先に来る。


 案内役の兵が名乗った。


「ノーザリア英雄隊、コンラート・ノーザンだ。陛下に取り次ぐ」


 背が高い。肩幅が広い。前線の人間の骨格だ。

 その後ろにもう一人――若い癒し手がいた。


「ニコラス・ノーザン。……父の息子だ。よろしく」


 ユイが目を細める。癒し手の癖が、指先に出ている。


 コンラートが言う。


「数日滞在するそうだな。ここでは“甘え”は死ぬ。だが、仲間は見捨てない。覚えておけ」


 ツバサが反射で答えた。


「……はい」


 その返事が自分でも意外だったのか、ツバサは一瞬だけ口を引き結んだ。

次話は【毎日21時30分】更新です。続きが気になったらフォロー/★で応援してもらえると嬉しいです。

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