閑話 沙苗が自由になった日(2)
閑話の2話目の投稿になります!
俊吾君の正体を知ってから暫くして、俊吾君……いや、俊吾の屋敷で働いているメイドさんが応接室に入ってきた。
応接室内に入ってくるなり、そのメイドさん告げた言葉に対して、私は驚くのと同時に、なんで私が此処にいることが分かったの!?ということで頭がいっぱいになった。メイドさんが告げた言葉が、「西園寺財閥グループの会長が尋ねて来ました。」という言葉だったのだから。
そこで私は、ふと思い出す。西園寺家で自由を縛られてた私のスマホは、私の行動を監視する為に、両親がGPSを探知出来るようにしていたことを……だから、GPS探知機能を使って私の居場所を調べて、この場所に尋ねてきたのだろうという事実に。
そして、政略の道具として私を西園寺家に連れ戻す為に。
だが、自分の父親が尋ねてきたと聞いてから、不安と恐怖に怯えていた私に、俊吾は優しい口調で言ってくれた。「沙苗、大丈夫だから僕に全て任せて欲しい。」と。
その言葉を聞いた私は、感極まって俊吾に抱き着いてしまっていた。私にとって愛しい人の言葉は、正に救いの言葉なのだから。
それから暫くして、私の父親が応接室内に入ってきた。だが、入ってきて早々に発した言葉は、まるで常識とは掛け離れた言葉でした。ほんとに西園寺財閥グループの会長なの?という感じでした。
それに対して応対する俊吾は、私と同じ高校生なの?と、疑ってしまうくらいの対応力で、私の父親と対峙していました。自分の父親とは天と地の差だなとも思いました。学園では決して見せることのない俊吾の一面をまじかに見て、胸が熱くなっていく自分がいることを自覚していく。
その後も、俊吾と誠二郎の話し合い?は続いていく。その最中、私を連れ戻す理由を、俊吾は誠二郎に聞く。その返答が「沙苗を連れ戻す理由か?そんなの、政略結婚の道具にする為に決まってるだろう?瀬戸崎財閥グループのトップなのに、そんなこともわからんのか、貴様は。」という返答だった。
その言葉を聞いた私は、いつかお父様とお母様に愛してもらえる……実の娘として私を見てくれる……そんな想いが粉々に打ち砕かれたことを悟る。
幼少期から、『お前の一生は、儂の立場や西園寺財閥グループを繁栄させる為の道具だ!それ以外にお前が生きる価値はない!!一生、儂の道具として生きよ!!』という言葉を叩き込まれながら、今日までの16年間を生きてきた。
それでも私は愛されたかった!!お父様とお母様に愛されたかった!!それだけを願いながら、今日まで耐え続けてきた。でも、さっきの言葉を聞いて分かった……いや、分かってしまった。
この先一生、自分がお父様とお母様に愛されることはないだろう……道具としてでしか私を見てくれないだろう、と。
そう思った時、意識が遠くなっていくのが分かった。薄れ行く意識の中、倒れていく私の名前を心配そうに叫ぶ愛しい俊吾の声を聞きながら、私は意識を手放した。
意識を失ってからどれくらいの時間が経っただろうか。私は目を覚ます。知らない天井だなと思いながら。どうやら意識を失ってから別の部屋に運ばれて、ベッドの上に寝かされたようだ。
私が目を覚ましたことを、ベッド傍に控えていたメイド長の遥さんが気付いて、私に声を掛けてくる。
「お目覚めになられましたか。気分は如何ですか?」
それに対して、私は返答する。
「はい、お陰様で幾分かは良くなりました。」
「それは何よりでございます。それでですが、俊吾様の元へと戻りますか?それとも、まだお休みになられますか?」
「いえ、俊吾の元に戻ろうと思います。あの人に言いたいこともありますので。」
「畏まりました。それでは、応接室までご案内致します。」
目を覚ました私は、遥さんとやり取りした後、遥さんの案内で応接室へと戻る。
応接室に戻ると、怒り心頭の俊吾が、誠二郎にこう言っている場面だった。
『本当に、貴方は何処まで自分本意なんだ?沙苗は家族なんじゃないのか?そんなに自分の立場が大事か?お前にとって沙苗は道具としてしか見てないってことが良く分かったよ!!お前なんて、親失』と。
だから私は、最後に『親失格』と言おうとしていた俊吾を止める。『私にも話させて?』と。
いつの間にか傍にいた私に一瞬だけ驚いた表情をした俊吾だったが、私の気持ちを察してくれたのか、俊吾は私に譲ってくれた。なので私は、ありったけの気持ちを込めて誠二郎に言ってやった。ついとばかりに、西園寺家とは絶縁するという宣言も言ってやった。
それでも誠二郎は反論してきた。
それから暫くしても、誠二郎はうだうだと言ってきたので私は再び、西園寺家との絶縁を誠二郎に対して宣言する。
それに激怒した誠二郎は私に飛び掛ってくる。そこへ俊吾が私と誠二郎の間に入ると、なんと俊吾は誠二郎を一本背負いでテーブルの上に投げ飛ばしてしまったのです。そんな俊吾に、私は再び抱き着き、胸に顔を埋める。
俊吾がカッコ良すぎるから抱き着いて胸に顔を埋めてしまっても仕方がないよね!!って思いながら。
それから、テーブルの上に無様に倒れる誠二郎を冷めた目で見ていた俊吾が言う。
「瀬戸崎財閥グループ会長として貴方を───西園寺財閥グループを潰すことをここに宣言するっ!!!西園寺財閥グループ会長、首を洗って待っておくがいい!!!」と、手を握りしめながら。
それを聞いた誠二郎はこう言う。
「な、な、なっ!?潰すというのか!!儂を!!西園寺財閥グループをか!?たかが政略の道具の為だけにか!!」と。
そう反論してきた誠二郎に対して、俊吾は言う。冷えきった目で誠二郎を見ながら。
「ああ、徹底的に潰す!!沙苗は───沙苗は感情を持った1人の女の子だからだ!!実の娘を道具としてでしか見ていない貴様には一生分からないだろうがな!!沙苗の感情も一生の人生も───全ては沙苗自身の物だ!!沙苗自身以外の誰にも、感情や生き方を決める権利などありはしないんだよ!!だから僕は、合法的に西園寺財閥グループを徹底的に潰させていただく!!!」と。
だから私は、それに続くように誠二郎に対して言う。決別の意味を込めて。
「最後に一言だけ。お父様、16年間育てていただきありがとうございました。これだけが、お父様に対しての唯一感謝していることです。だから私は、瀬戸崎 俊吾という素晴らしい男性に巡り会うことが出来たのです。だからもう、私は貴方とは2度と顔も合わせたくもありません。会うのはこれが最後です。そしてこれを言うのも、これが最後です。さようなら、お父様。」
それを私が言った後、俊吾が執事の相良さんに誠二郎を退出させるように指示を……否、実質は強制退出させるよう指示を出した。
その途端、応接室に入ってきた黒服達に両脇を掴まれながら、誠二郎は応接室から連れ出されて行った。予め、黒服達に応接室前にて待機しているように指示が出されていたようだ。どんなトラブルが起こっても直ぐに対応出来るように。
西園寺財閥会長が応接室から退出した途端、私は安心してしまったようで、俊吾の胸に顔を埋めながら抱き着いたまま、眠りに落ちていった。愛してる人の匂いに包まれながら────
次話タイトル↓
第1章 学年一の美少女クラスメイトとの同居生活開始編
第10話 西園寺財閥グループ会長の来訪から一夜明けた朝
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