声が聞こえる
我にしては、ちょっと長め。
ボルドウィンは落ちてきた枯れ葉を拾い上げる。
「間違いない! マルス・プミラ様の葉が枯れ落ちているぞ! 」
はらり・・・ はじめは、一枚、しばらく経ってもう一枚といった感じだったが、徐々に舞い落ちる木の葉の数が増えてくる。
「今時期にマルス・プミラ様の落葉などあるものか! これだからものを知らん若造は始末に困るわ! 」
「では! マギ・バンブー以外にこの上に何か草木が生えているのですか? 」
この疑問はもっともであった。里の中は居住区であり、マルス・プミラ以外の植物は、少なくとも灌木の類いは生えていないのだ。そのことを知っている里長もようやく事態が深刻化していることを認めざるを得ないのであった。しかし、マルス・プミラの所在地は、里の秘匿情報・・・・・・ 悩む里長。
「あなた様。グラニーラムゼースミス様が枯れてしまっては、里を立ち上げた先代様に申し訳が立たないのではありませんか? 里にとって、一番大事なのはグラニーラムゼースミス様でしょう。何を迷うことがあるのですか? 」
ムムム、と唸る里長。そこへ、先ほど駆け出していったはずのボルドウィンの部下が駆け戻ってきた。
「隊長! 大変だよ! 」
「そうか! やはりな!! 」
「まだ何も言ってないよ! 」
「いや、大変だというからには、マギ・バンブーが地下道を伝って里に侵入していたのだろう? 東西方向で問題なかったのなら、北側からやってきたに違いない。スネークはこの里の周囲のどこかに本体がいるといっていたが、北側にいたのか! 」
「それでどうするんだ? 隊長さんよ? その地下道に行くのか? 」
「今から行っても、もう間に合いませんわよ? 地上でこれだけ生えたんですもの」
「こいつ! お前、地下へ行きたくないだけだろ! また楽しようとして! 」
「いや、トレーネの言う通りだな。今は一刻も早く、グラニーラムゼースミス様の安全を確保することだ。そのためにも、里長! 」
「よーし、わかった。グラニーラムゼースミス様に万が一のことがあったら、貴様らのせいだからな! 」
はらはらと舞い散るマルス・プミラの木の葉・・・・・・少しずつではあるが、枚数が増えているようにボルドウィンには見えた。
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我らバンブー討伐反時計回り軍は絶壁で進めない場所に、”坑道生成”を使って西側砦まで進んでいるのであった…… 歩き始めてもうどれくらいなるかね? 退屈になってきたので替え歌でも歌うか。
”我は死んじまっただ~♪ 我は死んじまっただ~♪
我は死んじまっただ~♪ 異世界へ行っただ~~♪
長い階段を~ 地下の階段を~ 我は登っただ~~ ふらふらと~~♪
「スネークさ~ん……」
ん? 何かなエマさんや?
「休憩しませんか~ 皆さんもうふらふらですよ~! 」
ん? そうか? 後ろを振り返ると、結構な距離が開いていた…・・・ちゃんと付いて来てるのはハート様だけ?
「もう登り続けて30分ぐらい経ちますよー? まだ出口に着かないんですかー? 」
うん。あんまり急な階段にするとあとで筋肉痛になるから、勾配を緩やかにし
たのだが、その分長くなってしまいましたな。そんじゃ、ここで休憩するか?
「ん? バウアー殿、どうしたのだ? 」
「スネークさんに頼んで―、ここで少し―、休むことにしましたー 」
エマさんや、何か飲むものを出してあげてはどうかな?
「あたしー、飲むものはいつもスネークさんに出してもらってるから~」
コップとかも持っとらんのか? しょうがないやつやな。そしたら
”物品作成! 500mlクリスタルグラス!”
階段になっている地面から人数分のクリスタルグラスがでてきましたな。それに我が”貯める”技能で体の中に貯めていた魔法水を注いでいきます。あ、そう言えば、エマさん体力飴もらってなかったか? あれをみんなにあげれば、体力も回復するでしょう。
「おおおお、こんなところからグラスが…… これもスネーク殿の魔法? これ、飲んでいいのか? 」
「スネークさんの出すお水は~、ものすごくおいしいんですよ~。皆さんも飲んでって言ってますよーーー、あ、飲んだら、隊長からもらったこれを口に入れてくださいってー」
「これは? 」
「舐めたら元気になる飴だそうですー」
ま、こんなところじゃ水ぐらいしかだせないからな。晩飯時にはボルちゃんに頼んでエールでも出してもらえば?
”異世界良いとこ一度はおいで 酒はエールだ ねーちゃんはエルフだ~ わっわー♪ ”
『・・・・・・』
エマさんや? 何か言ったか?
「いえー? 何も言ってないですよーー? 」
そうか? 何か聞こえた気がしたのだが…… アンナさん、何か聞こえなかったか? 我はヘルメットを脱いだお嬢さんに声をかけたが、ヘルメットを脱いでいるので通信ができないことに気づきました。てへっ!
「アンナさーん。スネークさんがー、何か聞こえなかったかって、聞いてますけどー? ヘルム脱ぐ前に何か聞こえませんでしたかー? 」
「いえ…・・・ 特に変わったことは…… 変な歌は聞こえてましたけど? 」
「それはー、スネークさんのーー、ご機嫌状態ですねーーー。特に変わったことではありませんよーーーー」
グラスのお水をぐい吞みしたアンナさんとその他大勢。飴をもらって、舐めて、ちょっと元気が出たかな?
『・・・・・・ だれ・・・・・・ か……』
ほら! やっぱり聞こえるよ! エマさん聞こえなかった?
「いえー? 」
アンナさん、ヘルメット被ってみて!
「アンナさーん。それ、被ってみてもらえないですかー? 」
「はい…… どうかしましたかスネーク殿? 」
”それ、被っても何も聞こえない? ”
”特に何も聞こえませんね ”
『・・・・・・ 聞こえてる…… なら、・・・・・・ たす・・・・・・ けて…… 』
! 助けてコール! 聞こえるぞ!
「私たちには何も聞こえませんが…… スネーク殿だけ何かが聞こえているのでしょうか? 」
誰かが助けを求めてるんや!
『・・・・・・ わたしは…… わたしは…… 』
私は・私は・私はキャンディか?
『・・・・・・グラニーラムゼースミス・・・・・・ そう呼ばれています……』
! グラニーラムゼースミスの神樹さまか! 我はツチノコ! 今すぐ行きます! というわけで、エマさんや! 休憩は終わりジャ! ここにいる人たちは引き返してもらっても構わん! 外に出たら 砦まで道は作っておくが! エマさんよ! 我が天井に穴を開けるから! そのあとは我を空に放り投げろ!
”坑道作成! 上に向かうトンネル! ”
今まで歩いてきたトンネルとは別に真上に穴を開けました。あ、意外と地上までは近かったのかもしれません。10mぐらいで外に出られそうです。そんじゃ、頼むわ! 我、エマさんに、むんずとしっぽを捕まれます。
「それじゃいきますよーーー。今日の晩御飯はなんですかーー? 」
知らん! ハオスエンテの唐揚げとかじゃねーの?
「唐揚げ、楽しみに待ってまーーーーーっす!!!! 」
我、空へ揚がる!
本日はこれにて。
お読みいただきありがとうございます。




