俺氏、突然拉致られる。
ものごっつ痛い。ごんごんに痛い。
俺は鳥カゴの中でめちゃめちゃ頭をぶつけていた。知らん奴らにカゴ奪われて全速力で持ち去られ、つまりその間俺の頭は狭いカゴの中をしっちゃかめっちゃか跳ね回った。パイナップル再来、にはなっとらんやろうけど、ともあれ痛いん。ちょっと涙出るん。
「それでコレはなんなのか」
「わかりかねます」
「死体を加工したものなのか?」
「死体に魔力を保持できるものでしょうか? 魔力は魂に宿るものと習いますが」
訪れる沈黙。漂う紅茶の香り。ええ香りやなぁ。
拉致られた先はおそらく誰かの家で、メイドさんかわからんけどようけ人がおりそうやった。やから多分ある程度の大きな家。で、多分今は人払いしてて俺を攫った奴とその主人か依頼主的な奴の2人きりやと思う。
そんで俺はとりあえず目え瞑っとった。状況がわからん。死体と思われとるんやったらそのほうがええかもしれん。
「黒髪ということは異世界人の頭だろうか。それであればひょっとしたら何らかの特殊能力で魔力を保持しているのやもしれぬ」
「わかりません。首元は断面が露出するわけでもなく皮膚で繋がっているように見えますから何らかの処置が施されているものと思われます」
「ええい、わからぬわからぬでは埒が明かん。やはりカゴは開かぬのか?」
「機甲師団が封印しているようです。解析には時間がかかるやもしれません」
へぇ。このカゴってそんな特殊なカゴなんか。入っとる限りでは特別な感じはせんけど。
ともあれギュウて目を瞑っとったけど、話を聞く限りこのカゴを開ける方法がわからんらしい。
それにしてもボニたんは大丈夫やろうか。どう考えてもボニたん1人で逃げ切れるとは思えへん。いや、今のところは多分大丈夫やろ。情報源に早々簡単に危害を加えたりはせんと思う。おそらく。
「それからあの保持者は改めたか?」
「それがステータスカードを所持しておりませんでした」
「所持してない? そんな馬鹿な。どうやって入領したのだ」
「所有物を改めてキーレフにも問い合わせをしましたが、入領証明書で入領しています。名前はボニ・キウィタス。アブシウム教国から観光目的での入国です」
「証明書? 子どもでもあるまいし何故そんなもので入国を……?」
リシャたんの前では咄嗟に本名を言うてしもうたけど、ボニたんはなんたらいう長い名前ではなく村長が発行した証明書でボニ・キウィタスという名前で入国した。普通は魔女様いうんが発行する所持者の素性を証明するステータスカードを示したら領境やら国境いうんはパスできるらしいん。
やけど、どうやらあの長い名前は教会で信仰している天使か何かの大事なもんの名前で、ひと目で教会の関係者とわかるらしい。ひと聞き?
さすがにボニたんが生きとるいうんを教会にバレるんはマズいから出生した村の証明いうことで村長さんに発行してもろた。ステータスカードをもらう前の小さい子どもが出国とかする時はその証明書を使うらしい。
俺らは急に襲われた。
ボニたんはリシャたんに協力するか随分悩んどった。俺にはようわからんけど教会の秘密いうんを喋るんは何かマズいらしい。でも教会から殺されそうになっとったのになんで義理立てしよるんやろ。そのへんはようわからん。それにボニたんはこういうたらなんやけど、そんなに信心深いわけではないような気はする。
村では教会で祈りを捧げたり村人にええ話をしよったりしとったけど、なんとなくお仕事感でしよった気はするし。
そうそう、それでボニたんは真面目やから何か居候しとんが苦になっとったんやろうなぁ。村でもせんでええ言われとるのに養殖池の管理人しよったし。やから色々見て回って、まあとりあえず機械の体いうんがどういうもんかがだいたいわかったからそろそろ帰ろ思うたんやろ。
いつもどおりコレドと晩御飯を食べて宿舎に戻った後、妙に申し訳無さそうな声で聞かれた。
「デュラはん、僕はそろそろ村に帰ろうと思うんだ」
「結構見て回ったしねぇ」
「ごめんねデュラはん。君が体を欲しがっているのはわかってる。けれどもやっぱりすぐに作るには無理そうだし僕は秘儀は教えられない。だから元の領域に帰りたい」
「ええで。ほな帰ろうか」
「えっいいの?」
「まぁ秘儀はようわからんけど体は俺の事情やし、ボニたんが嫌なことはようせんよ」
「ほんと、ごめんね」
けれども上手くいかんような気はしていた。
午前中の実験の時にリシャたんやコレドに聞いたけど、最初に俺らを襲ってきた大きな地竜は俺から漏れる魔力に寄り集まって来たらしい。今はこのあたりの竜は狩り尽くす勢いらしいけど全部ではないから少なくとも魔力が検知されないような目処がたつまでは滞在したほうがええらしい。
そう言われたらそうなんかな、いう気はするんやけど俺は相変わらず魔力いうもんがようわからん。よう聞いたら生きとるもんは自然に帯びとるもんらしいから、それは呼吸とかそういうもんやない? 思うて息を止めてみたけど関係ないみたいで、その魔力やらいうもんは俺が動いたら漏れてるらしい。
まあ俺はもともと俺は息しよらんしな、多分。でもなんか液漏れしとるみたいで嫌なんやけど。
そんなわけで申し訳ないけどこっそり出て行こういうことになって、宿舎を出てちょっとだけ行ったところで暗がりに隠れていたやつにいきなり襲われた。多分計画的なやつ。
けどリシャたんたちもおそらく補足してる、はず。俺らの周りには常に誰かおったわけやから。
このへんボニたんは抜けとるんよな。




