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瀬戸崎財閥グループ会長としての俊吾(中編)

少し長文となってしまいましたが、投稿しますm(*_ _)m

 瀬戸崎財閥グループ本社の正面入り口前に停められていた黒塗りのリムジン前に辿り着いた俊吾と沙苗。

 俊吾と沙苗が歩いてきたのに気付いた運転手が、リムジンの扉を開ける。


「おはようございます、俊吾会長、沙苗様」


「おはよう。 今日はよろしくね。」


「おはようございます。 瀬戸崎家のリムジン……何時見てもデカいわね」


「ドイツ製の完全オーダーメイドで作られた特別なリムジンでございます」


「完全オーダーメイド……。 凄すぎて言葉が出ないわ……」


「まぁ、中も凄いんだけどね。 お爺様が細部まで指示して作られたリムジンだからね。」


「さて、時間も有限ですし、後は中でお話されてはいかがでしょうか。 繁信副会長も中で首を長くしてお待ちしてますので」


「分かった。 中に乗ろうか、沙苗」


「ええ、乗りましょう。 俊吾のお爺様をお待たせするわけにはいかないわ」


「足元にお気を付けて、お乗り下さい」


「お気遣いありがとうございます」


 運転手の気遣いに感謝しながらリムジンに乗り込む沙苗。その後に乗り込む俺。

 リムジンに乗り込んだ俺は、運転手に指示を出す。


「桜坂会長との会食場所である、レストラン【ルミナール】までお願いね」


「かしこまりました」


 そう言って後部座席のドアを閉めた運転手は、運転席に乗り込むとリムジンを走らせ始める。

 それを確認した後、俺と沙苗はルミナールに着くまでの間、先にリムジンに乗っていたお爺様と談笑した。

 そして30分後、俺達を乗せたリムジンがレストラン【ルミナール】の前に着くのだった。



─レストラン【ルミナール】店内─


 ルミナール前に停車したリムジンから、俺・沙苗・お爺様の順に降りた後、店内に入る。

 店内に入った俺は、男性ウエイターに声を掛ける。


「12時に予約した瀬戸崎と申しますが、確認をお願いします」


「いらっしゃいませ、瀬戸崎会長様、瀬戸崎副会長様、西園寺様。 承っておりますので、お席までご案内致します」


 俺の名前を聞いたウエイターの男性がそう言ってお辞儀をした後、席まで案内をしてくれる。

 案内されてる最中、俺はお爺様に聞く。


「お爺様、いつの間に予約したのですか?」


「相良に言って、儂の分も予約させたのだよ。 俊吾の今日の予定を聞いて、是非とも孫と一緒に桜坂会長と会食したいと言ったら、直ぐに電話で予約を取り付けてくれたのだよ」


