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西園寺夫妻の末路

西園寺夫妻の末路の投稿になりますm(_ _)m


長文になります。

 儂の名は、西園寺 誠二郎という。西園寺財閥グループの会長をしておる。

 平社員の時からあらゆる手段を講じて、今の地位にまで上り詰めた。それこそ、数え切れないほどの汚い手も講じてきた。

 そんな儂でも結婚しており、妻の美千代みちよとの間に娘も出来た。娘の名は、沙苗という。

 妻の美千代は妊娠しにくい体質の為、結婚してから5年目でようやく授かった命だ。

 沙苗が生まれた当初は、沙苗を溺愛していた。仕事を全て部下に任せる程にな。


 だが、沙苗が生まれてから半年程経ったある日、妻の美千代から提案された。


「ねぇあなた?」


「ん?どうかしたのか?」


「このさなえの将来のことなんだけど、西園寺家の更なる発展の為の道具として育てましょ?」


「はぁ!?いきなり何を馬鹿なことを言っておる!?巫山戯るのも大概にしろ!!」


 儂は、妻からの提案に激怒して怒鳴った。しかし、妻の美千代は気にせずに続ける。


「あら、そんなに怒る必要などないのでは?」


「何処に、実娘を政略の道具として育てる親がおる?」


「はぁ……あなたも気付いてるのではないのですか?今の現状では、西園寺家はこれ以上、発展はしないということを、ね。」


「そ、それは………」


 美千代の言う通り、確かに西園寺家の成長は止まってしまっている。無論、西園寺財閥グループも同様にだ。

 しかし、実娘を政略の道具として育てるなど……儂には出来ない!

 だが、儂の葛藤に気付いていた美千代が言う。


「西園寺家並びに西園寺財閥グループを更に発展させるには、沙苗を政略の道具として使うしかありませんわ。あなたは、今の現状で満足なのですか?あなたの夢はなんですか?西園寺財閥グループを財閥界のトップにすることではないのですか?」


