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優しい王子から愛されるシナリオに、あらがってみたくなりました。サブキャラ2人のワガママな恋愛模様  作者: 雪月花
エリオットの章

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 エリオットはリタに会えない日が続いた。


 どうしても目はリタを探してしまうようで、王宮内で見かけるメイドをつい確認してしまう。


 会えないことで、ますます気持ちが膨らんでいった。


 ーーリタに会いたい!




 そんな時に、恒例のクローディアとのお茶会が開かれた。


 エリオットは覚束(おぼつか)ない気持ちを抱えたまま、いつものお茶会の場所に向かった。

  

 庭園にあるその場所に近付くと、先に椅子に座って待っている銀髪の女性が見えた。

「お久しぶりですわ。エリオット様」

 エリオットに気付いたクローディアが、立ち上がってカテーシーをした。

 そしてニッコリと美しく笑った。


「久しぶりだね。クローディア」

 エリオットも笑い返した。

 そして2人して席に座り、いつものように和やかにお茶会が始まる。

 2人でいることにも随分慣れて、心地よい空気が流れた。


 彼女とのお喋りは楽しい。

 笑顔も仕草も可愛い。

 第二王子の伴侶として、頼りになる有能さを持ち合わせている。


 けど……


「クローディア、申し訳ないんだけどーー」

 

 エリオットは正直に胸の内を伝えようと、口を開いた。




**===========**


「どこに居るんだろう?」


 エリオットは王宮内を足早に歩いていた。


 彼はリタを探していた。


 恋焦がれている彼女を見つけて、伝えたいことがあった。



 

 「〜♪ 〜〜♪」


 どこからか聞いたことのある優しい歌声がした。

 以前リタが歌っていた歌だ。


 すごく小さい音なのに、何故かエリオットには鮮明に聞こえた。


 エリオットは誘われるように、その歌が聞こえる方へ歩いていった。


 


 リタは1人で、ある客室の掃除をしていた。

 エリオットがそっと部屋をのぞくと、ホウキで床をはきながら、楽しそうに歌っている背中が見えた。

 

 歌っているからか、エリオットが部屋に入っても気付かなかった。


「リタ」


 エリオットはリタをやっと見つけた喜びから、後ろから彼女を抱きしめた。


「…………」

 歌声がピタリと止まる。


「リタ、よく聞いて……君が好きなんだ。愛してる」


 エリオットがギュッと抱きしめる力を強め、リタの耳元で伝えた。


 驚いたリタが思わずホウキを手放し、床に落とす音が響いた。




 ーーーーーー


「!!!!」


 その瞬間、何かが弾けるような感覚があった。

 エリオットの頭の中に、抜け落ちていた思い出が蘇る。


 幼い頃からずっとずっとそばにいた、エリオットの宝物。

 シルヴィアのことを全て思い出したのだ。

 

 透き通るような白い肌。

 光り輝く銀色の髪の毛。

 

 一緒に雨から逃げるために走った子供の頃。

 楽しそうに屈託なく笑う彼女。


〝置いてかないで〟と、夜空のような深い青色の瞳を潤ませて僕を見上げる彼女。


 大好きで、愛しくて、可愛い僕のお妃だったシルヴィー。

 

 ーーそしてある日、居なくなってしまった。




 代わりにそばに居たのはリタだった。




「…………」


 エリオットはシルヴィアを思い出すのと同時に、腕の中のリタの正体にも気付いてしまった。


「……シルヴィー?」


 エリオットはリタをそう呼んだ。

 

 


 ーーリタは。

 

 いつもニコニコ笑顔でエリオットを支えていてくれたリタは……


 

 

 シルヴィアだった。




 エリオットはリタの肩を持って、無理矢理ぐるっと回した。

 彼女はされるがままに体の向きを変え、エリオットと向き合うと、いつものように(うつむ)いていた。

 瞳に涙をためて。


「シルヴィーだよね」

 エリオットも少し涙ぐみながら、リタのメガネをそっと外した。

 

