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#7 side L

 案内された部屋で、私はリジーの隣にぴったりと寄り添ってアミルを牽制した。睨みつける私と、真っ赤なリジーを見比べて、アミルは肩をすくめただけだったが、ゾフィーは違った。


「こんなはずじゃ……アイルホルン家の栄光は……」


 ブツブツ呟いている言葉はほとんど聞き取れないが、どうやら彼女には牢へ行ってもらった方が良さそうな雰囲気だ。


「それで、何故このようなことになったのかお話いただけますかな、殿下方」


 困った様子で促すのは、学院長と、宰相だ。急遽王宮から呼びつけられた宰相は、目の下にクマを作っていて不機嫌そうだ。


「何故って、俺は父上に相談の上で異母弟の愚行を止めに来ただけだ。そしたらどうだ、可哀想なルートヴィッヒは魔女に洗脳されて操られていただけじゃないか!」


 芝居がかったアミルの報告に、学院長が眉を寄せる。魔術師の一族といえども貴族の端くれ。娘を生徒として預かる身では、是とも否とも言えないのだろう。

 なので、私はアミルの三文芝居に乗ることにした。


「実は、ゾフィー嬢に近づいたのは私からなのです。エリーザベトの傷を少しでも消す術はないかと、魔術に長けた彼女に相談しました。様々な方向から意見をくれるゾフィー嬢との研究は楽しかったのですが、いつの間にか、私はエリーザベトを排してゾフィー嬢を妻にと、まるで思ってもいなかったことを本気で考えるようになっていたのです。今思えば恐ろしいことです。初めて会った時からずっと惹かれて止まないエリーザベトと、一時でも離れようと思ったなんて!」


 本当に、冗談じゃない。どうして、離れられるだなんて思ったのだろう。リジーは私の魂そのものだ。前世から恋焦がれて、そのために異母弟にまで生まれ変わったというのに。


「ルーイ殿下?」


 リジーが少し首をかしげた。心底不思議そうな目で私を見つめる。


「私、この傷がなかったらなんて、申し上げたことがありまして?」

「いや、ない……けど」


 王宮の侍女たちが言っていたのだそうだ。「将来の王妃が、あんな傷のある女だなんて」と。それを聞いて、私はリジーを認めてくれない人間に彼女を認めさせようと思ったのだ。傷があるから駄目だというのなら、傷痕を綺麗に治してしまえばいい、と。


「短絡的だな」


 アミルが言う。返す言葉もないとはこのことだが、そもそもその話を私にしたのはお前じゃないか。リジーは自分の外見をハンデとせず、己を磨いていたというのに。


「ひとまず」


 宰相が疲れた顔でゾフィーを指さす。


「人心に働きかける魔法は禁忌です。使ったものは裁判にかけられることが決まっている。一旦彼女を牢へ。それから、アイルホルン家には監査を入れましょう」


 警備兵にゾフィーを王宮の牢へ移すよう命じ、学院長と宰相は席を立った。


「今回の騒動に関しては、国王陛下からただの兄弟喧嘩だと伺っております。ルートヴィッヒ殿下、兄上と女性を取り合うのも結構ですが、今後は国政に関しても真面目に学んでいただけることを期待しております」


 どうして、私だけ。不満が顔に出ていたのを見て、リジーは口の端を持ち上げる。はにかんだ微笑みは私の大好きな表情だ。


「リジー、聞いてほしい」

「はい」


 私は勇気を振り絞ってリジーの前に跪き、彼女の手を取った。


「私には、前世の記憶がある」


 大きな目を瞬かせるリジー。


「私の前世は兄上で、私はリジーを愛していた。だから、私は私に生まれ変わったと知った時、とても嬉しくて、今度こそ君を諦めなくていいんだと思ったんだ。でも、前世のルートヴィッヒのように冷たくしなくても、どれだけ大事にしても、君の心は兄上に向かっているのだと知って、どうしても君の心が手に入らないならせめて、傷のない君をプレゼントして笑いかけて欲しかったんだ」

「あら、まあ。ルーイ殿下ったら、夢は寝てから見るものでしてよ?」


 コロコロと笑うリジーに、「アホか」と嘆くアミルの声が重なる。


「馬鹿だ馬鹿だと思ってたが、どうやったらそんな斜め上の勘違いができるんだ……」


 斜め上の勘違い?え?え?どういうこと??

お読みいただきありがとうございます。

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