 美千代のその言葉に、儂は自分の夢を思い出す。財閥界のトップに立つという夢を、だ。


「美千代の言う通りだな。儂は、自分の夢さえも忘れておったよ。沙苗を政略の道具として育てよう。一切の情を捨ててな。」


「それでこそ、野心家のあなたですわ。2人で、沙苗を立派な政略の道具に育て上げましょう!」


「ああ!」


 こうして儂と美千代は、沙苗を政略の道具として育てると決め、沙苗に対する一切の情を捨てた。



 あれから月日が流れ、育てた沙苗を政略の道具として使う時がきた。

 竜ヶ崎財閥グループから、沙苗と婚姻させて欲しいという打診がきたからだ。

 西園寺家並びに西園寺財閥グループを更に発展させるチャンスだと思った儂は、直ぐに了承の返事を返し、先方と話を詰めていった。



 そんなある日の朝、政略結婚のことを沙苗に話した所、その話に激怒し、荷物を持って家から飛び出していってしまった。

 だが、儂も美千代も直ぐには追いかけることはしなかった。なんせ、沙苗のスマホにはGPSを仕込んでいた為、居場所を把握することが出来たからだ。


「馬鹿なですね。何処にも逃げ場などないというのに。」


「そうだな。まぁ、夜までは泳がせるとしようかの。」


「ですね。何処に逃げようとも、居場所は分かるのですから。」


「そうだな。はっはっはっ!!」


 この時、儂も美千代も気付いていなかった。直ぐに追いかけて、連れ戻せばよかったと言うことを───



 夜になり、沙苗が白蘭の住宅街の家にいることが分かった儂は、連れ戻す為、その家へと向かった。

 だが、儂が辿り着いたその家は大きすぎる屋敷であった。掲げられていた表札には、()()()の文字。

 表札に書かれていた苗字を見て、まさか……と思いつつも、インターフォンを押す。

 暫くして、インターフォンから声が聞こえてきた。


『はい、どちら様でしょうか?』


「西園寺財閥グループの西園寺 誠二郎だ。儂の娘が居るのは分かっているのだ。さっさと連れて来い!!」


『し、少々お待ち下さいませ!!』


「早くするのだぞ。」


 それから暫くして、屋敷の中からメイドが出てきて、儂に話し掛けてきた。


「お待たせいたしました。旦那様の元へ案内致します。」


「なに?儂は、娘を連れて来いと言った筈だが?」


「私にそう言われましても……旦那様からは、"貴方様を案内せよ"としか言われておりませんので。では、こちらです(こんな遅い時間に尋ねてきてのその態度、西園寺財閥グループの会長には見えませんわね。俊吾様の逆鱗に触れないことを祈るばかりですわ。)」


 メイドの態度に腹を立てたが、儂は黙って着いて行くことにした。



 屋敷内を歩くこと数分、メイドが扉の前で立ち止まり、ノックしてから入っていく。何も言われていないが、儂もその後に続く。

 中に入ると、壮年の執事の男・メイドが2人・若い男性と、その隣に沙苗がいた。

 沙苗が若い男性に抱き着いていたことも含めて、怒りが頂点に達していた儂は言う。


「このような時間に尋ねてきてすまない。私の一人娘の沙苗が、此方の屋敷に居ることを突き止めてやって来た次第だ。連れ帰る為にな。それでは帰るぞ、沙苗!!」


 儂がそう言った瞬間、若い男性が沙苗を庇うように前に出る。更には、若い男性の傍に控えていた執事やメイド達までもが臨戦態勢になる。


(この動きはなんだ!?これではまるで、儂を敵と認識しての行動ではないか!?)


 明らかに、沙苗を守るような行動に出た若い男性達に対し、儂は少し狼狽えてしまった。

 だが、表情には決して表さなかった。自分が1番偉いのだという自負があるからだ。

 そんな時、若い男性が言う。


「いきなり尋ねてきて、そのものの言い方はないんじゃないでしょうか?いささか常識に欠けるのでは?ましてや、こんな非常識な時間…にね。」


 そんなことを、この儂に向かって言ってきたので、儂も言う。


「なんだ貴様は?沙苗が此処に居るから連れ戻しに来たんだ。黙って沙苗を此方に渡せ!!さもなくば、貴様を誘拐犯として警察に突き出すぞ?」


 儂がそう言うと、若造が反論してくる。


「誘拐犯……ですか。その前に、貴方は誰ですか?名乗りもせずに沙苗を引き渡せと言われましてもねぇ。名乗りもしない相手に、はいそうですかと沙苗を渡す訳にはいかないですね。」


 その反論に対し儂は激怒したが、若造に名乗ることにした。


「貴様っ……!!まぁいい、名乗ってやる。儂は、貴様の傍に居る沙苗の父親の、西園寺 誠二郎だ!西園寺財閥グループの会長をしている。儂が名乗ったのだから貴様も名乗れ!」


 儂が名乗ったのだ。早く貴様も名乗るがいい。そう思っていると、若造も名乗った。

 だが、その名乗りを儂は聞き逃すことなど出来なかった。

 

 何故なら、「子供相手になんですか?そのものの言い方は……まるで常識がなっていないですね。それは一先ず置いておくとして、そちらが名乗った以上は此方も名乗らないわけにはいかないので名乗りますね。この瀬戸崎家の現当主にして、瀬戸崎財閥グループの現会長をしている、瀬戸崎 俊吾と申します。また、沙苗と同じ、私立城西学園高校の1年生でクラスメイトでもあります。」と、その若造が名乗ったのだから。


