エピローグ
アミル視点です
教会の鐘が鳴る。いつもは洗いざらしのシャツとパンツが定番のアミルだが、今日ばかりは礼服に身を包み、緊張の面持ちで席に着いている。エンパイアラインの純白のドレスは、今まで見たどの服装よりエリーザベトを輝かせていた。襟も袖も長くないため、ところどころ傷痕が見え隠れするが、式場にいる誰もが気にしていない。もともと、エリーザベトはルートヴィッヒに会うときや国内の貴族のパーティーに参加するときのみ体が隠れるドレスを着ていたらしい。自宅内は元より、外交の場でも堂々と傷痕を晒していたと知った時には、アミルですら本気で驚いた。
「暴走した魔力というのは、少なからず好意を抱いている相手に向かうものだと習いませんでしたか?この傷は正真正銘、ルートヴィッヒ殿下が私にくださった初めてのプレゼントですのよ。そんなものを隠すなんてもったいないこと致しませんわ」
意図が分からず尋ねた時の、エリーザベトの自慢げな顔ときたら。
今だって、結婚式に緊張しているのは、エリーザベトではなくルートヴィッヒの方である。美しくも醜く、誰よりも肝の座った花嫁は、アミルの願い通り、不甲斐ない夫をうまく操縦して国の舵取りをしてくれることだろう。そんな未来を想像して、アミルは悪くないとほくそ笑んだ。
最期までお読みいただきありがとうございました。
結局、最後までルートヴィッヒのひとり相撲でした。