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瀬戸崎財閥会長としての俊吾(後編②)

 運ばれてきた限定スペシャル特大パフェを前にして、沙苗は幸せそうにしながら食べ始める。

 だが、俺は目の前のパフェの大きさに絶望しながらも、婚約者である沙苗を悲しませたくないので、覚悟を決めて食べ始める。


「う〜ん!美味しい〜! 幸せ〜!」


「それは良かった。 だけど、これを食べ切る自信が……」


「半分は任せたわね!って言ったけど、無理して食べないでね……」


「ありがとう。 なるべく頑張って食べるよ」


 その後は特に会話すらなく、黙々と食べ進める2人。俊吾の食べるスピードが落ちる中、沙苗の食べるスピードが落ちる様子はない。

 寧ろ、食べ始めた時よりもスピードが上がってるくらいだ。パフェの残りの量が半分を下回った辺りで、俊吾がギブアップの声を上げる。


「沙苗、悪いが俺はもう腹が限界だわ。 情けないが、後は頼んだ」


「お疲れ様、俊吾。 後は私に任せなさいな! だから、ゆっくりと休んでてね!」


「ああ、そうさせてもらうよ。 だから沙苗、ファイト!」


「うん! 頑張るわね!」


 俊吾がギブアップしたことにより、ペアチケットを獲得出来るかどうかは沙苗に託されることになった。

 そんな沙苗は、婚約者である俊吾の分まで頑張ろうと奮起し、食べ進めるスピードを更に上げて食べる。

 そして20分後、沙苗は見事に完食して、幸せそうに腹を摩っていた。


「ふぅ、ご馳走様でした! 美味しかった〜!」


「完食してしまうとは……。 恐れ入りました」


「何言ってるの? 俊吾だって半分は食べたじゃない。 だからこれは、2人で完食したってことになるのよ?」


「……意外に、俺も思った以上に食べてたみたいだな」


「もしかして、気付いてなかったの?」


「全く気付いてなかったよ」


「だと思った。 だけど、完食したからベアチケットは私達のものね!」


「だな! 頑張って食べた甲斐があったな」


 そんな2人を他所に、桜坂会長と繁信は唖然としていた……俊吾と沙苗の食べっぷりにである。


「……まさか完食してしまうとは」


「我が孫ながら、見事な食べっぷりじゃったな」


「沙苗嬢もさることながら、俊吾君があんなに食べるとは……。 幼い頃から見知った仲とはいえ、大食いだとは思ってもみなかったよ」


「それは儂も思ったな。 まぁ、大盛りを頼んだ儂らもだがな」


「それはそうだが、俊吾君と沙苗嬢は別次元だったけどな」


「それもそうだな。 比べること自体が間違いであったな」


 そんな2人の会話に、俊吾と沙苗はお互いを見て、苦笑するのだった。



 それからも会食は続き、話すことを話した俊吾達はお開きにすることにし、席を立ってから会計カウンターへと移動する。


「会計を頼む」


「かしこまりました。 お会計、合わせまして7230円でございます」


「では、これで支払いをお願いします」


 会計額を聞いた俊吾が財布から取り出したのは、ブラックカードである。

 財布の中には現金も入っていたのだが、万札しか入っていなかった為、お釣りを受け取るのがめんどくさかっただけの事である。

 それを店員に渡すと、店員は驚きの声を上げる。


「かしこまりました。 ではお預かりいた……って、え!?ブ、ブラックカード?!」


「何か問題でも?」


「い、いえ!失礼致しました! 初めて見たものですから……」


「そうですか。 で、これで支払いをお願い出来ますか?」


「は、はい!勿論でございます! 少々お待ち下さいませ」


「分かりました」


「お待たせ致しました! カードをお返し致します。 それと、こちらが限定スペシャル特大パフェ完食者にお渡しするペアチケットになります。 お受け取り下さいませ」


「確かに受け取りました。 また近い内に来ますね」


「はい! またのご利用をお待ちしております」


 会計を済ませてチケットを受け取った俊吾達は、ルミナールから出る。

 ルミナールから出たところで、桜坂会長が口を開く。


「今回の会食も有意義な時間となった。 俊吾君、例の件はよろしく頼むぞ」


「こっちとしても有意義な時間だったよ。 それと、例の件のことは任されたよ。 進展があったら必ず連絡を入れるよ」


「ああ、分かった。 っと、迎えが来たようだな」


 桜坂会長と話していた所へ、タイミングよく桜坂家からの迎えのリムジンが来る。

 そのリムジンの後部座席からは、クラスメイトであり桜坂会長の孫娘である、桜坂 詩織(さくらざか しおり)が降りてきて、俺と沙苗に話し掛けてきた。


「お爺様、お迎えに上がりましたよ」