 若造が瀬戸崎財閥グループの会長だと名乗るも、それを信じきれなかった儂は、奴の傍に控えていた執事に聞く。若造が言っていることに嘘偽りはないのかと。


 すると執事が、「…俊吾様の言ったことに嘘偽りは御座いませんよ?全て真実で御座います。」と言ったのだ。

 その返答を聞いた儂は、膝から崩れ落ちる。こんな若造が、財閥界のトップに君臨してるのかと思いながら。

 これなら儂でも言いくるめられると思い、若造に対して攻勢に出た。

 だが、若造も反論してきて、話は平行線を辿っていた。

 そんな時、若造がこんなことを聞いてきた。


「沙苗を連れ戻す理由をお聞きしたい。答えてくれますか?」と。


 だから儂はこう答えてやった。


「沙苗を連れ戻す理由か?そんなの、政略結婚の道具にする為に決まってるだろう?瀬戸崎財閥グループのトップなのに、そんなこともわからんのか、貴様は。」とな。


 儂の答えを聞いた若造は唖然とした顔をし、沙苗は気絶して倒れた後、メイドによって部屋から運ばれて行った。



 沙苗が部屋から運ばれて行ってから暫くして、若造が聞いてくる。


「……沙苗が倒れたというのに、父親として心配しないのですか?実の娘なのに。」と。


 だから儂はこう答えた。


「政略結婚の道具が倒れた所で、別に心配する必要性が感じられないが?」と。


 それに対し、呆れた顔をしながら若造が言う。


「……貴方はどこまでも沙苗を道具としか見てないようですね。本当に沙苗の父親かどうか、疑わしくなってきましたよ。」


 そう言ってきた為、儂も答える。


「沙苗は正真正銘、血を分けた儂の娘だ。何を疑う必要がある?」と。


 何故、こんなくだらない事を聞いてきたのかが、儂には理解出来なかった。

 政略の道具以外に、なんの価値があるというのだ。そう思った時、若造の表情が怒りに染まっていく。

 そして、儂にこう言ってきたのだ。


「現時点を持って、西園寺財閥との取り引きを全て停止させていただきます!」と。


 その宣言を聞いた時、自分でも血の気が引いていくのが分かった。

 だが、それでも自分のプライドを貫き通す為、儂も反論する。


「ふんっ、瀬戸崎財閥グループとの取り引きなど、こっちから願い下げじゃわい!!取り引きを停止したこと、精々後悔するがいい!」


 儂はそう啖呵を切ってやった。すると、若造が儂に帰れと言ってきたではないか。

 冗談じゃない!沙苗を連れ戻さずして帰ることなど出来ないではないか!!

 そう思った儂は、更に反論の言葉を述べる。


「沙苗を連れ帰らなければ、儂の立場が危うくなってしまうではないか。それに、先方には既に沙苗との結婚の話しは済ませてしまっておるからのぅ。」


 それを聞いた若造は、「娘の気持ちを聞かずにですか?そんなに自分の立場が大事ですか?」と言ってきた。


 だから儂は若造にこう答えてやった!


「沙苗の気持ち?道具に気持ちなど要らぬであろう?寧ろ、感情など不要だ。儂にとって、娘のことなどよりも自分の立場の方が大事に決まってるだろうが。」


 この儂の発言がいけなかったのだろう。若造の逆鱗に触れてしまったようだ。


「本当に、貴方は何処まで自分本意なんだ?沙苗は家族なんじゃないのか?そんなに自分の立場が大事か?お前にとって沙苗は道具としてしか見てないってことが良く分かったよ!!お前なんて、親失「俊吾、ここからは私に話をさせてもらえないかな?」沙苗……分かった。」


 最後に"親失格"と、この若造は言いたかったのだろうが、その言葉は、いつの間にか部屋に戻ってきていた沙苗によって止められる。

 そんな沙苗を見て、儂は言う。沙苗を連れ戻すことだけを考えながら。


「戻ってきたか沙苗。さあ、帰るぞ!先方が首を長くしてお前を待ってるんだか「私、帰らないわよ?」……なに?」


 儂の発言を途中で止めた沙苗が言った言葉を、儂は理解出来なかった。

 それを見切ったかのように、沙苗は続けて言う。


「聞こえなかったかしら?帰らないと言ったのよ、私は。」


 帰らないと言った沙苗に対し、儂は激怒しながら言う。


「巫山戯たことを言うんじゃない!!お前に拒否権などない!!」


 そう言った途端、沙苗がもう反論してくる。


「なんで道具としか見てもらえない家に戻らなければならないのかしら?ねぇ、お父様?私の気持ちを考えてくれた事ってある?ないでしょ?そりゃないよね。貴方にとって、私は唯の政略の道具としてしか見られてないものね。貴方だけでなく、お母様にもね。」