「なるほど……」


 そんな話をお爺様としていると、男性ウエイターが1つの席の前で立ち止まる。

 その席には、お爺様と同年代と思われる男性が座っていた。

 その男性に、男性ウエイターが話し掛ける。


「失礼致します、桜坂会長様。 瀬戸崎会長様一行がお見えになりましたので、ご案内致しました」


「案内、ご苦労であった。 下がって良いぞ」


「かしこまりました。 皆様、ごゆるりとお食事をお楽しみ下さいませ。 では、私は失礼致します」


 そう言ってからウエイターの男性がお辞儀をして立ち去る。立ち去ったのを確認した桜坂会長が俺達に話し掛けてきた。


「瀬戸崎会長、忙しい中を無理言ってしまってすまんな。 久しぶりに食事を共にしたいと思ってな」


「いえいえ、そこまでは忙しくなかったので。 寧ろ、お誘いいただきまして、私も嬉しいかぎりです」


「それは良かった。 というよりも、昔みたいに砕けた口調で話して欲しいのだが……。俊吾君に丁寧語で話されると調子が狂ってしまうよ」


「一応、公式の場の筈なんだけどなぁ……」


「やっぱり、そっちの話し方の方がしっくりくるな。 それにしても、繁信まで来るとは聞いてないぞ?」


「なんだ? 儂がいたら駄目なのか? 俊吾と久しぶりに食事を共にしようと無理やり着いてきただけなんだが?」


「なるほどな。 相変わらず繁信は俊吾君を溺愛してるんだな」


「当然じゃ。 孫を溺愛しない爺がどこにいるのだ? 厳正(げんせい)だってそうであろう? 孫娘をいたく溺愛してるらしいのぅ」


「お互いに爺バカだな、はっはっはっ! 所で、そちらのお嬢さんは何方(どなた)かな?」


 桜坂会長が俺の隣にいる彼女(沙苗)について尋ねてきたので、俺が答える。


「紹介するよ。 ()西()()()()()()()()()のご令嬢だった、西園寺 沙苗だよ。 そして、俺の正式な婚約者だよ」


 俺の紹介に対し、沙苗が口を開く。


「俊吾さんよりご紹介にあずかりました、西園寺 沙苗と申します。 そして、俊吾さんと正式に婚約しています」


「あの西園寺財閥グループのご令嬢であったか……。 西園寺夫妻の顛末は私も聞いているよ。 随分と酷い目にあっていたようだね」


「はい。 ですが、隣にいる俊吾さんのお陰で私は自由の身になることが出来ました。 そんな俊吾さんに交際を申し込み、今は婚約者としてお付き合いさせてもらっています」


「そうかそうか。 俊吾君、絶対に彼女を悲しませるようなことはするなよ? まぁ、俊吾君なら大丈夫だろうがね」


「言われずとも大丈夫だ。 沙苗は俺が絶対に幸せにするよ!」


「俊吾……。 ありがとう!!」


「って、なんで抱き着いてくるのさ!」


「別にいいじゃん! 私が抱き着きたかったんだからさ」


「……もう好きにしてくれ」


 公衆の面前でもお構いなしに抱き着いてくる沙苗に対し、俊吾は白旗を上げ、沙苗の好きなようにさせることにする……というよりも、何を言っても無駄だと思っただけのことである。

 それを見た桜坂会長は笑いながら、俊吾達に言う。


「すっかり尻に敷かれてる俊吾君を見たところで、そろそろ会食を始めようか」


「だのぅ。 儂、さっきからお腹がなってしまってのぅ。 早く食事を取りたい」


「お前は相変わらず食い気が勝ってるようだな。 まぁ、私もだがね!」


「では、料理を運んでもらうよ。 食いしん坊の2人の為に、ね」


 そう言って、俊吾はパチンっと指を鳴らす。すると、予め俊吾が予約時に頼んでいた料理が次々とテーブルに運ばれてくる。

 俊吾の好物である天丼(大盛)・繁信が大好きなカツカレー(大盛)・厳正が好きなカツ丼(大盛)・沙苗が大好きなオムハヤシ(大盛)が、それぞれの前に置かれていく。


 この【ルミナール】というレストランは、高級レストランなどではない。庶民向けのレストランである。

 俊吾達は上級国民に分類される。だが、『高級店での贅沢な料理ではお腹いっぱい食べれないじゃないか!!』や『上級国民に分類されてようが贅沢な料理など食べたくもない!!』という理由から、会食はルミナールで行っている。

 ぶっちゃけた話、瀬戸崎家や桜坂家の食卓には、肉じゃが等の庶民料理しか並ばないのである。両当主が贅沢な料理に嫌悪感を示すから。


─俊吾達が頼んだ料理の値段─


● 俊吾が頼んだ天丼(大盛)────860円

● 繁信が頼んだカツカレー(大盛)─920円

● 厳正が頼んだカツ丼(大盛)───800円

● 沙苗が頼んだオムハヤシ(大盛)─950円


「料理も来たことだし、食べながら財閥関連の話をしようじゃないか」


「だね」「そうだのぅ」


 そんな中、沙苗が疑問に思ったのか、俺に聞いてくる。


「会食って、いつもこんな感じなの?」


「いつもこんな感じだよ?」


「そうなんだ……。 私の中での財閥のトップ同士での会食のイメージが崩れてきたんだけど……」


「まぁ、普通ではありえない会食だけど、俺達の中ではこれが普通となっているな。 父さんと母さんの時も、桜坂会長との会食ではこんな感じだったから、ね。 だから、こればかりは慣れていくしかないね」


「これが普通なんだ……」


 会食のイメージとのギャップに頭を抱えてしまう沙苗を余所に、桜坂会長と瀬戸崎財閥グループ会長の俺との会食が始まるのだった────




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