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我はツチノコ  作者: あいうわをん
第5章 ツチノコの証明 神樹さま、我のあの背負子、どうしたんでしょうね・・・ええ、夏にグラニーラムゼースミスの谷底で落とした、あの背負子ですよ
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情報のすり合わせ



 晩飯の準備は大変だった。と言うか、準備と晩飯が一緒になっていたのだ。料理ができあがるとすぐに配膳されてしまい、あっという間になくなっていく。おまけにあれを作れ、これもっと頂戴、とリクエストの多いこと! ま、我が作るのは(と言うより作るのはハンナちゃんだが)ボルちゃん小隊のぶんだけです。あとは里の調理部のメンバーに作り方の指示と素材提供をして、ボルちゃん小隊メンバーは早々に南側広場から移動させてきた建物に移動した。エマさんはハオスエンテの唐揚げを頬張っていたが、隊長命には逆らえず、泣く泣くテーブルをあとにした。


 2階の会議室に入って来たのは、ボルちゃん小隊の面々と、グラニーラムゼースミスの里の守備隊長ハート様と副長の人、開墾部隊のクラさんと副長の人、通信部隊のレイハーさんとその双子の弟妹ジャン君とアンナちゃん。あとはおばあさん達がいますな。


「皆様、食事を早々に切り上げさせてしまい申し訳ない。今日の成果の報告をしてもらい情報の共有をしておきたい.それで明日どうするかを考えましょう.まずは私からということでよろしいか? 」


皆さん特に意見はないようですな。あ、ちなみに額金さんはボルちゃんとハート様とクラさん、イルゼ婆さんがつけてますね。


「それでは、私は守備隊の一部と南側砦から東側砦を通じて北側砦へと向かいました。目的はマギ・バンブーの本体らしきモノがあるかどうかの調査です。東側砦に向かう途中、巨大なリーズィッヒ・コーイと遭遇。おそらくこちらへ向かう途中、スネークが遭遇した個体と思われます。スネークが絵を描いておりますので、それをご覧ください」


ハンナちゃんが我の描いたリーズィッヒ・コーイの絵の色紙を取り出して皆に見せる。


「こ、これほどのモノが里の近くにいたとは…… 」

「リーズィッヒ・コーイは道中、もっと小型のモノがたくさんいました。皆さんが先ほど食べていた………… 何という名前だったか、スネーク? 」


竜田揚げのことだな。リーズィッヒ・コーイの料理はそれしか作らせてないからな。ハオスエンテの唐揚げだけでは足りず、似たような調理法でコーイをつかったのだ。この辺の川にはたくさんいるのかな?


「調理前のモノを見たが、あのような大きなものは里の外側を流れる大きなマゼンダ・フロスでないと見かけないな」


そうですか、近くにいることはいるんだな。


「ボルドウィン殿、ちょっといいか? 」

「何でしょうか、マーゲン殿?」


この人はハート様の副長だな。隣に座ってるし。


「部下からの報告だと遭遇したリーズィッヒ・コーイは仕留めておられないのですな」

「砦に向かうことを優先させましたので」

「それではこれからもそやつに襲われる可能性があると言うことですな」

「そうですね」

「大丈夫ですよ、ボルドウィン隊長はもうちょっとで討伐できたんですから! あのときだって……」


と、お調子者のジャン君が発言したが、マーゲンさんからにらまれたぞ。


「どうした? ジャン。続きがあるんだろ? 」


ハート様が先を促す。


「あ、はい。あのときだってストーンゴーレムが邪魔しなかったらあのドラゴン、仕留められてたと思って…… 」

「いや、アレはドラゴンではないぞ? 何度も言うが、リーズィッヒ・コーイだ」

「スネーク殿が描いた絵を見ると、ナーギーのようにも見えるのだが……」

「リーズィッヒ・コーイが大きくなると、空を飛べるようになるのですか? 」

「いやいや、ちょっと待ってくれ。ジャンが気になることを言ったぞ? リーズィッヒ・コーイとストーンゴーレムが連携してきたというのか? 」

「え? 今までそんなことはなかったのですか? 」

「ストーンゴーレムと、小動物系、鳥系魔物は最近になって現れたものだ」


あー、やっぱり連携してたんだ。それはそうだよね。なんか関係ありそうだもんね。


「やっぱりマギ・バンブーと関係あるんですかねぇ? お前、役立たず!とか怒られてましたよ? カグヤサマって言うのがマギ・バンブーなのかなぁ? 」


このとき、我に電流走る…… 


「マギ・バンブーの個体名かもしれませんね。わたしのルートからは以上です…… 次に……」


話はどんどん進んでいくが、我は考える。もしかして、マギ・バンブーって転生者なの?グラニーちゃんが見たって言う精霊は、マギ・バンブーの精霊なのか? それがカグヤを名乗った? カグヤが石鉢とヒネズミとツバメとリーズィッヒ・コーイを操っているのは間違いなさそうだが…… カグヤというのは竹取物語のカグヤだよな…… 討伐しちゃっていいのか? もしかして、精霊になりたくて神樹サマの魔力を吸いに来たのか? 精霊化はなったみたいだから、以後は襲ってこなくなる? でも、たくさんエルフ族を殺してるし…… だが、我が同じ立場だったらどうする? 我の場合、導いてくれたのがアシアティカ様だったから事なきを得たのだが……


「…… と言うわけで明日は北側砦を重点的に捜索するものとする。ボーデンは北側砦に向かう地下道を見てきたのだろう? 人は通れそうだったか? 」

「マギ・バンブーの根が張り巡らされてたから、どうかな? 師匠がもう一度作り替えればいいんじゃないかな? 」

「そうか、スネーク、頼む」


あ、ああ……


「どうした? 何か考え事か? 」


さすがにボルちゃんには気づかれたか。話を聞いてなかったが、このあとはどうするんだ?


「今日はさすがに休むことにする。一日中辺りを駆け回ったし、魔力もかなり使った.お前だって魔力を相当使っただろう? 寝ないと回復しないぞ」


う、うん。そうだな。


「さーて、そうと決まったからには会議はこれでおしまいだな! そう言えば、ボルドウィン殿! こちらには酒を運んできてもらえたとか」

「ああ、それなら調理部の皆さんに預けてきた。討伐が成った暁には宴会でもやろうと思ってな」

「さすがボルドウィン殿、話がわかる!」

「だが、今日は多分出してくれないだろうな…… まだまだ任務は終了していないからな」

なんだかしゅんとしてるハート様と野郎ども。なぜかにやりと笑うボルちゃん。

「まあそんなことになるかと思って少しだけ確保しておきました。バウアーよ、まだ燻製は余っているか? 」

「まだまだたくさんありますよー。だけどニクばっかりじゃだめですから、お助けイモを使ってつまみを作ればいいですねー! 」


あ、こいつ、ニクが減るのを阻止しに来たな? ボルちゃんもその意思が理解できたらしくにやりと笑う。


「それではバウアー、調理は任すぞ! ヴィン、手伝ってやってくれ! 」

「さ、酒は何を持ってこられたのですかな? 」


クラさんが聞いてきますよ。お久しぶりだったようですね、お酒。


「ま、いろいろあるが、今晩はエールだけにしておきましょう」

「それでもありがたい! いただくとするか!」


盛り上がっている者達を尻目に、我、その場をにゅるりとあとにした。ボルちゃんが我をチラ見した。


”どこへいく、スネーク?”


ちょっと夜風に吹かれながら、月を眺めに。


”風流だな。なるべく早く帰って来いよ”


そうする。

本日はこれにて。

お読みいただきありがとうございます。


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