ちょっと一服
僕ちゃんは副長という役割らしい。それに、三席とかいってた。ボルちゃんが確か筆頭剣士だったよな。主席とかじゃないんだよな? えらい順番の名前付けが間違ってると我、思うのよ。次席は来とらんのかしら? あ、近衛兵の中から強いやつの1番目と3番目を討伐隊に入れたんだな。次席はたぶん、引き続き王宮とやらの警備をやってるに違いない。確か半分の兵数といってたが、半分もいなくなって大丈夫なのだろうか?
”ま、休みがなくなるだけで、警備それ自体は問題ないだろうな…… もともと廃止されようとしていた組織だからな”
”近衛兵がいなくなったら、誰が王城とやらの警備をするのだ? ”
”組織は廃止されるが、人はいなくならない。確か軍務卿管轄から内務卿管轄に移行するとかどうとか。うちの兄から聞いた話だ”
”ボルちゃんにはお兄さんがいんのか? ”
”兄が二人、姉が一人だな…… ふふ、お前をブラッツ兄さんに合わせてみたくなったな”
”もう一人の方はいいんかい! ”
”バナン兄上は年がだいぶ離れているからな”
あ、これはフラグになりそうだな。さっさと折っておこう!
”王里にはいかんからな! ”
”…… いや、無理に連れて行こうとは思っていないが? ”
”ならばよし! …… で、僕ちゃんの査定は終わったけど、次はどうするんだ?”
「次は、席次から言って兵長1からだな。ヘルムート・ナル! 」
「今の見ちゃったら、やらないわけにはいかんな! 」
おおっ!気が引けたかと思いきやその逆ですな。この子はバカなのかな?
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兵長その1はあっさり倒され、兵長その2(自慢の槍を置いてきたあほの子)も開始と同時に試合終了~。審判してた兵長その3は査定放棄。ここで、ハンナちゃんとエマさんが馬に乗って華麗に登場!
「隊長~、皆さ~ん、大丈夫ですか~? 」
「お腹が減ってたら動けませんもんね~~~!」
シュタッと汗血馬から降りた二人。もう完全に乗りこなしてますな~。一方、見慣れぬでかい馬が来たからなのか、及び腰の野郎どもです。
「ヴィンデルバンド衛生兵、バウアー新兵。ご苦労様。何を持ってきてくれたのかな? 」
「時間が時間ですし、もう少ししたら夕食になりますので、軽食ということで、”サンドウィッチ”をご用意しました…… あれ? 人数が少なくないですか? 」
「あたしと同期の3人がいませんね~? どうしちゃったんでしょ~~?」
「ま、それは後で問いただすとして、まずは食事だ。そこのスネークが作ったテーブルに出してくれ。あと、飲み物も頼む」
「飲み物はお茶でよかったでしょうか? 一応冷たいものも用意しておきましたが……」
ここで、流れを読まず耳の短いエルフさんが発言します。
「あー、僕にもう一杯冷たいものを! 」
「えー、ポンポンヌ上等兵さんでしたね。他に冷たいものご希望の方は? 」
あらら、皆さん手をあげておりますな。真夏の日陰のないところで、査定か何だかしらないものをやるのって変だよな。
「それと、”サンドウィッチ”ってなに? 僕、初めて聞くんだけど? 」
先ほどは流したが、こいつも僕っ子かよ! あ、男で僕っ子はいいのか。いや、男だよね? リーちゃんみたいな僕っ子じゃないよね?
”ポンポンヌさんは男性ですよ?”
脳内でハンナちゃんが声をかける…… そうか!ポンポンヌってどこかで聞いた名前だと思ったら、メルゼブルグの冒険者ギルド(フランクフォートでもあったかな?)で掲示板に依頼主の名前ででてたな? ポンポンヌって、よくある名前なのかな?
”そんなことはないと思いますが…… ”
我の脳内に語りかけつつ、長テーブルの上にサンドウィッチとクリスタルカップ、それにティーポットをポーチから取り出すと、てきぱき並べだした。
「なんだ?この食いもんは? バイツェンブロートに、なんか挟んでるのか? 」
サンドウィッチに興味を持ったのか?槍を持ってこなかった人が怪訝そうにそれを見つめている。食いたくなかったら食わなくってもええんやで?
「あ~、そのサンドウィッチはタウルス・サンドですね~! おいしいですよ~~! 」
「おい、女新兵! お前これ食ったことあるのかよ? 」
「それはもう~! オニクはあたしとスネークさんで作りましたから~~」
「ヴィンデルバンド君 ……フォークがないようだが…… 」
「シュトルツ副長、これは手でつまんで食べるのです。あ、手を洗った方がよいですね」
ハンナちゃんは水魔法を使ってみんなの手を洗っていった。マメやな! しかし、濡れた手をズボンやら服の袖で拭いたりしたら台無しやな!
「副長、クリンゲさん!これめっちゃうまいですよ! 」
ポンちゃんがモガモガ食ってますな。そしてグラスの飲み物を飲んだ瞬間
「ナニコレ! 毒なの! 口がピリッとしたんだけど? ねぇ衛生兵ちゃん、どういうことなの? 」
「それは炭酸水という飲み物です。毒ではありませんから安心してお飲みください。いっぺんに飲みますとガスが上がってきてしまいますので、ゆっくり飲んでくださいね」
「ヴァイツェンブロートにニクと野菜を挟んで食べやすく三角形に切ったのですか…… これは衛生兵が考えたの? 」
「じゃーーーん! これはそちらにあらせられます、レシピ図書館のスネークちゃんが考案したものですーー! はい拍手ーーーー! 」
「ほう… 魔物のくせに料理を考えるとは…… 」
耳の短いエルフ、ポンポンヌだっけ、ぽんちゃんでいいか。何やら目つきが怪しい…
「この料理、料理協会で登録すれば、一財産築けると思うけど……」
「残念でしたー! それはもう基本人族さんに伝授済みです!」
「そんな勿体ない……」
そんな登録するところがあるんか! まあヘビが行っても登録してくれんだろうけど。
「それより、もっとないかな? 食べ足りないよ! 」
ぽんちゃんの隣の6号くんがもう食べ終えていた。
「あと数時間もすれば夕食ですので、軽く食べられるものを準備したのですが……」
「ペーター・ラビー上等兵。食べても動けるなら、あと二切れ追加してもいいが? 」
6号くんはウサギか! 全然それっぽくないが…… 今度ニンジン食べさせてみよう。ラビー君はうんうん頷いてたので、ハンナちゃんはあと二切れお皿に追加した。
「これはさっきのとは具材が違うね…… ハオスエンテのタマゴか… こっちは! また新しい具! なにこれ? スーススクローファの肉の周りに何かついてる!」
「ラビー先輩~、お目が高いですね~! それは”トンカツ”という具材ですよ~。一品料理を具材にした”カツサンド”です~!! おいしいでしょ~?」
なぜか自慢げに胸を張るエマさん。
「エマさんが作ったカツサンドですからね。それは自慢もしたくなります! 」
なるほど、弟子が作ったちゃんこというわけですな。別にちゃんこ鍋だけがチャンコというわけではないんやで! 相撲取りが作った料理がすなわちちゃんこなんや! 我にも一口ちょうだいな。
「ほうほう、なるほど! その情報は初めてですね。メモメモ…… お待たせしました。こちらがちゃんこです」
「いまだに相撲取り扱いされてるーーーーー! 」
これを聞いたボルちゃんがなぜかニヤリと笑っていた。
本日はこれにて。
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