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我はツチノコ  作者: あいうわをん
第5章 ツチノコの証明 神樹さま、我のあの背負子、どうしたんでしょうね・・・ええ、夏にグラニーラムゼースミスの谷底で落とした、あの背負子ですよ
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私はカグヤ


 何日の昼と夜を過ごしたか、もうわからないわ…… できることは思索…… 私は誰? 私は何者? ここはどこなの? どうしてこうなった? 私に何ができる? …… 今はできることを確認中で、ここはどういうところかを探っているところ。音は聞こえる? 音なのかしらね? 振動? それで外の情報は拾えるわ。昨日何やら音が聞こえてきたことがあるけど、その時同時に下の方から振動を感じたわ。同じ方向からだったから、音と振動の発生源は同じものとみて間違いないわね。何が近づいたのかしら? こっちに近づいているわけではないようね。どこかへ行ってしまった…… 移動できるということは、動物かしらね…… って、今日も同じ音がするわね! こっちに近づいてきている? 近づいてきている! あ、止まった! まずい、まずいわ! 私にできること…… 気配を探ることだけ! じゃあ、それをやる! 


「ギャウン!」


何か聞こえたわ! あ、音が遠ざかっていく! 私が気配を探ることで何かしたのかしらね。そのようですね。これからは怪しい気配がしたら、それを探ることにしてみましょう……

♢♢♢♢♢



 あれから幾度か同じ気配を感じたけど、その都度気配を探ることをやったら、ギャウンって言って逃げていったわ。近づいていたのはやはり動物のようね。そしてなぜ逃げたのかはいまだにわからない……

♢♢♢♢♢



 さらに幾日か経った…… また気配がするわ…… でも、これはいつもとは違う…… 下の方の振動が規則正しい…… いつものやつじゃないわね! あ、私の前で止まったわ!


「んん? なんじゃこりゃ? 草にしては背が高くてかたい幹してるが、樹木にしては樹皮がないのう? 緑色しとるから植物だとは思うが。幹部分にはところどころに堅い場所…… 節があるようじゃな? 」


なに? 何か話しているわ! 話が分かる! 樹木? 私って木なの? 樹皮がない木? 植物? 私って植物だったの? え? 節がある? あ、何か調べようとしてるのね! いつもの気配を探るのやっちゃう!


「お、光った! 魔植か? 」


あれれ? 私って光ってたの? 気配を探るのが光を放ってたことになるのかな? 魔植って何よ! さっきは植物って言ってたじゃない! 節がある? なによ節のある植物って? 竹? もしかして、竹になったの私?! 本当に!? 私、びっくりだわ!


「ふーん。どうやら精霊状態になり切れていないようじゃのぅ…… 魔力を吸えば、精霊状態が顕現できるようになるが、どうするかね? そこまで連れて行こうか? よければ一度、このままでいいなら二度、光ってくれ」


え? なに? 精霊状態? 今はなに状態? 魔力を吸う? え? え? よくわからないけど、一回光ればいいの?  えい! 光ってみせたわ、たぶん。そしたら


移植トランスプラント! 」


変な合言葉を使ったわね。何、トランスプラントって? インプラントなら知ってるけど? 歯医者さんのところでみたわ。そんなことを考えてたら、下の方から何かふわふわしてる感じがして


「からの、転移! 」


続きがあった! 転移って言ったわ! きっと超能力よ! 誰だか知らないけど、言葉使いはお爺さんのようだけど、何者? おおお、なんだかきぼちばるい……… 


「着いたぞ。お前さんをここに植え替えることにする」


おぇええぇ、下の方の感覚が元に戻った…… これって根付いたってことかしら? 植え替えって言ったからそういうことよね。


「そして、魔力を吸収させる力を与える。ここからちょっと離れたところに、たくさん魔力を持っている木があるから、そこまで根を延ばしていくがよい」


ちょっと! 魔力を吸収させる力を与えるって、どういうことよ? そう言えば、魔植っていってたわ。私は魔物の植物? 植物の魔物なの? たくさん魔力を持ってる木があるの? ちょっと気配を探ってみますが…… 探れる方向と探れない方向があるのはどうして? 探れる方向は…… いつもと同じだけど、こんなところに魔力を持ってる木があるの? ………… 探れない方向は、なんだか跳ね返っているような…… 何がって言われても困るんだけど、何かが跳ね返ってくる感じ。


「あー、今から季節は冬になるから、それまでは通常の植物の力で根を張っていきなさい」


え? いまから冬になるの? ちょっと! 聞いてないわよ! 通常の植物の力って何よ? 光に当たって水分養分を吸収して生きろってこと? 今までそうやって生きてきたの、私? 


「多少魔力がないと生きていけないかな? それではこの石を根の真下に埋めておくからそれを使って生きていきなさい」


え? 何かくれるの? よくわからないけどありがとう! って、石をもらってもどうしようもないんだけど? その石に魔力が入ってるってこと?  


「うーん、そうじゃのう… 身を守る方法がないとすぐに枯れちゃいそうだねぇ。それじゃ、”硬化ハードボディ””軟化ソフトボディ””傷の癒し(ヒール)”を使えるようにしておこうかの」


え? なになに? 私に何かしたの? あら、さっきの石から美味しそうな感じがするわ! 下の方…… これって根ってことよね? 根っこから養分を吸い取る感じで…… あとハードボディとソフトボディってなによ? 堅いからだと柔らかいからだ? ヒールは癒す力の事よね……


「ところでお前さん、名前は何と言うのかね? …… って言っても喋れないからどうしようもないな。魔力を吸って精霊化できたら喋れるようになるのかね? そんじゃ半年たったらまた様子を見に来るぞい。では、さらばじゃ! 」


あ! ちょっと待って!…… さらばじゃ! じゃないわよ!! お爺さん、私の事、最後までちゃんと面倒見なさいよ! …… って、いっちゃったわね…… もはや気配なし……………




わかったこと…… どうやら私は竹になったらしい。魔力を吸ったら精霊化したら喋れるようになるらしい…… あのおじいさん(喋り方からしてお爺さんだと思ったけど)名前を聞いていたわね…… それなら、日本最初の古典SFからとって、カグヤを名乗ることにするわ…… 日本ってなにかしらね? どうも記憶が抜け落ちている…… ”私”に関する記憶が…… ”日本”も”私”に関係する記憶のようだけど…… いけないわ、それよりも、さっきのお爺さんにもらったものの確認をしなきゃ。



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