表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/45

ちんぷんかんぷんな術式の隙間

 なんかすごい。マルセスがなんかすごい。

 なんていうか、何をやってるのかわからない。はめた手袋からたくさんの線が伸びていて、それがたくさんの外部機器に接続されとる。よくわからんけど解析とか総当りとかそういうのをアウトソージングしているもよう。なんか機械人間ぽい。


 俺はリシャたんに持ち上げてもらって壁の紙を見よる。

 なんちゅうか、字が下手くそやな、ホンマに。顔を斜めに倒したら読めんくはないんやけど。それでなんとなくコマンドっぽいものを探す。コマンドっちゅうか英語っぽいのを選んでリシャたんに取ってもらう。


「字が小さいものがよいのか?」

「そうやなぁ英語いうんやけど」

「これはそうか?」

「いや、それは顔文字いうん。顔っぽい……やん? 斜めに見れば」

「斜め……」


 一緒にコテンと頭を倒す。顔文字にも下手とかあるんやね……。

 ともあれ今、マルセスは魔女さんにアクセスする方法を探しとる。計画では魔女さんの居場所にこの簡易祭壇を繋げてリシャたんが入ってボニたんをなんとか外に引っ張り出す。ほんまは俺が行けるとええんやけど、俺は魔力でできとるみたいやから魔力回路に入ってしもたらそのまま流されてなくなってしまうかも言われたん。ぐぬぬ。魔力なんかな。やっぱり魔力が何か全然わからんのやけど。

 見つけたコマンドっぽい紙片を束ねてマルセスのところに持っていく。


「どう? いけそう? ボニたん大丈夫かな」

「アブソルトが極端な変態であることがわかった」

「まぁそうなんやろうなぁ」


 マルセスが最初に簡易祭壇を調べた結果、魔力回路には繋がっていなかった。

 そもそも魔力回路はアストルム山のように魔力発生源みたいなところやなければ常に緩やかに移動しているらしい。川みたいなもんなんかな?

 それでアブソルトは自動的に魔力回路を探索するアプリみたいなんを作って自動接続するようにしとったようやけど、それに関するメモが酷い。


ーロリババア萌え。

ー追い出されたでござる。探しに行くでござる。ラルフュールたん待ってて!

ー毎回手動で探すのめんどうくさいな。おし、オートにするでござる。


「これは何と書いてあるのだ?」

「ええと……魔女さんに繋がるのに毎回魔力回路を探すのが大変だから自動的に見つけられる方法を作ろうって書いてあるん」

「ふむ。やはりアブソルトの技術自体が卓抜しているのか。それを悪用して魔力回路から魔力を引き出したのであろうか?」

「えっと、悪用はわからんけど引き出したんは多分、そうなんかも?」


 書いてあることはともかくとしてその周辺のメモを漁ってマルセスがアタックしている。アブソルトがニーモニックを設定している分まだまし、と言っている。

 何がなんやらさっぱりわからんけど、ニーモニックいうのはPCで言うと素の機械言語を人間が読める形式にしたもので、パソコンならだいたいはCPU、つまり機械自体に用意されている。

 アブソルトは魔女様が魔力を管理するための素データ、多分魔法とかを直接扱うための最も基礎的な人間の言葉になっていない概念を解析して、パターンを見つけてそれを人間に、いわば16進数やら0やら1やらの言語から独自のパターンや意味を見つけ出して逆算して言語化したらしい。

 それで魔力を操るための文法を作った。それらをパッケージ化した命令式がリシャたんたちがつかう機甲の[展開]やら[付与]という術式みたい。

 何がなんやらさっぱりわからんが、ようするにアブソルトは魔力を解析して独自に使えるようにしたらしい。うーん、意味がわからないが、きっとものすごいことなのだろう。魔力って何?


 それでマルセスはアブソルトが作った自動で魔力回路を探す方法を作ろうとしてるんやけど、俺が『スピリッツ・アイ』つこたらわからんかな。


「なぁ。『スピリッツ・アイ』使たら魔力回路の場所わかるかも」

「……魔石化が進行するぞ」

「あれな、ようわからんけどカゴの中とか実験室なら大丈夫やったよな。ここも大丈夫やったりせん?」

「わからない。この場所に特殊な設定がされているのはなんとなくわかる。けれどもアブソルトの言語が特殊すぎる」


 でもボニたん助けんとあかんやん?

 ようわからんけど初期化ってめっちゃ不穏な単語やしマルセスはまだ大丈夫や言うてたけどわからんばっかりやし。

 ええと。


『スピリッツ・アイ』

「ちょ、デュラはん!?」


 その瞬間、なんかに吸い込まれるような感覚があってすぐにオフにした。今までみたいに頭が割れそうに痛くなったりはしなかったけど、めっちゃクラっとした。


「デュラ、大丈夫か!?」

「死ぬかと思た。ほんま吸い込まれそうな感じやった」

「デュラはん、異常はないか? 顔が青いぞ」

「う、う、でもなんか魔力回路いうんはわかったかも。流れていく方法ちゅか、ええと、ここから祭壇の方向を前提に右36度下40度あたりかな」


 漁師さんに獲物の場所教える練習しとってよかった。

 でも何や今の、あれが魔力回路なん? めっちゃ流れそうな感じになったけど。

 あれはやばい。あと1秒たっとったら意識がなくなっとったかもしれん。あれが魔力いう感覚なんやろか。わからんな。うーんでも、流れか。

 ふと見回すと、部屋が線だらけになっとるんが見えた。さっきまで見えてなかった何か。なんだろう。


「見つけました。リシャール様、これでアストルム山につながるはずです」

「よくやった」

「けれどもご注意ください。直上のアストルム山とこの部屋とはそもそも様々な条件が異なります。異常があればすぐにお戻りください」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