グラニーラムゼースミスに迫る危機
援軍を率いる将、ミア・ボルドウィンが、里の中に侵入してきたマギ・バンブーを刈り出して数分。壁の中層から下層に生えていたものはボルドウィンの放った風魔法・鎌鼬によって刈り取られ、使命を終えた鎌鼬は魔力を使い切って消え去っていた。上層部はボルドウィン自身が空中闊歩によってその場まで駆け上がり、両手剣・蒼天でぶ厚い竹の竿を薙ぎ払っていった。里内の広場から見上げたところには壁から生えているマギ・バンブーは見当たらなくなった・・・・・・ マギ・バンブーは里の中に侵入することを諦めたのだろうか?
「ふぅ・・・・・・」
地面に駆け下りて、ボルドウィンは一息つくと、腰のポーチからポーションを取り出し一息に飲み干す。それは、かつて迷い惑わしの森を越え、光のマルス・プミラの靖んじていた場所で手に入れたものだった。おかしな蛇の魔物に仮の従魔になってもらった場所で光のマルス・プミラの樹液だという説明をその蛇はしていた。そこからグラニーラムゼースミスまでの旅の途中までは、このポーションでかなりの魔力を回復できていたが、今ではまるで物足りないように感じられる。それはこの旅で、ボルドウィンが成長した証であった。
「ま、飲まないよりはましか・・・・・・」
飲み干したあと、そんなことをつぶやいていたら、周りにいたエルフ達が駆け寄ってきた。
「隊長、すごいね! 一人でほとんど刈り取って、僕らの出番がなくなっちゃったよ! 」
「ホントだぜ! オレらの分まで刈り取っちゃうなんて!! 」
「おかげで何にもしなくてすみましたわ! 」
喜んでいる三人と、未だに額金という魔道具で通信をとろうと試みている一人。
「どうだヴィン? スネークたちと連絡は取れたか? 」
「だめですねぇ。レイハーさんにも試してもらいましたがだめだったそうです。ものすごい地下にいるのでしょうか? 」
「うむ、わからんが、引き続き交信がとれるように試みてくれ。そして、ボーデン・フランメ・トレーネ」
「はい!」
「なんだ?」
「どうしました?」
「マギ・バンブーが里の中まで侵入してきたのは初めてのことと思うが、疑問点がいくつかある。第一にどうやって侵入したか? 」
「今まで侵入してこなかったのは、マゼンダフロスを越えられなかったから? 」
「それがなぜ今になって越えることができたと思う? 」
「・・・・・・ あれのせい? 」
「ボーデン達は、例の地下道を通っただろう? 何か変わったことはなかったか? 」
「僕たちは、東西方向のルートを使ったけど、僕らが通った場所は特に変わったことはなかったよ? 」
「ちょっと待て! なんだ? その地下道というのは? 」
「スネーク・・・・・・ 連れてきた従魔が、ここの開墾部隊の長に頼まれて、里の地下路を通したのです。ひょっとしたら、それをマギ・バンブーに使われてしまったのではないかと」
「それが事実なら! 貴様らのせいでマギ・バンブーの侵入を許したと言うことではないか! 」
「あくまで仮説です・・・・・・ ボーデン、様子を見てきてくれないか? 東西方向が問題ないのなら、南北、特に北に向かう通路があやしいと考えているのだが」
「わかった。それじゃあ行ってくるね! 行くよ、大地疾走! 」
ボーデンは呪言を唱えるやいなや南側の出入り口まで駆けていった・・・・・・ 後に残されたエルフ達は今後どうするかを検討し始める。
「それで、里長殿。目に見えるところは刈り尽くしたつもりだが、まだ刈り残しや、新たに生えてくるバンブーがあるかもしれない。なので、ここはマルス・プミラ様のところに行って安全確認をした方がよろしいのではないですか? 」
「ならん! よそ者にマルス・プミラ様を任せるなど言語道断! 貴様らが来なければ、里にそのマギ・バンブーとやらの侵入を許さなかったのだ! 」
「ふぉふぉふぉ、そして我らはマギ・バンブーに包囲されて籠城の末、皆飢え死にじゃなぁ・・・・・・」
「少なくとも里の者だけでは何も変えられなかったじゃろうて。これはマギ・バンブーを討伐するチャンスなんじゃないのか? 我が息子よ? 」
里のエルフ達の説得にもかかわらず、里長は自説を曲げない。このような言い合いが続いていたが・・・・・・ ボルドウィンは、ふと空を見上げた。
はらり。一葉天から落ちて、天の機を知る者おらず。
はらはらり。二葉地に着いて、地の異を悟る者あり。
「里長殿! まずいぞ! あれはマルス・プミラ様の枯れ葉ではないか! 何かが起きている! 」
本日はこれにて。
お読みいただきありがとうございます。