 するとリタも顔を上げて、エリオットをジッと見つめた。

 夜空色の瞳がエリオットを捉えている。


 彼女の長い前髪をかき分けながら、確かめるように頬に手を添える。


「シルヴィー、そんなに泣かないで」

「……エリー。ごめんなさい」


 シルヴィアの瞳からポロポロ涙がこぼれていた。

 そして彼女は幼い子供のように「ごめんなさい」を繰り返した。


 エリオットは、そんなシルヴィアをギュッと抱きしめた。




 ーーーーーー


 それからシルヴィアは、今までのことを全部エリオットに話した。

 

 エリオットはシルヴィアを抱きしめたまま、彼女の話をゆっくり聞いた。


 シルヴィアもエリオットの背中に手を回して、胸に顔をうずめたまま喋っていた。


 


 セラフィのピンクの猫が恋の女神の化身で〝シルヴィアの記憶を消して欲しい〟という願いを叶えてくれたこと。


 けれどエリオットのことが好きだから、メイドとしてずっとそばに居たこと。


 シルヴィアは謝りながら説明した。


「なんで記憶を消そうと思ったの?」

 エリオットが抱きしめている力をゆるめ、シルヴィアの顔を覗き込んだ。


 シルヴィアが涙で潤んだ瞳でエリオットを見つめ返す。


「……エリーが私を好きなのは、決められた相手だからって思いがずっとあったから。幼い頃に大人が勝手に決めたでしょ? 隣国の第三王女のシルヴィアだからっていう設定の中で、愛されてるんだろうなって……」


「…………?」

 シルヴィアがそんなことを言ったけど、ちょっと理解するには難しかった。


「それに縛られているエリーも可哀想だわって思ってしまったの。だから私のことを全て忘れて、真っさらな気持ちで幸せな人生を歩んで欲しかった……」


「それで、やっぱりシルヴィーを選んだんだけど。決められた相手だからじゃなくて、僕はシルヴィーがいい。シルヴィーしか愛せない」

 

「!! ……私も、エリーがいい! 私を選んでくれて、本当はとても嬉しい!!」

 

 シルヴィアがエリオットにまた抱きついて、泣きじゃくった。


 

 

 シルヴィアは以前みたいに、エリオットが好意を伝えても冷ややかな反応はしなかった。


 …………

 そうか、僕からの好意を疑ってたんだ。

 足りなかったんだ。


 シルヴィアのワガママに振り回されたんだ……


 そう思うとエリオットは怒りを感じだした。

 シルヴィアを忘れたままだったら、他の人と結婚してしまう所だった。


「……僕がシルヴィーを心から好きなこと、分かってくれたよね?」

「……うん」

 エリオットの胸に顔をうずめたままのシルヴィアが(うなず)く。


「でも、シルヴィーが僕のこと、どれだけ好きか分かってないんだけど? 僕もシルヴィーの記憶を消して確かめてみようかな」


「!!」

 

 驚いたシルヴィアが思わず顔をあげて、まん丸な目をエリオットに向けた。


 エリオットは意地悪く微笑んだ。


「……エリーのこと大好きよ。初めて会った時から。エリーの澄み切った空のような瞳に見つめられると嬉しいの。だから私、本物の空を見るのも好き。エリーを思い浮かべられるから……」

 シルヴィアが頬を赤くしながら、(うつむ)きがちにつらつらと喋った。


「それで?」

 エリオットは笑みを浮かべながらシルヴィアを抱きしめ、おでこ同士をくっつけた。


「……優しいエリーが好き。私のこと大事にしてくれるエリーが好き。いつも一緒にいてくれたエリーが大好き」


「フフッ……それから?」

 

 エリオットがクスクス笑った。


 一生懸命なシルヴィアが可愛かったからだ。


「……たとえ、()()としてそばにいるだけだとしても、誰よりも愛してる」


「リタとして言うのはずるい。……僕も誰よりも愛してるよ」


「…………」


 エリオットが誓いのように宣言すると、2人は唇を触れ合わせた。


 もう離れないというように、お互いをきつく抱きしめ合いながら。








 

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