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### 最後の一撃



竹村真一たけむら・しんいちは全身血まみれで、「血刀」を地面に引きずりながら、ふらつく足取りで前へ進んでいた。血刀の赤い光は戦闘の疲弊で弱まり、まるでそれ自身も呼吸を整えているかのようだった。


真一の身体は満身創痍、胸には深い裂傷が刻まれ、血が乾いて衣服にこびりついている。握りしめる右手は震え、血刀を持つ腕にも力が入らなくなってきている。


「クソ……この場所、俺をとことん追い詰めるつもりか……。」真一は荒い息を吐きながら呟いたが、その鋭い眼差しは依然として前方を見据えていた。わかっている、この地で最大の試練はまだ終わっていない。


ゆいは彼の後ろから小走りで近づき、不安そうに声をかけた。「真一お兄ちゃん……本当に大丈夫なの?ちょっと休んだ方がいいんじゃない?」


「休む?」真一はかすかに笑い、乾いた声で答えた。「こんな場所で休んだら、それこそ死ぬだけだ。さっさと終わらせて、生きて帰るしかねえ。」


前方の空気は、もはやただの霧ではなかった。血の臭いと腐敗臭が混じり合い、窒息するほどの重さでのしかかる。それはまるで、見えない手が喉元を締めつけているかのようだった。


「ここだ。」村脳老人むらのうろうじんは巨大な裂け目の前で立ち止まり、低い声で告げた。「天隙の核心てんげきのここんはここにある。」


真一が顔を上げると、そこには大地を引き裂いたような巨大な裂け目が広がっていた。漆黒の裂け目からは濃密な黒い霧が立ち上り、その奥で不気味な赤い光がかすかに瞬いている。それは、地獄の底からこちらを覗く巨大な目玉のようだった。


「これが核心か。」真一は眉をしかめた。「見たところ、たいしたことはなさそうだが……。」


「ふっふっふ、そんなことを言えるのも今のうちだ。」村脳老人は青い煙を吐きながら嘲るように笑った。「ここの空気の一息一息が、お前の魂を蝕むぞ。近づく前に、“守護者”の許しを得なきゃな。」


「守護者?」真一は鼻で笑った。「さっきの甲冑傀儡の連中は、俺がもう片付けたはずだが?」


老人は首を振り、口の端を歪めて不気味な笑みを浮かべた。「本当の守護者とは、そんなおもちゃじゃない。」


その言葉が終わると同時に、裂け目の奥から低い唸り声が響き渡った。


「ゴォォォ……」


地面が震え、裂け目から湧き上がる黒い霧がまるで沸騰する水のように波打つ。霧の中からは、不気味な囁き声が幾重にも重なり、まるで亡者たちが耳元で語りかけるようだった。


「出るぞ……」村脳老人は煙管を噛み締めながら一歩下がった。「天隙を守る“骨渕主宰こつえんしゅさい”の御出ましだ。」


裂け目の中から、巨大な姿がゆっくりと現れた。


---



それは巨大な骸骨だった。だが普通の骸骨ではない。全身は漆黒の骨でできており、その表面には無数の呪いの刻印が刻まれている。頭部は異様に大きく、その中央には深い裂け目があり、そこから赤黒い光が激しく脈動していた。


「これが守護者……。」真一は血刀を握り直し、眉間に皺を寄せた。「やれやれ、見た目からして厄介そうだな。」


骨渕主宰は巨体を動かしながら、地面を砕くような重い足音を響かせた。その瞳に当たる赤い光が真一を捉えた瞬間、耳をつんざくような轟音を上げて咆哮した。


「グォォォォォ!!」


その瞬間、裂け目から無数の黒い触手が飛び出し、真一に向かって殺到した。


「やれるもんならやってみろ!」真一は吼え、血刀を振りかざして突進した。


---



触手が四方八方から迫り来る。真一はその全てを血刀で切り裂き、次々と黒い霧へと消し去っていった。だが触手の数は尽きることなく、骨渕主宰はその巨体を揺るがせながらさらに迫ってくる。


「しつけえな……!」真一は叫び、足元を蹴り上げて空中に跳躍。赤い刀光を纏った血刀を振り下ろした。


「ズバァァンッ!」


刀刃は骨渕主宰の頭部に深く食い込み、裂け目から赤黒い光が飛び散った。だが、それでも骨渕主宰は倒れなかった。むしろさらに激しく咆哮し、その骨の爪を振り上げて真一を叩きつぶそうとした。


「クソが……!」真一は間一髪で回避したものの、衝撃波で地面に叩きつけられた。口から血を吐き、彼の視界は一瞬揺らぐ。


「真一お兄ちゃん!」遠くからゆいの叫び声が響く。


「黙ってろ!」真一は血を拭い、再び立ち上がる。「俺は……まだ終わっちゃいねえ!」


血刀が激しく震え、赤い光がさらに強く輝き始めた。真一はそれを感じ取り、最後の力を振り絞って裂け目の中心へと突進する。


「これで……終わらせる!」真一の叫び声とともに、血刀が赤い閃光を放ちながら骨渕主宰の頭部へと突き刺さった。


「ゴォォォォォォ……!!」


骨渕主宰は断末魔の叫びを上げ、その巨体は崩壊を始めた。黒い霧が消え去り、裂け目の周囲は静寂に包まれる。


真一は膝をつき、血刀を支えにして立つ。ゆいが駆け寄り、泣きながら彼を支える。「真一お兄ちゃん、大丈夫!?」


「……まだ生きてるさ。」真一は笑みを浮かべた。「だが、この先が本番だ。」


裂け目の中心には、黒い結晶が浮かび上がっていた。それは静かに脈動し、周囲に禍々しいエネルギーを放っている。


「これが天隙の核心か……。」真一は血刀を握り直した。


村脳老人が後ろから言う。「それを破壊すれば、全てが終わる。だが、その代償はお前の魂だ。」


真一は一瞬ためらったが、決意の表情を浮かべた。「構うもんか。やるしかねえんだよ。」


そして、彼は血刀を振り上げ、核心に向かって最後の一撃を放った——。


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