プロローグ
「あとどれくらい続くのだろう。」
歩いても歩いても、目の前に見える家は遠のくばかりだ。荒廃した果てしない土地に舞い上がる砂埃は、自身を嘲笑しているかのようだった。あの地平線よりずっと向こうの都から、たった一人の老婆は帰ろうとしていた。
__家族も、友人も、金も何も、何処にあるのやら。あるの砂漠にただ一つ浮かぶ、今にも崩れそうな古びた家。すっかり痩せこけた、畑だった土地。そして、いつ終わるかも分からない虚無と化した日々。それだけが彼女に残されていた。
__彼女の体力も、もう間もなく尽きる。
砂漠に座りこんだ老婆は、もう砂嵐に飛ばされるのを待つのみだった。……これで、何度目になるだろうか?座り込むと夜が更け、しばらくしてまた力無く立ち上がり、家を目指す。それだけの日々がもうじき一月にもなる。
……だが、今日は違った。目の前には、蝶のように地に降り立つ少女がいた。随分と疲弊している。旅人だろうか、と老婆の勘が呟く。少女は言葉こそ発しなかったが、老婆の心に、直接語りかけていた。
「まぁ、最後に丁度良いではありませんか。ルチェルニア、手を出しなさい。」
もうずっと呼ばれることのなかった自身の名に老婆は目を見開いたが、もう限界だったのだろう。すぐにためらいなく左手を差し出した。少女はにっこり笑うと、手の上に輝く石のようなものを乗せた。ルチェルニアはそのまま、しばらく動かなかった。その上に、少女の目から涙が零れ落ち、その瞬間、激しく光りだしたのである。少女が笑っている、そう彼女は気配で感じ取った。そして…光がおさまり、顔を上げると……少女は何処にもいなかった。石も消えていた。彼女が確実に認識できたことはただーつ。
「力を、もらった。足のしんどさも、砂嵐も何処かへ消えた、光と一緒に。」
そう、この瞬間、彼女は不思議な力……のちに「魔力」と呼ばれるようになるものを授かったのである。
やがてルチェルニアは、同じく荒廃した土地に住む達に、その力を与えた。彼女は、彼らにとって聖女であり、噂を聞いた都の者達にとっては脅威だったのである。とうとう国は彼らを討伐しようとした。だが、それと同時にルチェルニアの指示によって彼女らは地下に隠れることにしたのだった。
__しかし、平穏というのは、突然無くなるものなのだ。
ルチェルニアの勘が、地上に出ろと叫んでいる。地下での静かな生活はたった一年で崩れるのだろうか、そんな不安が脳裏を横切る。
……地下から遠い上がった彼女らは、口を開いたまま何度となく目を瞬いた。かつて都だったはずの地は、大きくくぼんでいた。人が住んでいた形跡すらも、跡形もなく消え去っていたのだ。しかし、彼女は理解した。
「きっと、あの旅人が何かしたのでしょうね。そして、そこに向かわなければならないでしょう」
地上にはもう住めない、その事が全ての物からひしひしと伝わってくる。
__そして彼女らは魔力の研究をし、旅人の出身地を突き止め、そこに向かうことにした。冬に輝く、青白い一等星。魔法陣が作動し、宇宙船に酷似した物体が上昇していく。……これが私達の知る、最古の魔法具だ。
__この星にたどり着くのには、非学に手間がかかった。ルチェルニアは、星の大都市の一角を仲間と共に歩く。そして、豆腐のような家に入り、挨拶を交わした。家主は、かの旅人と思われた。しかし、
「私はフレリー、王家の専属占い師でした。貴方達が我が妹ニザレラの遺志を受け継がれたのですね。……突然のことに気を悪くしないでいただきたいのですが、簡潔にお伝えしましょう。これからの月は、非常に危険です。速やかに移住をお願いします。信用に値するかどうかの判断は委ねますが……」
元専属の印を示されたことから、旅人の姉であることと、信用できることは確実となった。ルチェルニアは冷静だった。自分の目で見て、覚悟を決めていたのだ。そして、いつかの虚無から脱した彼女は、一つの夢を抱いた。
「私達が遥か昔に暮らした、平和な世界をもう一度創りたい」と。
こんにちは、はじめまして!雨葉るりと申します!
投稿頻度遅いですが、よろしくお願いします!




