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我はツチノコ  作者: あいうわをん
第5章 ツチノコの証明 神樹さま、我のあの背負子、どうしたんでしょうね・・・ええ、夏にグラニーラムゼースミスの谷底で落とした、あの背負子ですよ
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世界樹の嘆きの声は届かない

ちょっと間が開いてしまいました・・・


 ボルドウィン率いる援軍部隊は、グラニーラムゼースミスの里内壁にある螺旋階段を駆け上がっていた。本来なら、ボルドウィン単体で空中闊歩エア・ウォークを使って駆け上がった方が目的地にあっという間に着くのだが、それを里長が許さなかったのだ。おかげで、里長の行軍速度、メンバーの中で最

遅なのだが、それに合わせた動きになってしまう。


「里長殿! もっと早く走れませんか! 」

ヒーヒー言っている初老の男を尻目に介護室長のご婦人が「これじゃあ全然進まないわねぇ。あなた、ちょっと失礼しますよ」


初老の男をひょいとお姫様抱っこ、この場合は初老抱っこと呼べばいいのだろうか、一行の走りについて行く。


「エンゲル殿はそれで持ちますか? 」

「ええ、ボルドウィンさん。これでも介護室の仕事は体力勝負なんですよ? 」

「こら! 離せ、離さんか! 」

「あなた~、ちょっと黙っててー、舌、かみますよ~~」

「おーーー、おっさんが子供に見えるな! 」

「これヒーちゃん! そういうことは思っても言わないの! 」

「僕は知っている・・・・・・ あれは幼児プレイって言うんだ・・・・・・ プレイだからなにも恥ずかしいことはない」

「そんなプレイなどあるかぁ! 降ろせ、降ろさんかぁ! 」

「はいはいあなた、もう少しで世界樹様の所に着きましゅからねぇ~」


ボルドウィン一行が内壁に作られたスイッチバックの階段を上っていく間にも、上空にぽっかり開いた青天蓋からは、もはや、はらはらを通り過ぎた調子で木の葉が散っている。ボルドウィンは、グラニーラムゼースミスの里の世界樹を見たことはなかったが、葉の落ちる量と速さが尋常でないことはすぐにわかった。


『・・・・・・ ・・・・・・』


さきほどから、何か聞こえているようで聞こえていない、額金でスネークたちと話しているような感じもするが、そうでもない感じ・・・・・・ 走りながら、部下のヴィンデルバンドに尋ねてみる・・・・・・


「ヴィンよ・・・・・・ さっきから何か聞こえないか? 」

「ぜぇーーーー・・・・・・ 特に何も・・・・・・はっはっはー 」

「ヴィンは体力訓練の方はやってなかったな・・・・・・ 今回は特例だ」


ボルドウィンはまだ子供のような体型の部下の手を取ると、ひょいと背に乗せた。


「ぜーーー・・・・・・ 申し訳ありません。はーーー・・・・・・ あんまり走る訓練をやってなくって・・・・・・ 」

「今は緊急時だからな! これが終わったらヴィンも少しは訓練するといい。それより、ホントに何も聞こえないか? 額金から何かが聞こえている気がするのだが・・・・・・」


『・・・・・・ ・・・・・・』


ボルドウィンの首の後ろからはぁはぁと荒い息が聞こえてくる・・・・・・ まだ息が整っていないようだな、それならば念話で話せばいいじゃないかと互いに気づくのが遅れた。


”隊長には、念話みたいな感じで、聞こえるんですか?”

”ああ。だが、声が小さいようで、何を言っているのか聞こえないな・・・・・・ もしかしたら、グラニーラムゼースミス様の声かもしれない”

”私はマルス・プミラ様とは話をしたことがないのですが、やはり念話なのでしょうか? ”

”いや、精霊状態なら普通に会話できるようだ。その上、念話もできる。アシアティカ様がそうだったな・・・・・・ だが”

”どうしましたか? ”

”ある程度まで成長しないと精霊状態にはなれないそうだ。グラニーラムゼースミス様はもう少しで精霊状態になれるのではなかったかな? ”

”・・・・・・ つまり、隊長の聞こえそうで聞こえない声はグラニーラムゼースミス様の声だと? ”

”ああ! この落ちてくる葉の数、尋常ではない! ”



「里長! 我らは先に上まで行く! 」


そう言い残すと、ボルドウィンは部下を背負ったまま宙に跳ぶ!


空中闊歩エア・ウォール!」


たちまち天へと昇る二人のエルフ。口をパクパクと開閉する里長に、フランメクライゼルが声をかけた。


「ま、壁の階段使ってたんじゃ間に合わねーだろうからな! 」

「ヒーちゃん、里長さんを慰めてる暇があったら走って走って! 」

「看護室長さん! 里長さんを僕が背負うから貸して! この中で一番足が速いのは僕だから!」

「あらそうなの? こんなに小さいのに? それじゃあお任せしましょうかね、あなた。よかったわねぇ、若い子に背負ってもらえて! 」

「な、何を言うとるかぁ! 」

「ああ、いいから遠慮せずに僕に負ぶさりなよ。ホントは汗臭くって年寄り臭くっていやだけど! 」

「いいなぁ里長。役得だなぁ!」

「ホントホント。年寄りにはもったいないよな! 」


そんな陰口も聞こえるが、反論する前に援軍の一人であるボーデンに背負ってもらうことになった里長だった。


「それじゃ、行くよ。舌かまないように、しゃべらないでね! 大地疾走ランド・クルーズ! 」


足下に魔力を込め、上り坂をあっという間に駆けていったボーデンとその背に背負われた里長だった・・・・・・


本日はこれにて.お読みいただきありがとうございます。

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