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武蔵川大学の学生はバカばかり

1.

わたしが住んでいたのは、袋池よりも白目に近い西袋池の一角だった。


親父の会社の寮があり、わたしたち家族はそこに暮らしていた。


あの頃の西袋池には、まだ空き地が多く、古いアパートが並んでいた。


商店街もあり、子どもの数も多かった。


その名も伏見桃山商店街。


晴れた日には、遠くに富士山の輪郭が映える。


公立小学校には1学年に4クラスあり、1クラス45人もいた。


1クラス40人に減らせという運動さえ起きていた時代の話である。


3年生の夏休み、近くの武蔵川大学の学生たちが、「子どもたちと遊ぼう」というチラシを配ってきた。


20人ほどの子どもが集まり、ゲームをしたり、歌を歌ったりした。


わたしは暇つぶしのつもりで参加していたが、次第に何のために学生が子どもと遊ぶのかが気になった。


思い切って聞くと、学生の一人がこう言った。


「学校の先生になるため」


わたしは少し驚いた。


学校の先生のほうが、ずっと頭がよくて偉いはずだからだ。


わたしは、いつもわたしの後ろに立っていた学生を見上げて言った。


「お前なんか無理だ!」


彼は少し困ったように笑っただけだった。


2.

最終日には、夜まで遊んで、鍋でカレーを作って食べた。


前の日にリーダーの学生が「弁当に梅干しを入れれば腐らない」と言った。


わたしは心の中で、「こいつら馬鹿だ」と思った。


腐らないのは梅干しに触れているところだけだと本で読んだことがあったからである。


夜7時頃、子どもを家まで送ることになった。


ところが、彼らは送るのを一人に押し付け、それ以外の学生は駄弁っていた。


その一人は子供全員を連れて、袋池方面、すなわち北側に向かった。


南側に住んでいると始めから教えてあったはずだ。


北側は反対方向で遠回りになる上に、もしそこで解散でもされたら、わたしは迷子になる危険がある。


わたしは袋池の南側に住んでいたので、一人で大学のそばに残った。


大学から離れなければ、夜になっても守衛が助けてくれると思ったからだ。


案の定、子どもが一人いないと気づき、学生たちは慌てて、わたしの家にまで電話した。


やがて父が迎えに来て、ようやく帰れた。


そのとき学生たちは口々に「すみません」と言った。


謝って済むことではない。


袋池は暴力団事務所も有り、バーなどが多く、危険地帯だからだ。


やはり「お前なんか無理だ」は、間違っていなかった。


3.

わたしは小学4年のとき、都内の別の区の住宅地に引っ越した。


18歳のとき、武蔵川大学で英語弁論会があったので、それを見に行くついでに、もと住んでいた場所を散歩したことがある。


わずか9年しか経ってないのに、様子が全然違う。


八百屋もないし、隣りにあった文房具屋もない。


商店街はなくなっていた。


後にわたしが知ったところでは、この地は新生袋池線が開通してから開けたらしい。


近所の八百屋の親父が息子に高校に行かずに、店を継げと強制して親子喧嘩になった。


いかにその親父が無教養だったかわかるというものである。


もちろん、継いでなどいない。


隣町に漫画家が住んでいたアパートは有名であり、その話を新聞で読んだことがあるが、どうも袋池は急に変わったらしい。


アニメの会社もその近辺にあった。


小学2年のとき、ある生徒がその会社に忍び込み、セルロイドの原画を盗んで学校に持ってきたことがある。


わたしはそんな事していいのかなと思ったが、やはり教師に叱られて返したようだ。


もっともアニメの原画はフィルムに撮影してしまえば、用無しであり、倉庫に閉まってあったのを盗んだのであろう。


大事なものなら、そう簡単に盗めるはずがない。


4.

今その小学校のホームページを見ると、生徒数が激減しているようである。


父兄が交代で自転車で巡回している。


それほど治安が悪いのである。


それに白目駅近辺には、私立大学の付属小学校が多く、公立に生かせるのは、水商売関係者の産んだ子供くらいであろう。


ではなぜ、生徒数激減にも関わらず、廃校されないのであろうか?


わたしには長い間、わからなかったが、最近ようやくわかった。


特別支援学校だからである。


なるほど袋池や白目から徒歩5分の特別支援学校なら、存在価値がある。


特殊学級にいて、体育の授業だけ一緒だった石毛くんがサッカーボールを追う姿が脳裏に蘇った。





























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