第4話 初デート(4)
電車内で調べた料理店を目指して歩き続ける俺と沙苗。
今日の昼食は絶対にこの店で食べよう!って話していた料理店の店名は"洋食屋ミナト"という。
店主のミナトさんが5年という歳月を費やした末に完成させた究極のデミグラスソースを使った煮込みハンバーグが絶品らしい。
その為、リピーターが後を絶たない程の超人気店となっている。
煮込みハンバーグ以外にも、ナポリタンやオムハヤシも絶品とのこと。
だがこの洋食屋ミナトには、数多のデカ盛りハンター達が度肝を抜かす程のデカ盛り料理がある、との噂もあるらしい。
俺と沙苗はまさにその噂のデカ盛り料理目当てで向かっていたりする。
どの料理も値段が安い、という理由も勿論あるけどな。
「俊吾、あのお店じゃない?」
と、左腕に抱きついている沙苗が指をさしながらそう言った。
なので俺もスマホを見るのを中断し、沙苗が指し示す先を見る。
「うん、間違いないな。
あの洋食屋ミナトこそ、俺達が目指していた料理店だね」
俺がスマホに夢中になっている間に、目的地に辿り着いていたようだ。
夢中になっていた、というのは語弊が生じるので弁明するとだな……アミューズメント施設で俺が"受付嬢に約束したこと(初デート(3)参照)"について実行するようスマホを使って関係各所に指示を出していた為である。
瀬戸崎財閥グループ会長として約束した以上は、ね?
と、俺が誰にかは分からないが弁明し終わった所で沙苗が俺に言う。
「洋食屋ミナトの前に着いたけど、行列が出来てるわね……」
「まあ、昼時だからじゃないのか?
人気店な上で休日なのも影響してそうだけどね」
「流石、人気店ね。
素直に並んで待つしかないわね」
「そうするか」
俺と沙苗が洋食屋ミナトに着いた時、店の前には長蛇の列が出来ていた。
その為、俺と沙苗は素直に並ぶ。
俺達を含めて少なくとも約100人くらいは並んでいるようだ。
洋食屋ミナトの入口前に設置されているホワイトボードをよく見ると、そこには〖只今の待ち時間は1時間待ちとなっています〗と書かれていた。
「沙苗、1時間待ちだってさ」
沙苗にそう伝えると、
「1時間待ち? そのくらいなら待つわよ?
人気店で1時間待ちなら早い方でしょうしね」
という返答が返ってきた。
沙苗にそう言われ、確かに早い方だなと納得した。
だけど暇だな……と思った俺はポケットからスマホを取り出し、小説投稿サイトのページを開く。
すると沙苗が俺のスマホ画面を覗き込みながら言う。
「俊吾がそのサイトを見てるなんて意外だわ」
「ん?俺がこのサイトを閲覧してることが意外か?」
「うん。だって俊吾は普段、ラノベ書籍しか読まないじゃない?
だから俊吾がそのサイトを見るなんて思ってもいなかったから」
「確かに普段はラノベ書籍しか読まないが、書籍化作品の原作がこのサイトで読めるから閲覧してるね。
勿論、書籍化作品の原作以外にも投稿された作品も読んでるよ」
「なるほどね。
俊吾の新たな一面をまた一つ知れて良かったわ!
それで俊吾はこのサイト内ではどんな作品を読んでいるの?」
どんな作品を読んでいるの?と聞かれたので、俺はスマホを操作して今読んでいる作品ページを表示させながら言う。
「俺が読んでいるのは『陰キャだけど実は俳優だとバレたら美少女同級生に告白されました』というタイトルの作品だよ」
「どんな内容なの?」
「主人公は普段学校では陰キャと呼ばれていて、クラスメイト達から煙たがられているんだけど、クラスメイト達に内緒で俳優をやっていたんだ。
だけどある日、主人公のちょっとした油断で同じクラスメイトの美少女同級生に俳優をやっていることがバレちゃうんだよね。
その上、主人公がイケメンであることも同時にバレてしまう。
内緒にしていたことがバレた主人公はどう言いくるめようかと思案していたんだけど、美少女同級生は何を思ったのか…主人公に告白する。
だけど主人公は"どうせ冗談に決まっている"と決めつけ、美少女同級生からの告白を断った上、自分が俳優をしていることは誰にも言わないで欲しい!という図々しいお願いをする。
主人公のそのお願いに対し、美少女同級生は了承する。
その答えを聞いた主人公は"これで自分の秘密が漏れることはない"とすっかり安心しきってしまったんだ。
んで告白された次の日、主人公は何時もより早い時間に登校する。
そして主人公が教室に入って自分の席を見て驚愕してしまう。
自分に告白してきた美少女同級生が座っていたのだから。
驚愕している主人公に対し、美少女同級生は主人公の目を見ながら宣言したんだ。
『私は今後も貴方に告白し続けます。絶対に貴方を私に惚れさせてみせますので、覚悟して下さい!』ってね。
その宣言以降、美少女同級生は本当に毎日毎日、主人公に告白し続けてきたんだ。
しかもそれだけでなく、主人公に手作り弁当を手渡してきたりデートに誘ってきたりね。
終いには主人公の家にまで押しかけてきて料理や掃除・洗濯までし始める始末。
毎日のように甲斐甲斐しく世話をしてくれる美少女同級生に、主人公も徐々にではあるけど惹かれていったんだ。
そんなある日、ひょんなキッカケから美少女同級生の過去を知った主人公は『彼女を一生守りたい』と思うと同時に自分が美少女同級生に抱いている感情を自覚する。
自分が恋をしていると自覚した主人公は、遂に美少女同級生に告白の返事を返す。
それを聞いた彼女は涙を流しながら『よろしくお願いします』と言い、主人公に抱きつく。
という内容だね」
「……説明してくれてありがとう。
でもね俊吾…長々と内容を語り過ぎよ!
もっと短く説明して欲しかったわ……」
「あ~、つい熱く語ってしまった。
その、長すぎてごめん!」
そう沙苗に謝った時だった。
「いらっしゃいませ!
大変長らくお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした!
2名様で宜しかったでしょうか?」
と、女性店員が俺と沙苗に頭を下げてからそう聞いてくる。
俺が熱く語っている間に列が進んでいたようだ。
「はい」
「それではお席へとご案内致しますので、私の後に付いてきて下さい。
2名様のご来店です!」
そう言って店内に入った女性店員の後に続いて俺と沙苗も洋食屋ミナトの店内に入るのだった───
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