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我はツチノコ  作者: あいうわをん
第6章 夏竹や つわものどもが 夢のあと
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軽~くもんでおあげなさい!



 水を飲ませ、一息ついた部下たち… 部下なんか? ホントに? 部下のくせに生意気だぞ! 


”特に批判は封じていないからな。自由に口をきいてもらった方が相手の本音がわかるというものだ。なにせ私が彼らを率いるのは今回が初めてだからな”

”うーーん、初めての部下なのか? ”

”今までは席次・階級は決まっていたが、とくに命令を出したり受けたりする関係ではなかったからな”

”ボルちゃんの上司は誰よ? ”

”近衛軍は、軍と名はついているが、実際のところは宮殿の治安維持が目的だからな。上司は近衛軍長で、その人が侍従も務める”

”なんでそんな組織が、魔物の討伐やってんのさ? ”

”さぁ? 変な話と言えば変な話だな”

エルフの組織の話はわけがわからんな… 





「さて諸君、休憩は終わったかな? もう少ししたら衛生兵が軽食を持ってきてくれるから、それまでは査定の時間だ。上等兵からにするか? 」

「ボルドウィン一人で、僕らを相手にするのかい? 」

「全員でかかってきてもいいぞ? 」

「それじゃ査定するのは難しいだろう。僕から行く」


僕ちゃんが南側砦の比較的平らな場所にいくと、そこで剣を抜いた。これもヒカリ娘達が使っていた剣とはちがって華美な装飾が施されております。刀身は… あれもミスリルかしらん。ミスリルは魔力の伝達をよくするって話だったっけ。


「ルールは剣技のみ? 魔法込み? 」

「どちらを使ってもいいぞ。相手が参ったと認めるか、戦闘不能になったら決着。いつものルールだ」


ボルちゃんは背負ったリュックの中から…… 木剣をとりだした。真剣に対して木剣ですか。大丈夫かな?


「へぇ……」


目を細める僕ちゃん…… 馬鹿にされたと思った……のでしょうかねぇ?


「一応、審判もつけておくか。シュタイナー兵長。任せるぞ」

「…… 私なんかにゃ、荷が重いのですがね… それでは両者離れて。私がカップを上に投げるから、落ちたときが開始。いいですか!」


小柄な兵長さんが竹のコップを真上へ放り投げた! そんなに高く投げなくっても! 我、あんぐり口を開けて落ちるのを見守… ちゃだめ! 対決する相手を見てなきゃ! 両者は互いの動向を見ていた。カランコロッ!のカの音が聞こえたと同時に、ボルちゃん動く! 僕ちゃん、目を見開いて反応しようとするが、それより早くボルちゃんは僕ちゃんの背後に回り、首元に腕をまわし木剣を向ける!


「…… 参った」


剣をゆっくりと鞘に納め、両手を上げる僕ちゃん。ボルちゃんそれを見て一歩引いてから木剣を下に向ける。


「…… 今のは何だい? 風魔法… という感じではなかったけど? 」

「単に速く走っただけだが? 」

「…… 2ヶ月の間、なにがあった? 」

「別に何も? ただひたすら鍛練していただけだ」


確かに鍛練はしてたな! つうか、討伐さえ鍛練のようなものだったし!


「さて、このままだとそちらも消化不良だろうし、何より査定ができない。もう一度やるぞ。今度は今の技は使わない」

「…… そうかい。なら、今度は油断せずに全力を出す」


僕ちゃん、声のトーンが低くなりましたな。静かに怒っているようです。さっきの審判した熟練兵さんが、再び竹のコップを拾います。10mほど離れたボルちゃんと僕ちゃん。周りの野郎どもも、先ほどまでざわめいていたのを止め、息をのんで見守ってますよ。わかる、我も同じ気分なり。


 再び、投げられる竹のコップ。青空に緑が映えますな~…… などと言っとる場合か! 刮目せよ! あれ? ボルちゃんいつの間にか、木剣からウィップスに武器を変えてるぞ? 一方、竹のコップが落ちる前に僕ちゃんの口元が動いている。魔法の詠唱か? カランコ!


「焼き尽くせ! 火球ファイアーーーーーーボォール!!!!! 」


お! なんかバレーボールみたいな火の玉が飛んだぞ! ボルちゃん、よけもせず、ウィップスを細かく振ります。


「シッシッシッシッシッシッ! 」


ボルちゃんへ向かった火の玉は、ウィップスから出た風刃で切り裂かれ、細切れにされ、八方四散しました。おっと、そんなことしてる間にまたまた火の玉が飛んできてますよ?


「ほぅ…… 2ヶ月間を無為に過ごしていたわけではなさそうだが…… 」


ボルちゃんに向かった火の玉がもう少しで着弾しそうになったところで、ボルちゃんから蹴りを一発もらいます! 


「なにっ! 弾かれただとっ?!」


ああ、風魔法の空気壁を足から出したのね。


「一発だけなら避けられるが、これならどうだっ! 」


僕ちゃん、詠唱を始めますが…… 次の火の玉できるの遅いな… と思ったら10球ほど同時に作っているようです……


”今、やっちゃえば、すぐ終わるね? ”

”まぁ、そうなんだが… それをやると面白くないではないか! ”

”ああ、そうね。あんた、そういう人だもんね!”


火球が、ひぃふうみー…… 9球完成しました。


「へぇ、待っててくれるとは余裕だね…… 後悔するといい! 火炎龍尾槌・九連撃!」


なんか恥ずかしい技の名前が聞こえてきた…… なんだって?かえんりゅうの? びついってなんじゃ?


”尻尾で叩くという意味だろうな”

「遅い! 待たせ過ぎだ!」


そんなこと言ってまた火の玉を蹴りましたが、今度は玉の進路が分かれましたな! ボルちゃん囲まれたぞ! 


「ふむ、魔力操作がうまくなったようだな…… それなら! 旋風独楽ヴィルベルクライゼル!」


なんとボルちゃん!爪先立って回転しました! ここはスケートリンクじゃありませんぞ! 回転しながらもう一方の足で空気壁エア・ウォールを出してるみたい! ウォールというか、見える! 我には見えるぞ! もっと小さいタイルみたいな大きさだな!あれで火の玉を散らしております。ボルちゃんが回転を止めたとき、火の玉は全部消え失せてた。


「さて、まだ何かあるかな? 」


僕ちゃん、口をへの字にしています。


「あとは剣技だけだね…… 」

「2ヶ月前と同じなら、やらない方がいいぞ? 」


外野から檄が飛びます!


「副長、しっかりしろ!」

「いつも息巻いてたじゃねーか! 今度こそ負けんとかいって、その程度か!」

「うるさい! ボルドウィンの方が2ヶ月で成長したんだよ! 剣技だけでいざ勝負! 」

「それでは私も剣でお相手しよう! 」


蒼天ではなく、いつも使っていた家宝?だった剣をポーチから取り出した。そんなところに入れていたのか。剣の勝負も数合切り結んだが、あっけなくボルちゃんの勝ちが決まった。僕ちゃんの魔力使いすぎ問題だった。


「シュトルツはもっと魔力総量を上げる必要があるな。ま、以前に比べて魔力操作がうまくなったことはわかった。2ヶ月の間、ちゃんと訓練してきたようだな」

「…… 参ったね。ボルドウィン…… 君が強くなり過ぎでしょ…… 」


なんか息も絶え絶えだな。

本日はこれにて。

およみいただきありがとうございます。

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