援軍の実力を里長は知ることになる
フランメクライゼル上級兵がトレーネ上級兵の必殺技(何を殺した?)によって動けなくなってしまったので,マギ・バンブーを刈ることができるのはボーデン兵長のみになってしまった。ヴィンデルバンド衛生兵は、里のエルフ達のうち、魔法を使えないもの、マギ・バンブーを刈り取ることができないものはいったんここから離れることを里長に提案する。
「それだとワシがここにおれんじゃないか! 」
「お前は役立たずだから,皆を連れて里の外でまっとれということじゃ! 」
「いえ! 里長さんには私たちと一緒にいてもらわないと、私たちには判断できないこともありますし」
「ふぉふぉふぉ。よかったねぇ、ヴィンデルバンドちゃんから必要って言われて。だけど、こいつ連れて行っても役に立たないよ? 」
「は、母上? 」
「えーと、イルゼさん? は風魔法のエア・ウォールが使えるんでしたっけ? 」
「エア・ウォールが使えるのはこっちのゲルダさんの方じゃよ。わたしゃ鎌鼬の方じゃよ」
「それで、うちの隊長みたいにバンブーを刈れるんでしたっけ? 」
「いや~、わたしの鎌鼬では笹の葉を切るので手一杯じゃ」
「それではゲルダさんのエア・ウォールはどの程度のものなのでしょうか? 」
「そうさねぇ、人一人ぐらいの壁なら、笹の葉が飛んできても防げる程度さねぇ」
「それではお二人には里長さんとフランメクライゼルさんを守っていただきたいのですが・・・・・・ 私は他の皆さんをいったん里の外まで誘導してきます。あ、ボーデンさんはこのままマギ・バンブーの刈り取りをお願いします。トレーネさんは守備のバックアップを! 」
「私はしばらく休憩ってことね! オーケーよ! 」
「休憩じゃなくって警戒だよ、トレーネ! 」
「わかってるってリーちゃん、ほんの冗談だからね」
「いつもの言動から察するに冗談に聞こえないから! どれじゃ、隊長が来るまでに少しでも刈ってくる! 行くよ、大地疾走!」
少し広場を助走したあと、ボーデン兵長は壁面を駆け上りマギ・バンブーを刈り取っていく。先ほどより駆動距離が伸びたのか3本刈り取ることができたようだ。その様子を見て、トレーネ上級兵は、壁面は大地の分類に入るのかしらねぇ? と首を傾げていた。
ヴィンデルバンド衛生兵が里のエルフを里外に送り出しふたたびもどってきた。ボーデン兵長が刈り取ったマギ・バンブーが広場に落ちてちょっとした小山になっていた。しかし、見上げるとマギ・バンブーはより繁茂したように見える。刈り取りの速度より生える速度の方が早いのだ。
「里長さん! マルス・プミラ様のいる場所はどこですか! そちらに向かわないとこのままではまずいかもしれません! 」
「グラニーラムゼースミス様の場所は部外秘じゃ! 教えるわけにはいかんの! 」
「ですが! マギ・バンブーの目的がマルス・プミラ様だった場合、もう手がつけられなくなります! 今ならまだ間に合うと思うのです! せめて、隊長が空から来るのを許可していただけたら! 」
「何度も言わせるな! そんなことは許可できん! 」
「ですが!・・・・・・ あ、もう大丈夫です!」
広場の東の方から一陣の風が吹いた。その風のあとに、アプフェル王国軍の軍服を着た女性が現れた。女性は腕を胸の前に交差させ里長に一礼する。
「お久しぶりです、里長殿。アプフェル王国近衛軍より派遣されましたボルドウィン小隊隊長ミア・ボルドウィンです。里内に入る許可をいただきありがとうございます」
「う、うむ!」
「それでは・・・・・・ヴィン、状況を教えてくれるか」
「はい! 今から1時間ほど前でしょうか、里内にマギ・バンブーが侵入してきたのを里の人が発見。30分ほど前に我ら援軍が討伐と怪我人の治療を行いました。治療はすみ、今里の人たちは南側広場で待機してもらってます。伐採は刈り取れる人がリージーさんしかいませんで、徐々にマギ・バンブーの生育面
積が広がっています。刈り取り速度を上げないと、里内はマギ・バンブーで覆い尽くされてしまいます! 」
「スネークはどうしたか? 」
「スネークちゃんとは連絡が取れません。ボーデンさんの話だと、トンネルの中にいるのではないかと! 」
「そうか・・・・・・ ヴィンは引き続き、スネークとの交信を試してくれ。ボーデンは・・・・・・ どうだ? 疲れたか? 」
「まだまだ平気! 」
「フランメとトレーネは・・・・・・ 休憩か? 」
「たいちょ~、オレはこいつのせいでえらい目に! 」
「私は休んでいたヒーちゃんのお守りです! 」
「動けるんだな? なら、マギ・バンブーの伐採をやるぞ? トレーネは刈り取った竿が皆に当たらないように注意しておいてくれ! フランメは・・・・・・ あれに攻撃できるか? 」
「あたぼうよ! スネークからもらった独楽で一撃さ! 」
「それでは、ボーデンとフランメは攻撃できるところを攻撃してくれ! 私は高いところを刈り取る! 中層は、ミィアちゃん、頼むぞ! 」
「ミィアちゃん???」
「ボルドウィン隊長さんの風魔法さ。わしらが引き籠もっとった間、あの子らは苦労したんじゃ」
「いえ、苦労などとは思っておりません! いきます!
空よ、無限の風を生み出す母よ、汝の子たる者の力を我に貸し給え。汝の子はわが魔力を与えさらに力をまさんことを欲す。その名は鎌鼬、空から生まれ、空を切り裂くものなり、その名は鎌鼬」
ボルドウィン隊長は背負っていたミスリルの大剣を抜き、呪言を唱える・・・・・・
すると、大剣から蒸気が立ち上り、小動物・鼬が顕現した・・・・・・
「な! なんだ、あれは!」
「鎌鼬の究極状態、ミィアちゃんです! ミィアちゃん、なるたけおおくマギ・バンブーを刈り取ってくれ。私は上の方を刈りに行く! 」
「上の方ったって! どうやって刈りに?! 」
「黙って刮目せぃ!」
「行けーーーーーーーーーーーー!」
ボルドウィン隊長は大剣を振りかぶる。すると剣から勢いよく爪が釜になった鼬が飛び出していった。
「さてと、私も行ってくる! 行くぞ! 空中闊歩!」
言うが早いが、ボルドウィンは空中を駆け上がり、あっという間に壁面の一番高いところにたどり着き、マギ・バンブーを刈っている・・・・・・ 次々と落ちてくるマギ・バンブー。そのうち広場にいるエルフの上に落ちそうなのはトレーネ上級兵がナインテールと呼ぶ鞭を使って落ちる軌道を変えていった・・・・・・
「こんなに簡単に刈れるんだったらさっさと中に入れておくべきじゃったなぁ、坊や。ふぉふぉふぉふぉ! 」
こんなに簡単に刈れるんなら、前に来たときに討伐成功させとけ~~~、そう心の中で叫んだ里長だった・・・・・・ 口に出すと母親から怒られそうだったのでやめておいたのだ。
本日はこれにて。
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