「ご苦労だった、詩織」


「俊吾君と沙苗も学園以来だね。 会食は楽しめたのかな?」


「おう、詩織。 完食は楽しめたぞ」


「学園以来ね、詩織。 完食は俊吾と共に楽しめたわ」


「それは何よりだね。 それと繁信副会長、お久しぶりです」


「詩織嬢、久しぶりよのぅ。 前の会食以来となるが、元気そうで何よりだ。 これからも、俊吾達と仲良くしてもらいたい」


「はい、勿論です。 俊吾君と沙苗にはよくしてもらってるからね。 まぁ、俊吾君と幼馴染だけど、学園ではお互いに隠していることだけどね」


「確かに学園では隠してるな。 言いふらす気はないから余計にだけど、な」


「そうだよね。 っとお爺様、そろそろ行きませんか?」


「そうだな。 では俊吾君、沙苗嬢、繁信もまた近い内にな」


「そうだな、また近い内に会食しような」


「また近い内にお会いしましょう」


「うむ」


「それでは皆様、失礼致します。 俊吾君、沙苗、また学園でね!」


「ああ」「うん、またね!」


 そう言ってから、桜坂会長と詩織がリムジンに乗り込んだ後、リムジンが静かに走り出す。

 離れていくリムジンを見送った後、迎えに来たリムジンに乗った俺達も、瀬戸崎財閥グループ本社へと戻るのだった。




 桜坂会長との会食を終えて、瀬戸崎財閥グループ本社へと戻った俺達は、エントランスでお爺様と別れた後、沙苗と2人で最上階にある会長室へと向かう。

 会長室の中へ入った俺は、執務机の椅子に座って、机の上に載っていた書類に判を押していく。

 沙苗はというと、会長室に備え付けられたソファーに座って、優雅に紅茶を飲んでいた。

 その様子を見ながら、グチグチ言いつつも判を押していく。


「この決済は承認するとして、こっちの決済は不承認っと。 んで、この企画が承認でこっちの企画は却下と。 てか、なんで書籍化承認申請用紙が俺の元に来るんだよ! 会長の俺の元に届けられること自体が間違ってるだろうに……。 仕方がない、内線で伝えるか」


 そう言って、俺は受話器を取って電話を掛ける。


『お疲れ様です、会長。 如何なさいましたか?』


『如何なさいましたか?ではないぞ! なんで書籍化承認申請用紙が俺の元に届けられたんだ? この書類は本来、うちの傘下である【アーシャスター文庫】に届くべきものじゃないのか?』


『も、申し訳ありません!! 直ぐに確認致します!!』


『分かった』


 それから1分後───


『お待たせ致しました。 担当者に確認した所、勘違いしたとの事です』


『勘違い? もしかして、新入社員か?』


『はい、入社して1ヶ月の新人でした』


『なるほどな。 それなら間違えてしまうのも仕方がないか。 同じ間違いを繰り返さないよう、しっかり教育を頼むぞ』


『かしこまりました。 徹底させます。 では、失礼致します』


 確認を終えた俺は、受話器を置いて溜息を吐く。


「ふぅ、まだまだ教育が甘いところがあるようだな」


 そんな俺の溜息を吐きながら言った言葉に、沙苗が口を開く。


「会長職も大変ね」


「まぁな。 だけど、受け継いだからにはしっかりと仕事はしないとな。 これだけの規模のグループを纏めあげるのは大変だけどな」


「俊吾はしっかりとしてるから大丈夫じゃない?」


「まだまだだよ。 父さんと母さんのように纏めあげることは出来てないのが現状さ。 だが、近い内には纏めあげて見せるさ。 瀬戸崎財閥2代目会長として必ず成し遂げて見せるよ!」


「頑張るのはいいけど、もう貴方1人の身体じゃないんだから、無理だけはしないでね。 私にとって、俊吾だけが唯一の身内なんだから、ね……」


「それは分かってるさ。 俺は、沙苗を決して1人にはさせやしないよ。 神に誓って、な」


「その言葉、私は信じてるからね!」


「うん」


 沙苗を決して1人にはしない……と、改めて沙苗に誓った俊吾は、何時も以上に張り切って書類仕事を終わらせ、沙苗と共に自宅へと帰るのであった────





瀬戸崎財閥会長としての俊吾 [完]

この話で、閑章は完結となります。


次話より、第3章の投稿を開始しますm(*_ _)m

第3章の執筆自体をまだしていないので、投稿まで今暫くお待ち下さいm(*_ _)m


また、ここまで読んでいただき、ありがとうございましたm(_ _)m


引き続き『大財閥会長であり現役高校生の俺、家出した学年一美少女のクラスメイトと同居生活始めました!~だけど、場所問わずに抱き着かれて俺の心臓が持ちません!~』を、よろしくお願い致しますm(*_ _)m

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