 沙苗の言ってることが、まるで理解出来なかった。だから儂はこう聞く。


「何が言いたいんだ?」と。


 すると、沙苗が声を荒らげながら言う。


「何が言いたいんだ?ですって?巫山戯たこと言ってんじゃないわよ!!私の気持ちなんて一切考えずに道具扱いしてさ!!物心ついてからずっとだったよね!!それでも私は耐え続けてた。いつかお父様とお母様が私のことを娘として扱ってくれる日が来るんだって思って!!でも、そんな日は訪れなかった!!覚えてるでしょ?今日、私が家出する朝にお父様とお母様が私に言った言葉を!!」


「…………」


 儂は、口を開くことが出来ずに無言となってしまう。


「なんで黙りなの?朝に言ったこと、もう忘れたの?そんな訳ないよね?覚えてる筈だよね!!お父様とお母様は私に『お前を先方の嫁に出す。儂や母さんの立場を守る為に、政略の道具として犠牲になれ。そして、先方の性欲の捌け口としての道具として全うしろ!!それが、儂と母さんの間に生まれた娘としてのお前の唯一の価値なのだからな!!』ってね!!」


「そんな事を言った覚えはない!!」


 儂がそう言うと、沙苗は更に言う。


「覚えてるでしょ!!だったら、なんで目を逸らしてるの?それが覚えてるってことの証明よ!!だから私は今日、家出をしたの!!私は──私は貴方とあの人の道具なんかじゃない!!!!」


 ここにきて、ようやく沙苗が言いたかったことを理解した。

 沙苗は、西園寺家と縁を切るつもりだということを。儂がそう思った通りの言葉を、沙苗はハッキリとした声で宣言する。


「西園寺財閥グループ現会長並びに、西園寺家当主の西園寺 誠二郎に対して宣言します!!私、西園寺沙苗は───現時点を持って西園寺家とは完全に絶縁するということを!!」と。


 このまま沙苗を見逃せば、西園寺家や西園寺財閥グループを発展させる事が出来なくなってしまう。

 そう思った儂は、最後の足掻きとばかりにもう反論するも、若造や沙苗は取り合ってもくれなくなっていた。

 こうなっては実力行使に出るしかないと思った儂は、若造にではなく沙苗に飛びかかろうとする。

 だが、儂と沙苗の間に入った若造の手によって、儂はテーブルの上へと一本背負いで投げ飛ばされてしまう。


「ぐふっ……」ガシャーーンッ!!


 儂がテーブルの上へと投げ飛ばされたせいで、ティーカップが宙を舞い、床に落ちていって割れる。

 テーブルの上で無様に転げ回っている儂を、若造が冷たい目で見ながら言い放つ。


「女性に手を挙げようとするとは……男の風上にもおけない男ですね貴方は。沙苗に手を出そうとするものは、僕が絶対に許さない!!権力を使うのは好きじゃないが、沙苗に手を出すと言うのなら……政略の道具に利用すると言うのなら……沙苗を守る為ならばっ!!瀬戸崎財閥グループ会長として貴方を───西園寺財閥グループを潰すことをここに宣言するっ!!!西園寺財閥グループ会長、首を洗って待っておくがいい!!!」


 そう言ってきた若造に対し、儂は声を荒らげながら言う。


「な、な、なっ!?潰すというのか!!儂を!!西園寺財閥グループをか!?たかが政略の道具の為だけにか!!」


 儂の言葉に対し、若造は更に言い放つ。


「ああ、徹底的に潰す!!沙苗は───沙苗は感情を持った1人の女の子だからだ!!実の娘を道具としてでしか見ていない貴様には一生分からないだろうがな!!沙苗の感情も一生の人生も───全ては沙苗自身の物だ!!沙苗自身以外の誰にも、感情や生き方を決める権利などありはしないんだよ!!だから僕は、合法的に西園寺財閥グループを徹底的に潰させていただく!!!」


