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ご感想に応じて、外伝追加(新嘗祭4)

「……次は……そちらの……茶碗蒸しを……」


 浅い呼吸で、あえぎながら、巫女は次の参拝者を指さした。黒髪に滴る汗と冷水が、松明に照らされた巫女の艶めかしさを一層引き立てている。緋袴はピッタリ張り付いて、身体のラインが丸見えだ。普段から大きなお腹を抱えて移動しているためだろうか、腕や首筋から想像されるより遥かに、お尻や太ももは立派な太さのようだ。発達した筋肉の上に、かなりの量の皮下脂肪も乗っているように見える。とはいえ今の巫女においては、その他の部位の肉々しさが些細に思えるほど、お腹の膨らみが圧倒的なのではあるが。


 茶碗蒸しの次はバームクーヘンであり、その次は魚肉ソーセージであった。巫女は合間合間に顔を歪ませつつ、昼の部の終わり頃と同様、数口ごとにお腹を押して、細かく空気を抜くようになっている。


……けふっ………はあっ……はあっ……けふっ………ああっ……


「巫女様!」


「頑張れ!」


 食物を掲げた群衆から声がかかる。巫女は苦しそうな顔を懸命に微笑ませながら、お腹を押しこみ揉みしだき、空気を懸命に抜きながら、パンパンの胃をだましだまし、追加で願いを叶え続ける。


「……これも……おいしいです……ありがとう……ございます……次はあちらの方から……いただけますでしょうか……」


 そうしてさらに十数人分を受け入れたが、皮膚の伸びにも限界があるし、空気も永遠に抜き続けられる訳ではない。捻出した僅かなスペースにさえも、みっちりと食料品を押し込まれ続けてきた、巫女の巨大な胃袋には、ほんの僅かに残されていた空気すらなくなってきたのは群衆の目にも明らかで、巫女のゲップは次第に弱く、か細くなり、どんなにお腹を押そうとしても、ゲップの出ないことの方が増えた。禰宜が緋袴を脱がせたが、それまでも頻繁に緩めてきていたため、効果はほぼない。そもそも胴体が、胃袋の輪郭を明瞭にトレースできるほど異様な形に膨らみきっていて、巫女が自らの胃を押し込もうとしても、ほとんどへこんでくれなくなってきたのである。肌理の細かな巫女の肌は、ぱっつんぱっつんに伸びていた。


「……お願い、わたしのお腹さん……もうちょっとだから……頑張って! ……もう少し伸びて……お願い……私の胃袋さん! ……今日のために……今日のために修行してきたじゃない?……大丈夫、まだ余裕だよね?……わたし、巫女。巫女だもん!……この方々のお願いを、もうちょっと神様に届けたいの……あの美味しそうな大学芋を……ちゃんと笑顔で食べたいの……だからお願い、私のお腹……もうちょっとだけ、受け入れて!」


 巫女が必死に呟く声が、途切れ途切れにマイクで届く。巫女のお腹は既にもう、修行中の最大径を超えている。さっきからもう10分以上、新規のゲップは出ていない。隙間なく詰まった握り飯の白米の上に、雑多な飲食物が満遍なく搭載され、内圧でぎゅうぎゅうに押し固められて、カチカチに張り詰めているのだ。


「怜璃様!」


「お願い!」


「もう少し!」


 群衆たちが、巫女を励ます。巫女はその声に押されるように、新たな一口を頬張った。限界を超えた胃の中へ、気力で大学芋を押し込んでいく。冷や汗が止まらない。呼吸は苦しい。お腹は張り裂けそうに痛い。でももう少し、食べたい……食べ続けねばならないっ……!


(続きます)

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