釣りキチ・スネ平!
ツチノコ、せっかく深化したのに、ほぼ何も変わりません><
グラニーラムゼースミスの里では、援軍隊長の連れてきた従魔が行方不明になったと騒ぎになっていたが、当の契約者たるボルドウィンは、
「なに、どうせ魔法の使い過ぎだ。その辺で石のようになって眠っているよ」
と言っていた。事実、グラニーラムゼースミスの里の周辺の河川が、異様なほど深く、谷のようになっており、川を渡るために石橋がいくつももうけられていた。これはスネークの土魔法だろう、そう判断したボルドウィンは、とりあえず従魔のことは放っておくことにした。本来、討伐証明書にサインをしてもらった時点でこの援軍の役目は終わりだったはずだが、従魔が世界樹の住処づくりをする、と宣言したので、それをないがしろにするわけにもいかず、この地に留まることになったのだ。従魔が姿を消して3日経つ…… 前回の石化睡眠(部下のヴィンデルバンドがそう命名した)の期間が3日間だったので、今回もそれくらいだろうと踏んでいたのだが、事態は何も動かない。討伐以外にはあまり関心のないボルドウィンは、グラニーラムゼースミスの里の守備隊長レオン・ハートとともに守備隊と自身が連れてきたメンバーを鍛えていた。
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いつ~までも どこ~までも 走る走るーよ エルフの稽古~♪
「よし、10分間休憩する! 息を整えておくように! 水を飲みたいものは今のうちに飲んでおけ! 」
「ハンナちゃーーーーん、大丈夫ですかーーー? 」
「ぜはぁ……ぜはぁ…… きっついです……… お腹いたいし………… 」
「あー、子供のころ、急に走ったりすると、お腹痛くなりますもんねー? 」
「ヴィンちゃん、ほんとに大丈夫? まだ体ができてないんだから、休ませてもらったら? 」
「だいたい、衛生ちゃんは体鍛える必要、あんのか? 職能上、魔力を鍛える方が有用なんじゃねー? 」
「ヴィンデルバンドが率先してやっていること。水を差すのはよくない」
「ボ…ボ……ボーデンさんは… 魔術士よりなのに………… ちゃんと鍛練……… してますよね……………」
「無理にしゃべらなくっていい。大きく深呼吸。はい、吸ってーーー、吐いてーーーー! 」
「すーーーーーーーーーー、はーーーーーーーーーーーーーーー」
同じく休憩していたおじさん戦士が、息を整えているヴィンデルバンドを片目で見ながら、顔は近くに倒れていた青年に向けた。
「ほらほら坊や、こんなちっちゃな子だって付いて来てるんだぜ? お前さんもうすぐ成人なのに、全然だめだめだなぁ! 」
「………… 僕は…… 文官志望だから…………」
「文官だって体力は必要だって、ねえさん隊長も言ってただろ? そら立てって!」
「もう…… 寝かせてください………… おやすみ………… ん? 地面が動いているよ……」
「何言ってやがる! 寝ぼけてんのかって……うおっと! 」
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ぱちくり! 起きました! 我の目覚め―! 現状確認! んー、土に埋 もれてますな! 穴掘ってそこに埋まって休むことにしたっけね。それじゃあ起き上がりましょう! ズズ… ん? 土が持ち上がらない? 我、全身を丸まってる状態から、想いっきり延ばしてみる! ずずず! ばらばらばらー、あー頭に石かなんかが乗ってるようね! もっともっと体をバネにして、びょーーーん! 空が見えます! 我、穴から脱出成功! 頭の石をどけて… ん?なにかなこれっはっと!!! でたーーーー! 生首だ! なぜこんなところに人の首が落ちている? 我、急いで穴から這い出ると、人が倒れていたのがわかった。我、どうやら人が倒れていたところの頭の部分に穴を掘っていたらしい…… なぜこんなところに死体が? と思ったら、腕を地面に押し立てて上体を起こしてきた! ははーん、これがいわゆるアンデッド、というやつか!アンデッドなら、くらえ!
我の光魔法Lv.最大で!
「うううう…… あれ? 疲れが取れた…・… あ、スネークさんじゃないですか? 」
「あ! スネークちゃん! こんなところにいたのですか! 探していたのです! 心配したのです! 」
ハンナちゃんが駆け寄ってきましたよ。そして我をラグビーボールのように捕まえました。そして持ち上げます。
「あれ? スネークちゃん、なんだか重く、太くなりましたね? 」
え? そうかな? 起きたばっかりだからよくわからない…… 取り合えず、離してくれる? 寝覚めのツチノコ体操させてくれ。
ツチノコ体操が終わり、我、ハンナちゃんに持ち上げられてボルちゃんのところに連行される。犯罪者か!
