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我はツチノコ  作者: あいうわをん
第5章 ツチノコの証明 神樹さま、我のあの背負子、どうしたんでしょうね・・・ええ、夏にグラニーラムゼースミスの谷底で落とした、あの背負子ですよ
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エルフ族のお婆さんは常識人だった


 ハンナちゃんが治療用具と食事の入った荷鞍を用意し、エマさんがそれを運びます。手ぶらなのはボルちゃんです。隊長だからそれでいいのだ。階段を上りまして、2Fは何があるのかと思ってドアを開けたら空気が埃っぽかった。使われた形跡がないようです。その部屋には入らずに3階へ行く。真っ暗だった部屋に1本燭台があり、そこで蝋燭灯が輝いていた。


「おぉ。戻ってきたようじゃな…… おぬしら、何か食いもんは持っとらんかね? 」


「しばらく食べていないのですか?」


「いやいや、量が少ないだけでまだ食えてはおるよ…… 今日はこの砦の番をするため詰めとったんじゃ……ここには食べ物は置いてないからのぅ。朝に交代をするから2食分持ってきてたんじゃが、こんな夜中に起きてしまってのぅ。腹が減ったんじゃよ」


「どの程度食べられるかわかりませんが、まずは消化の良い麦粥空でよろしいですか? 後、そちらの方は寝ているだけ?」


エマさんが荷鞍から1石鍋を取り出しました。まだまだお熱いようでエマさんも両手に布を使って取り出しています。


「ここに調理場はありますか? 」


「向こう側の角がそうじゃよ。ああ、水はもう汲み置きがないので使えないよ、すまないけど」


「大丈夫です、水魔法が使えますので。それではエマさん、あちらにお鍋を持っていってください」


「エマさん…… そこにいるのはエマ嬢ちゃんかえ? 」


「あれれ~? その声はイルゼおばあちゃんですか~? 」


なに、エマさんのおばあちゃんなの?


「あたしのおばあちゃんではないですよ~、前にここに来た時に知り合ったお婆さんですよ~。いろいろ教えてもらった人ですー」


「嬢ちゃんはかわっとらんのう…… まったく軍人らしくなっとらんわ。よかったよかった」


「おばあちゃん、話すのはあとにして~、ご飯の準備しますからね~、まだ食べてないんでしょ~」


ちょっとお母さん! もうご飯は食べたでしょ!の逆バージョンやね。ひょっとしたらもう食べているのかも? と思ったら、腹の虫が鳴っているのをきいた。水を飲んで腸が起きだしたのかな? どのみちここで2回目の夜食になるだろうからみんなで食べればいいか。


「エマさん、準備はお願いします。スネークちゃんの指示に従ってもらえればいいと思いますよ。私は怪我している人の様子を見てきます」


我の指示と言ってもなぁ、お粥はできているようだし、あとはハオスエンテの卵をかき混ぜて、ネギ……ラウホを刻んで、小さい土鍋がちょうどいいか、それに麦粥入れて…… ここってコンロ使えるの? 


「魔道コンロがありますねー」


それじゃ、その土鍋を火にかけてハオスエンテの溶き玉子を流し込んで…… すこーし醤油…… ゾヤゾーゼを入れて、刻んだラウホを入れてしんなりするまで煮込んで、あ、ついでにお湯を沸かしたって。みんなの分もどうせここで食ってくんでしょ? そしたら飲み物いるよね。あとはそうだね… お粥ばっかりだと味気ないので、燻製肉を細かく切り刻んで… 噛まなくても済むぐらい。刻み終わったらラウホの周りに輪を描くように入れて…… 出来上がりですな。


「おばあちゃん出来ましたよー」


「やれやれ、それじゃありがたくいただくとするかい… そっちにテーブルがあるからそっちで食うことにするよ」


「その前に確認ですが、御老体のお名前はイルゼ殿で間違いありませんか?」


「ああ、まだ名乗っておりませんでしたなぁ。そうですよ、私しゃイルゼ・ハートっていうのさ。あなたは確かボルドウィンと言ったかね」


「はい、私は王里の近衛軍に所属していますミア・ボルドウィンと言います。食事をされながらで構いませんので、お話をお伺いしたい」


バーさんの事情聴取はボルちゃんに任せるか。こちらのケガ人の方は……


「あ、スネークちゃん、ちょうどよいところに! この人は例の植物の葉っぱの攻撃でかなりの怪我をしています」


わわわ……竹の葉っぱが結構ささってますね……ササダケに!ぷふう、ダブルでかかってる!


「笑っている場合ではありません。治癒魔法をお願いします」


うん。でもその前に、ササの葉を体から抜かないと、刺さったまま治療したらどうなるかわからんよ?


「だからさっきから引っこ抜いているのです!」


あ、結構思い切りよく抜くのね!


「こうした方が痛む時間が短いですから。さて、前は終わりで、背中がどうなっているかみたいのですが…… 」


エマさん呼ぶか? と思ってたら、男の人が気づきましたな。


「うううぅ…… ここは…・・・ 砦の中? 助かったのか…… イルゼ婆様!? 婆様はどこに? 」


「私ゃここだよ、ジャン。すまなかったねぇ、私の結界が鎌鼬で。お前さんを守り切れなかったよ……」


鎌鼬が結界? どゆこと?


「結界にもいろいろあると前に言いませんでしたっけ? あ、その前に、気づかれたのなら背中を向けてくれませんか?」


「え、と? 君は?」


「よくぞ聞いてくれました! あたしゃーーーーーね!」


「彼女はハンナ・ヴィンデルバンド。わが小隊の優秀な衛生兵だ」


「たいちょ~!」


「すまん、長くなりそうだったから」


「ありがとう、ヴィンデルバンドさん…… うぅ…… すまないが痛み止めの薬かポーションを持ってないだろうか? 」


「薬の前に、ササを全部体から除去しないといけません。抜くときは少し痛みますが全部終わるまで我慢してください」


「お嬢ちゃんは血止めを持ってるのかい? 」


「多少はありますが、それよりもっと効率の良い方法がありますので…… はい、全部抜き終わりました。あとはほんの少しの間寝ててくださいね。お婆さんは食事は終わりましたか? 」


「あぁ。もう一杯ほしいところだが、あんたらの分なんだろう?」


「私たちの分は気になさらないで結構ですよ。それよりお婆さんも少し休んだらまた食事を差し上げます。オニクは食べられますか? 」


「まだ歯は丈夫な方さね」


「そしたら、一度お休みになられてください。起きたらオニクをお出ししますので」


「でも私ゃ起きたばかりだよ。そんなにすぐには寝れやしないさね…… 」


「大丈夫です。眠り薬がありますので…… 」


二人に眠り薬を飲ませて、ばあさんの方はベッドに寝かせた。ジャンと呼ばれた若者の方には我が光魔法Lv.4滅菌ステリリゼーションで化膿しないようにして、そのあと光魔法Lv.3切り傷の癒しをつかった。まあ光魔法や緑魔法は他のエルフたちには内緒にしておくという約束ですから。でも、いつかは漏れるんでしょうけどね。


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