 この言葉を聞いても尚、儂はまだ沙苗を連れ戻さなければと思い、沙苗の方を見た。

 だが、儂を見る沙苗の目も、若造と同じであった。そして、儂に対してトドメの一言を、沙苗は言う。


「最後に一言だけ。お父様、16年間育てていただきありがとうございました。これだけが、お父様に対しての唯一感謝していることです。だから私は、瀬戸崎 俊吾という素晴らしい男性に巡り会うことが出来たのです。だからもう、私は貴方とは2度と顔も合わせたくもありません。会うのはこれが最後です。そしてこれを言うのも、これが最後です。さようなら、お父様。」


 沙苗のこの一言で全てが決してしまった。若造の指示により、儂は屋敷から強制的に追い出されてしまう。

 沙苗を連れ戻すことが出来なかったと、失意の中、儂は自分の屋敷に戻る。


 屋敷に戻った儂を、妻の美千代が出迎えてくれる。


「その様子だと、沙苗を連れ戻すことは出来なかったようですね。沙苗は何処の家に居るのですか?」


「すまん、美千代。沙苗は、瀬戸崎財閥グループ会長の屋敷に居た。」


「瀬戸崎財閥グループですって!?まさか、沙苗がそんな所に逃げ込んでいるとは、ね。先方にはどう説明をすれば……」


「先方には、正直に話す他あるまい。あわよくば、協力してもらって沙苗を連れ戻すということも出来るだろうからな。」


「それもそうね。」


 そんな会話を美千代とした儂は、次の日の朝に電話でことの子細を先方に伝えた。

 先方の方も、儂の提案に乗ってくれる運びとなったので、儂は会長室で作戦を練る。瀬戸崎財閥グループを潰す作戦を。




─西園寺財閥グループ会長室─


 瀬戸崎財閥グループを潰す作戦を練ってから数日後、儂がいる会長室に血相を変えた秘書の中山なかやまが飛び込んできて言う。


「か、会長っ!!た、大変です!!」


「騒々しいな。何があった?」


「そ、それが……け、警察官が大人数で押しかけてきました!!」


「な、なんじゃと!?」


 秘書の中山から告げられた言葉に驚いていると、部屋に警察官がなだれ込んできた。


「動くな!!警察だ!!」


「なんだお前らは!!儂は何もやっとらんぞ!!分かったなら帰れ!!」


 儂がそう言った時、1人のスーツ姿の男が懐から紙と警察手帳を出しながら儂に言う。


「城西警察署生活安全課所属、警視正の瀬戸崎 俊介と申します。まぁ、他の部署にも所属してるんだけどね。」


「け、警視正だと!?それに瀬戸崎って……まさかっ!?」


「そう。俺は瀬戸崎財閥グループ現会長、瀬戸崎 俊吾の実の兄です。」


「彼奴の、実の兄だと!?」


「そうです。そんなことよりも、西園寺財閥グループに対する家宅捜索差し押さえ状の令状が下りてますので、現時刻11時14分を持って捜査を開始します。かかれ!!」


「「はっ!!」」


「や、止めるんだ!!今すぐ止めさせろ!!」


「令状が下りてる以上、やめませんよ?それとも、貴方は国家権力に楯突くつもりですか?」


「そ、それは……」


 いくら儂とはいえ、国家権力に楯突くことなど出来なかった。

 あらゆる資料が押収されていく所を呆然と見ていた儂に、警視正の男が言う。


「令状がもう一つあったのを思い出しました。西園寺 誠二郎、横領・脱税・育児放棄・人身売買未遂の罪により、貴方に逮捕状が出てるので逮捕させていただきます。取り押さえなさい!!」


