巫女、お納めする
ポスターを再撮影した翌年の出来事です。
「怜ちゃーん! 怜ちゃーん!」
「先輩方、どうされました?」
「今日って何か、沢山お納めしてたりするかしら?」
「いえ……朝のおつとめの後は、隣町の農家さんがお捧げくださった初成りのリンゴを1袋お納めしただけですので、まだ余裕あります!」
「よかったー! あのさ……去年の今頃、胡麻油会社の社長さんが、初物の胡麻油を持ってきてくださったの、覚えてる?」
「はい! 『最初のロット全部』って、トラックにドラム缶を積んでお越しになった日ですよね?」
「そう! それ! その『フレッシュごま油』がさ、どうやら爆発的なヒット商品になったらしくて……」
「それは良かったですね!」
「ヒットしたのはいいんだけど……お捧げしたお陰だって、今年の初物もお持ちになったのよ……。ただ私たちみんな、今年は既に十貫以上増えちゃってるみたいだから、もうすぐ減量しなくちゃいけなくて……」
「なるほど! そういうことでしたらまず私が、いけるところまでお納めしますね!」
「ありがとう! 助かるわ!」
「おやすいごようです! 去年より器は大きくなってますし、私、どんなに食べても太らない体質なので!」
「……んっ……んっ……」
「怜璃さま! まだ起きておられたのですか!?」
「……ええ……今日のお捧げものが……なかなか……お納めしきれなくて……」
「もう夜の3時ですよ?」
「……でもまだ……半分も飲み干せてないんです……。それに……日没後の修行米も……まだ一粒も口にできていませんし……」