「おっ! お目覚めか。とりあえず気にしていることをいっておくぞ。お前が気絶してから3日たった。お前がグラニーラムゼースミス様の住まいづくりをすると言ってから急にいなくなったので、待機状態だったんだ。それで、この辺りの川が谷化してるのは、スネークの魔法のせいなんだろう? 」
あー、そうですなぁ。この辺の川は大きな魚がたくさん見えたので、もっと深くすれば、それだけ魚が多く大きく育つんじゃないかと思ってな。
「それにしてもやりすぎだ。川辺がないから漁をすることもできんと里の者が嘆いていたぞ? 」
いままではどうやってたのだ?
「川辺から投網をしていたようだ 」
なるほどね…… 川辺が必要でしたか。それは考えてませんでしたな。もっと浅いところを作っておけばよかったか。今はどうなってるかな? あの辺に欄干がありますな。あそこにびょーーー、おっと、ジャンプしすぎた! このままでは谷底にダイブしてしまう! 風魔法Lv.4空気壁!っていつもより硬めのウォールや!我、バインと弾かれる! 弾かれたけど、おかげで地面に着地! びょーーーーん! あらら? 跳ねたつもりなかったのに跳ねちゃった! はあいいけど。川の水は谷底を八分ぐらい埋めたようですな。
「スネーク! なにをやってる? 」
いや、体のコントロールがいまいち利かなくって。それより、ボルちゃん達はこんなところで何してたんだ?
「我らはトレーニングだな。兵士たるもの、治にいて乱を忘れず、ということだ」
それにしては…… 辛そうな人が多い感じが…… あ、もしかしてきつめのトレーニング?
「そんなことはない。軽めだぞ? だいたい半年ほど籠ってたので体力が衰えてるから鍛え直そう、そういってたしな」
ボルちゃんと話をしてたら、大きな男の人が! ハート様や!
「スネーク殿! ここに潜んでおられたのか! ずいぶん探しましたぞ! 」
あ~そりゃどうもご迷惑おかけしました。
「この辺りもだいぶ地形が変わりましたからな。どこに潜んでおられるかと思ったら、こんなところに穴を掘って潜んでらしたか! それは探してもわからないはずだ!」
探してたのか。何用で?
「いや、用はなくても探すだろう? 援軍の隊長の従魔がいなくなったとあれば、それは探すに決まってる! 」
「私はそのうち出てくるから、捜索隊は出さなくてもいいと言ったんだが」
まあそうですねーク。そんで、ここでなにしてるんだ?
「ああ、ちょうどいい。皆に例の光魔法を使ってくれないか(小声)? 」
まあええけど、小声で話す必要があるんかいな?
光魔法Lv.1癒しの光!
「ム! 休んだせいか急に元気になった! 」
「ほんとだな! でもこれで休憩終わりか」
「今度は剣の稽古だからな。怪我しないようにしないと……」
「怪我しても例の蛇人形をつかってくれるんだろ? 安心して怪我できる! 」
「バカ、痛いもんは痛いっつーの! 」
とがやがやと聞こえる一方で
「いまのは…… スネークのやつの魔法だよな…… 」
「そうみたいですね…… こんなところで使っていいのかしら? 秘密にしてたんじゃなかったの? 」
「秘密は緑魔法だけじゃなかったっけ? 結構光魔法他の人の前でも使ってたと思う…… 」
小声でひそひそ話す人たちがいますな。
「あー! 見てくださーい! オサカナいますよー! 」
と騒いでいる人は…… 魚より肉が好きだったんじゃなかったんかい?
「スネークさーん! さっき見たのはナーギーでしたよー! あれ、捕まえてきていいですかー! 」
ちょっとまてや! 捕まえたはいいけど、どこから運ぶんじゃ? 這い上がるところないだろ! 捕まえるのはなしじゃ! その代わりいいもん作ってやる! 我、おえっとマギ・バンブーの素材を取り出します。枝部分を風魔法Lv.11鎌鼬・極小でカットカットカット! 素材部分を鎌鼬の唐竹割り! 切り口を滑らかにするようにカットカットカット! 魔法伝導がよくなるように
あ、エマさん竹を持っててくれる?
”銀魔法Lv,1メッキ”
端から端まで吹き付けていきます。エマさんが持ってた部分も持ち手を変えてもらってプシューーーーー! 後は竹の細い方の先端に穴を開けましょう……あ、ハンナちゃんやってくれる?
