涙よ、止まれ
「すまない村長殿、少し待ってくれないか?」
ぎゃんぎゃん泣いている幼女をおろおろしながら見ている我とボルちゃん。すると、相撲エルフが起きてきて幼女エルフを抱き込んだ。
泣かないで~♪
「ハンナちゃ~ん、安心して~。そしてたくさん泣いていいんだよ~」
泣いていいよ~♪
相撲取りが幼女をあやしてます。意外なところに相撲取りの役割があったか。泣き声は止まり、えぐえぐうずいていた幼女は落ち着いたようだ。
「隊長が~出かけられた後に~、ハンナちゃんがよく泣かれることがあって~、あたしが慰めていたんですよ~」
「よくやったバウアー新兵!ヴィンデルバンド衛生兵も落ち着いたか?二人は少し下がっていてくれ」
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「お待たせした、村長殿。昼前に託された貯水池の仕事だが完成したぞ」
「あ、ああ。それにしても満水になっているが・・・」
「池の深さは元の3倍ほどになっている。それとどうやって使うかわからないから、それ、あそこに階段を作っておいた。水量が少なくてもあそこから汲んでいけばよいだろう。水はサービスです。どうやったかは・・・エルフの秘術なので詮索しないでもらいたい」
「ああ、礼を言うぞ、エルフの剣士さん。まさかここまでやってくれるとは・・・」
「これでよいということだな。それでは、次は果実を取ってくるという話だったか・・・今日はあまり時間がなさそうなので、崖むこうの森に入るのは明日でいいか?」
「ああ、そのことなんじゃが・・・」
暗い顔をしている村長。何かあったのかな?
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「門番が森へ行った?」
「あー、昼間に別のやつと交代した後、昼食をとってからポルティエのやつ、女房に森へ行くと言って出ていったらしい。そこの女房がうちのやつに相談しにきおった。あんた、桃をやつにやったんだってな。それを女房に食わせてやりたいと言って出ていったそうだ」
“そうか、いい奴だったんだな。門番。しかし、ボルちゃんよ、基本人族にあの崖渡れるのか?橋なんかがあるの?”
「崖むこうの森に行くには、一度崖下に降りなきゃいかん。すまないがちょっと様子を見に行ってくれんか?」
“ボルちゃん、どうせ3日はここにいるんだし、恩を売っといたら?ついでに崖下の桃をもぎに行こうぜ!もう桃ないし!あ、そうだ!あと、柿と栗も崖下に植えとけば、エルフの秘術とか言って。待遇良くなるかも知らんぞ!”
“やるなあ、スネーク!よし、行こう!”
「了解した、村長殿。二人は村長のうちで待っていてくれ。あ、私の背負子の中身を空にするから、二人はそれを持っておいてくれ!」
ボルちゃん、柿と栗をひとつづつ腰のポーチに入れた後、背負子をひっくり返した。なんか思ったよりたくさん入っているよ?
「それじゃ、道案内をする。行くのは剣士さん・・・と従魔のヘビか?」
「スネークという。言葉がわかるので心配いらない」
「それじゃ、お嬢さんたち二人は我が家で待っていてくれ。家のものには連絡しておく、それでは行くか!」
「隊長、スネークちゃん、いってらっしゃい!」
ハンナちゃん泣き止んでよかった。
「たいちょ~、スネークさーん、肉狩ってきて~!」
相撲エルフは相変わらずだった。
二人の敬礼を受け、我らは出発する・・・
村長、じじいのわりに健脚だ!あっという間に丘を越え、畑を抜け、集落についたと思ったら、自宅の中に入った・・・かと思ったらすぐ出てきた。じじいも背負子を背負っているぞ!採る気満々やな!爺さんも森に入る気か?そういやじじいの名前はなんていうんだ?
「村長殿の名前をスネークが聞いているが?」
走りながらボルちゃんが伝えてくれる。
「わしか?わしはランドルド、アーベル・ランドルドじゃよ、蛇の名前はスネークというのか?」
“そうじゃよ、我はスネークじゃよ”
「何か言っとる気がするが?」
「大したことは言っていない、気にするな」
「それにしても、スネークよ。お前珍しい移動の仕方じゃな!ヘビが跳びはねて移動するとか、聞いたことも見たこともないぞ!」
珍しいか、そうか、珍しいか!ガハハハハ!
調子に乗って大蛇―――――――――――――――――ンプ!
「おお、すごいヘビを従魔にしとるの!わし若いころ冒険者をしておったが、こんなヘビは初めてだ!なんていう種類のヘビなのか、剣士さんは知っとるか?」
“我はツチノコ”
「ツチノコ、という種類らしい・・・」
「うーん、やはり初めて聞く種名じゃな!」
じじいが冒険者だったとは・・・つーか、異世界定番の冒険者はやはりいたな。まだ現役を見てないが。




