目を瞑り、傷つけあい、
家紋 武範さま企画『夢幻企画』参加作品です。
Twitterの企画にあげた過去の作品をなろう仕様にリメイクしております。
『限りなく透明に近いブルー』のこと考えてたらこんなもんが出来ました。
単作シリーズ『カメラ一台のロマンス』第三弾。
最後にキャラ紹介あります。
夢を見た。
真っ白な部屋のベッドで、彼女が微笑んで抱いていたのは、
小さくて柔らかい塊。
彼女が「抱いてあげて」と囁く。
その塊は小さく、けれど強く、
命の温かさを感じるものだった。
でも、彼女は、
その夢すら赦さないんだろう。
僕は、彼女の優しさに甘えていて、
彼女が一生苦しいことを知っていて、
僕の居場所を彼女に求めている。
だんだん空が明るくなってきた。
僕の額から流れる体液が乾いていて、
指先を赤黒く染めた彼女はまだ寝ていた。
ああ、食パンと卵を食べなくちゃ。
りんごジャムのトーストとオムレツにしよう。
キッチンシンクは、昨晩からずっと冷たい。
あんたといると苦しい、と僕を殴った細腕も、
軋む躰を宥めるドラッグも、
鼻から流れる融けた脳も、
地べたで寝そべって啜るホットミルクも、
隣の部屋から聞こえる甘い咆哮も、
群青色に変わる空も、
目を潰す朝陽も、
ぜんぶ、ぜんぶ、彼女への美しい救済を作るものだ。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
キャラ紹介
僕……「彼女」と暮らす十代の青年。病院清掃のアルバイトをしている。家や学校に居場所を見つけられず高校を退学して家出。同じく社会から省かれた「彼女」と同棲している。「彼女」の暴力を受け止め、「彼女」に奉仕することで居場所を作っている。「彼女」のことが好き。
彼女…「僕」と暮らす二十二歳の女。無職。十九歳のときにリンチされた精神的外傷から人間への恐怖心が大きく、「僕」に暴力を振るうことで精神を落ち着かせている。恐怖心、自己嫌悪、「僕」への罪悪感に苛まれながら、「僕」の居場所を作っている。「僕」には自分から逃げて欲しい。