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**第9章:命劫的开始**



竹村真一たけむら しんいちは黙々と歩きながら、ふと身体に違和感を覚えた。


「ユイ……」真一は眉をひそめ、険しい声で呼びかけた。


「お兄さん、どうしたの?」ユイはすぐに立ち止まり、心配そうに振り返った。


「なんか、俺の身体……臭くねぇか?」真一は腕を上げて自分の匂いを嗅いだ。その顔には明らかな嫌悪感が浮かんでいる。「クソっ、なんだこの匂い……自分の身体からこんな腐った臭いがするなんてありえねえ!」


ユイもそっと鼻を近づけて嗅ぐと、慌てて鼻をつまんだ。「確かに……ちょっと臭い……もしかして、さっきの壺から出た……あれがついちゃったんじゃない?」


その言葉を聞いて、竹村真一の顔が一瞬で青ざめた。「最悪だ!あの汚ねぇ内臓の残りカスが俺の服に染み込んでるのかよ!」


慌てて袖を引っ張って確認すると、そこには黒い汚れがいくつか付着しており、鼻を近づけるまでもなく腐敗したような悪臭を放っているのが分かった。


「クソッ!間違いねぇ、あの壺の中身がついたんだ……俺、何でこんな目に遭わなきゃならねえんだよ!」真一は忌々しげに袖を引っ張りながら怒鳴った。


だがその瞬間、背後の空気が突然冷たくなり、どこからか不気味な低い笑い声が聞こえてきた。


「フフフフ……逆命者よ……運命を覆すことが、そんなに簡単だと思ったのか?」


竹村真一は全身に鳥肌が立ち、慌てて振り返った。すると、霧が立ち込める闇の中から、ぼんやりとした三つの黒い影がゆっくりと近づいてきていた。


夜魄やはく!?」真一の目が見開かれる。「なんだよ、またお前らかよ!どこまで俺らを追いかけてくるんだ!」


夜魄の一つが、低く冷たい声で呟いた。「逆命を選んだ者には、命劫めいごうが付きまとう……凡人よ、お前の命は、すでに天命に背いているのだ。」


竹村真一は一歩後退しながら、その場で拳を握りしめた。手のひらに刻まれた逆命の呪印を意識し、なんとか力を引き出そうとする。だが、呪印が反応する代わりに、彼の手に鋭い痛みが走った。まるで呪いが彼自身を蝕み始めているかのようだった。


「おい、また何を企んでやがる!」真一は歯を食いしばりながら叫んだ。「符を使ったんだろうが!それで終わりじゃねえのかよ!」


夜魄たちはゆっくりと彼に近づきながら、嘲笑うように言った。「逆命……逆天……お前の命は、すでに天秤に刻まれた……逃れることはできぬ。」


「クソッ!」竹村真一は額に汗をにじませながら、呪印からの激痛を無視して手を掲げた。「来いよ……誰が誰をやるか試してみようぜ!」


必死で呪印を発動させようとするも、痛みがどんどん激しくなり、掌の赤い光はわずかに点滅するだけだった。


「お兄さん!」ユイが叫び、彼の手を見て声を詰まらせた。「その腕……!」


真一は自分の腕を見下ろし、血の気が引いた。呪印の赤い模様が手首から肘、さらに腕全体に広がり、まるで生き物のように脈動している。それは熱を持ち、皮膚の下で炎が燃え盛っているようだった。


「なんだこれ……こんなこと聞いてねぇぞ!」真一は恐怖に震えながら呟いた。


夜魄たちは再び冷たい笑い声を漏らした。「逆命の呪印は、お前の血肉と一体化する……それは運命を覆した代償だ……命劫はこれから始まるのだ。」


「命劫?!」竹村真一は歯ぎしりしながら怒鳴った。「何なんだよ、命劫って!もっと分かりやすく説明しろよ!」


だが、夜魄たちは答えず、突然黒い霧に姿を変えて真一に向かって突進してきた。


「うわっ!」真一は思わず身をかがめ、右手を突き出して逆命の力を振りかざした。


「行けええええ!!!」


彼の手からかすかな赤い炎が放たれ、迫りくる黒い霧を一時的に弾き返した。しかしその直後、呪印がさらに腕に広がり、熱と痛みが彼の体を蝕んだ。


「うっ……がぁああ!」真一は膝をつき、右手を押さえながら苦しんだ。その顔には冷や汗がにじみ、腕の痛みに耐え切れず体が震えていた。


ユイは慌てて彼に駆け寄り、肩を支えながら叫んだ。「お兄さん、大丈夫!?その手……呪いが……!」


竹村真一は荒い息をつきながら、呪印に覆われた自分の腕をじっと見つめた。その模様はさらに深く刻まれ、脈動するように不気味に輝いている。それはまるで、彼の命そのものを燃やし尽くそうとしているかのようだった。


「クソッ……これ、本当に俺の命を吸い取ってやがる……!」


ユイは涙ぐみながら真一を支え、震える声で呟いた。「……もうやめようよ……これ以上、自分の命を削るなんて……!」


真一は歯を食いしばりながら、苦笑して答えた。「……簡単にやめられるなら……俺だってとっくにやめてるっつーの……」


その時、再び夜魄たちの嘲笑が闇の中に響き渡った。


「凡人よ……お前の劫数は、まだ始まったばかりだ。」


竹村真一は震える手を握りしめ、赤い呪印が今にも弾けそうな痛みを耐えながら、夜魄たちの方を睨みつけた。


「だったら……最後まで付き合ってやるよ……!」

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