「わ、儂が逮捕だと!?じ、冗談じゃない!!お、おい、離せ!!離せと言ってるのが分からんのか!!」


 そう言って、儂を取り抑えようとしていた警官の1人を殴る。


「ぐわっ……」


「公務執行妨害のオマケ付きですね。往生際が悪い……神妙に縛につけ!!現時刻11時35分、公務執行妨害の容疑で現行犯逮捕する!!連れて行きなさい!!」


「「はっ!!」」


 こうして、儂は逮捕され警察署へと連行される。連行されるパトカーの中で、儂は思った。

 どうしてこんなことになった。一体、何処で道を踏み間違えてしまったのかと───




─同日同時刻、西園寺家─


 私、西園寺 美千代は今、混乱していた。いきなり警察が押し寄せてきたからだ。


「西園寺 美千代さんで間違いありませんね?」


「……はい。」


「わかりました。育児放棄・人身売買未遂の罪により、貴女に逮捕状が出てるので逮捕します。また、家宅捜索差し押さえ状の令状も出てますので、同時に行わせていただきます。かかれ!!」


「「はっ!!」」


「な、何故私が逮捕されなければいけないのよ!?」


「実の娘である西園寺 沙苗さんを政略の道具扱いしていたからですよ。人を政略結婚の道具として扱うことは、法律で禁じられているのですよ?」


「そ……そんなの知らなかったのよ!!」


「知っていようが知っていまいが、貴女に逮捕状が出てる事実は変わりませんので、神妙に縛について下さい。彼女に手錠を。因みに、貴女の旦那さんである西園寺 誠二郎も同様の罪で逮捕したと、警視正の瀬戸崎さんから聞きました。」


「瀬戸崎!?」


「貴女が知らなくとも無理はありませんね。警視正の瀬戸崎さんは、瀬戸崎財閥グループ現会長の実の兄なのですから。」


「そ……そんな馬鹿な……」


「……現時刻11時35分、逮捕する。連れて行きなさい。」


「「はっ!!」」


 押しかけてきた警察官によって、私は逮捕され、パトカーに乗せられる。

 警察署へと連行されるパトカーの中で、私は思う。

 一体、何処で道を踏み間違えたのかと。沙苗を愛してあげればよかったと後悔する。

 逮捕された今、後悔しても遅いのだということを、美千代は今更ながらに痛感するのであった────






─瀬戸崎家ダイニング─


 沙苗が西園寺家との絶縁を宣言してから数日経った日の朝、沙苗と朝食を食べながら観ていたテレビに、1つのニュースが流れる。


『次のニュースです。西園寺財閥グループ現会長、西園寺 誠二郎氏並びに西園寺 美千代氏が逮捕されました。

 逮捕理由は、誠二郎氏が財閥の金を横領していたことが発覚。それに合わせて脱税をしていたことも発覚した為、逮捕された模様です。横領した額は、少なくとも2億以上とみられています。脱税した額に至っては、6億以上とみられ、余罪の有無を含めて警察の捜査が続けられる模様です。

 美千代氏の逮捕理由ですが、実の娘を政略の道具として他人に売買しようとした為、人身売買未遂罪の容疑で逮捕された模様です。

 美千代氏にも余罪があるとみて、警察の捜査が続けられる模様です。

 両名の逮捕に関して、西園寺財閥グループ側はなんのコメントも出してはいませんが、グループ傘下企業への影響は計り知れないと思われます。また、瀬戸崎財閥グループの宣言も尾を引く形となるのは間違いないでしょう。』


 このニュースを黙って観ていた沙苗が言う。


「本当の意味で、西園寺家と西園寺財閥グループは終わるのね。まぁ、俊吾……瀬戸崎財閥グループに盾つかなくとも、結果は見えていたでしょうけどね。」


「このニュースを観る限りだと、そんな感じだね。」


「でもまぁ、私にはもう俊吾がいるから。だから、両親が逮捕されて、寧ろ清々したくらいよ。」


「……そっか。沙苗がそう思っているのなら、それでいいんじゃないかな。」


「うん。私はもう自由だから。だから、これからは俊吾の為に生きるね!」


 そう言って、僕に抱き着いてきた沙苗の目からは、一筋の涙が流れてるのだった───






次話タイトル↓

閑章 それぞれの末路他

竜ヶ崎 颯澄、龍蔵の末路

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