迫撃!トリプル・ドリ
私は川、というよりもう渓流だな、そこをさかのぼっていく・・・だんだん水量がなくなり、水が岩の割れ目から滴ってくるところまで来た・・・ここは、迷い惑わしの森の水場に似ているな・・・アナちゃんは元気にしているかな?昨日狩ったボアの子供たちは・・・もう少しふわふわ感が欲しいな。この辺だとフォレストラビットがいたか・・・まだ見かけないが。あーいかんいかん!集中しておかないと。
私は再び自身の気配を消す・・・いる!近いぞ!向こうもこちらに気づいた!先ほどの四羽とは違い、こちらは連携が取れている!早い!私は弓で仕留めるのを諦める、あの動きは剣でなくてはだめだ!奴らの武器は・・・嘴と爪!それに異常な速さだ!それに連携が加わるとは・・・ここは場所が悪いな!私は大木を背後にする!神経を研ぎ澄ませ!考えるな!感じろ!む!三つあった気配が一つしかない!逃げた・・・いや違う!一つしかない気配が大きくなっている・・・三羽まとめて・・・来る!一羽目が飛び上がった!二羽目がその後ろから私にまっすぐ突っ込む!上に跳んだ奴は瞬時、間がある!こちらに突っ込んでくる二羽目をいなして、さらにその後ろから変則的に横に跳んだ三羽目を向いて横なぎ!その場を離れて上からくる一撃を躱す!すぐに剣を振り上げる!まず一羽仕留める!そして横なぎして動きが止まった奴に剣を振り下ろす!二羽目!最初私に突っ込んできたやつに隠れてその直後にいなしたやつを一対一で仕留める!よし!これで三羽狩れた!今回はなかなか楽しめた!
私は近くにあった枝を切り落とし、首を切断したガルスガルスを足からつるし上げる。無論頭部は埋葬だ。血抜きしながらの移動だ。これで魔物や肉食獣が寄ってくれば・・・狩れる!移動しながら気配を探るが、とくにそうした危険なものはいないな・・・簡易ハウスに到着。前に仕留めた四羽も血抜きはできていた。一旦村へ戻るか。私は背負子に血抜きの終わったガルスガルスを投げ込むと道なき森の中を下っていく・・・
一方その頃。村から出て道なりに下っていき、大きなカーブのところから崖下へと降りて行った村人A、B・・・もっと丁寧に説明?そんじゃゲートキーパー(門番)1号2号・・・ヴァッへ君とヴェヒター君。ボルちゃんが七羽狩って村に戻るころ、いまだに崖下につかないでした・・・
「おい、ヴァッへよぅ!崖降りるのに、こんなに時間かけていいのかよう?」
「だってしょうがないじゃないか!落ちたら終わりだぜよ!あ―、川まであと少しなんだから・・・あー、やっと着いた!ちょっと休憩しようぜ!」
「着いた!じゃねぇよぅ!ここから川を遡ってそれからやっと黒色土の森にはいれるんだから!まだまだ目的地まで半分しかきてないんだよう!」
「とか言いながら水を掬って飲んでるんじゃねーよ!」
「水は大事なんだよぅ!」
ガルスガルスを狩るどころか、目的地にもついてない二人であった・・・
私は崖向うの森から崖を跳んで村のある方の崖へ到着した。あとは足場の良い平地をかけていくだけだ。前に来たときは夜だったが、昼だと用心の必要もない。あっという間に村の門まで来た。門番は・・・村長がやってるな!
「村長殿!私です、ボルドウィンです。開門を願いたい!」
村長、にやりと笑う。
「ありゃま、えらくお早いお帰りだな・・・無事狩れたようだな」
「ああ、あまり狩り過ぎるのもよくないとは思ったが・・・籠がいっぱいになったので一度置きに来たのだ。あの二人は・・・まだまだだろうな!」
「ガルスガルスはすぐ増えるから、まだまだ狩ってきてもいいんだぞ!」
「まあそのつもりだが、うちの従魔から卵の依頼があってな。そう言えば、村長、スネークからこいつを飼育したらどうだと言われてなかったか?」
「あんたの従魔、変わってるよなぁ!ガルスガルスをヤギみたいに飼おうなんて思い浮かばなかったよ。狩るのさえ大変なのに、生かしてとらえるのは至難の業ではないか?」
「なんか卵の状態から孵化させればいいといってなかったか?私もよくはわからないが」
村長と話をしていると、もう一人・・・あれは昨日の人物・・・ポルティエといったな、がやって来た。
「おー、剣士さん。もうそんなに狩って来たのか!やっぱりすごいなアンタ!」
「村長殿、この村には何人住んでるんだ?」
「そうだな…30世帯150人・・・といったところか。人数が気になるのか?」
「いや、狩りのあとは肉を料理するといってたのでな・・・あの二人が何羽狩るかにもよるが、全然足りないなと思ったのだ」
「そんなの剣士さんが心配するこっちゃないよな!」
「いや、仲間に肉好きのやつがいてな、そいつがいると多分足りない…と思ってマウンテンディアを狩ったのだ」
二人の年寄りはあんぐり口を開けている・・・
「ま、マウンテンディアを狩ったのか・・・」
「ああ、水の出る岩場で見つけたので、水を飲もうとしたところを弓で仕留めた」
「・・・で、狩った物はどちらに?」
「スネークの知り合いのゴブリンがいてな、そいつに血抜きしている間見張っててもらってる」
「あんたの従魔、ゴブリンと知り合いなのか?」
「一昨日の夜に知り合ったらしい・・・なんでも崖向うの森に集団で住んでいるそうだ・・・ああ、人間は襲わないようにとスネークが教えたそうだ。スネークの言うことはよく聞いてくれるぞ。だから村長殿もここらのゴブリンたちには手を出さないように言い聞かせてくれ」
「従魔も従魔ならあんたもあんただな!恐れ入るわい!それじゃもう交代の時間じゃし、休憩も兼ねてうちに寄っていくか。ポルティエ、後は頼んだ」
「まかされた!んでも、なにもすることがねーけどな!」
「鍛錬でもしとれ!」
村長、ポルティエには容赦がないな。気安い軽口をたたき合うのも長年パーティを組んでいた仲間だからだな。・・・やはりスネークは変だ。私と知り合っていくばくも無いのに、相当気安い。奴の性格なのかな?
本日も一話のみの投稿です。
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