「何を作ろうとしているかはわかりませんが、穴を開ければいいのですね? 」
針みたいなのをポーチから取り出して、ガシガシと開けていきます。あの針って蜂の針みたいだな。穴を作ってる間に、我、銀魔法Lv.2銀糸で糸を作成します…… あの竹竿に釣り合う糸だと、このくらいの細さかな? 残っているのは釣り針。そうです、我は釣り竿を作っていたのです! 釣り竿には釣り針!我が念のために取っておいた、溶けたガントレットを使いまして
”金魔法Lv.4鍛錬成!”
“ン デデデデーン”
“なにからなにを鍛練成されますか?”
溶けたガントレットから、釣り針を10本お願いします!
“テ・テ・テ・テーン!
釣り竿にあったほどよい釣り針完成です。あとはハンナちゃんに銀糸を竿と釣り針に結んでもらって、はい完成! これで我は異世界で釣りをするんや! 釣りキチスネ平、爆誕!
「でも、スネークちゃん、いつもの千手観音はカウントダウンが進むんじゃなかったんですか? 」
ガガーン! そうやった…… 我には手がないのだった…… じっと手を見る…… 手はないのだが。
「おーーー、なんか面白そうなもんあるじゃねーか! これで釣りをするのか? 」
この世界もちゃんと釣り文化はあるようで、よかったよかった!
「釣りなんかより、私のナインテールで一網打尽にした方が早いですわよ?」
「バカ野郎! アンゲルンはフィッシュと格闘するシュポルトなんだぞ? フィッシュをいかにだましてアンゲルハーケンを食いつかせ、アンゲルルーテを巧みに操り弱らせる。最後は釣りあげて、フィーー~~シュ! 獲物を捕らえた瞬間が快感なんだぜ! 」
なにやら熱く語る人が一人…… ヒーちゃんは釣り人なのかな? あんまり我、釣りはやったことなかったけどハイキング途中で渓流に行ったらよく釣りをする人を見かけていたので、やってみたいな~とは思っていたのだ!
「なあスネークよ! 釣り竿、もっとつくってくれない? せっかくだからここで魚を釣り上げて、晩飯の足しにしようぜ! 」
「あんた、リーズィッヒ・コーイの時は触るのあんなに嫌がってたくせに~!」
「だって、普通のフィッシュはあんなにでかくないもん! 」
「海に行けば、あれくらいのフィッシュはうようよいるそうですよ?」
「じゃあオレ海でアンゲルンはやんねー!」
「そういうことでしたら、こちらも訓練は中止して、アンゲルンをやりますか。どうでしょう、ボルドウィン殿? 」
ボルちゃん、両肘を体につけ、両手の平を上に向け、首をすぼめた。やれやれ、のポーズなり~! そんじゃ今ある竿は使ってくれ。餌はどうするんだ? 燻製肉でも使うのか?
「そんな勿体ない~! あたしが虫、とってきまーす! 」
あ、ブロートでもええんじゃね? 水に浸けてふかして練ればいけそうな気がする~。
「そんな勿体ない! エマさんの虫取りを待ちましょう!」
待ってる間、我釣り竿を10000本、予備の釣り針20000個、釣り糸100mを10万巻作らされて納品した。だけど、結構魚大きかったよな…… 壊れたりしないかな? 仕方ない、
”青魔法Lv.4祝福・弱”
“プップ~”
“どのような祝福を施しますか?”
え~と、しなり具合って強度とは違うよな…… 靭性と言ったか……曲げ靭性といったか。
“竹竿の曲げ靭性50倍、釣り糸の強度50倍、釣り針強度50倍”
“パヤヤヤ~ン”
【WARNING!WARNING!WARNING!】
【水魔法消滅まであと12!】
【WARNING!WARNING!WARNING!】
【水魔法消滅まであと12!】
【WARNING!WARNING!WARNING!】
【水魔法消滅まであと12!】
伝説の釣り竿の完成であった…… エマさんが大量に採ってきたコオロギみたいなやつで釣りをしたところ、我の大きさぐらいのコーイやマーズー、フーナが1時間ぐらいで50匹ほど確保されました。一番連れたのはヒーちゃん、次にボルちゃん、エマさんと続き、あとは里の人が何匹か、カーちゃんはもちろん不参加。釣れた魚はハンナちゃんが持ってきた収納箱(氷入り)のなかに納められ、その日のご飯に使われる予定になった。
本日はこれにて。
お読みいただきありがとうございます。
明日はたぶん不登校・・・不投稿death。




