ボルちゃんは訓練が好きだなー
飴玉の入った袋をハンナちゃんから受け取り、イロハとカエデを並列に並ばせ、イロハに我が乗ります。そしたら特訓スタートや。後ろから汗血馬のⅤ3号に乗ったボルちゃんがイロハとカエデを追いかけます。
「ほらほらーーー、一生懸命走らないと追いついてしまうぞーーーーー」
足が遅くなろうものならパイチェで容赦なく馬のケツを叩きます! 鬼や! このエルフ、鬼や~! 鞭を入れても走れなくなったころで止まりまして、ボルちゃん飴を馬の口に放り込みます。ガリッ! 飴玉を噛んで飲み込みました。あっ! すげー元気になった! と思ったら,ヒンヒン嘶きながら坂を登っていきます! スタート地点より思いっきり駆けていってますな! そのあともスピードが落ちることなく頂上まで来ました。はい、どうどう!このまま向こうに行っちゃうと汗血馬ちゃんが追い抜きに来るぞー。はい、追いつかれたーーー。お前たち、まだ走れる? きつい? そんじゃ、ボルちゃんや、飴あげてー!再び飴をあげますと、すごい勢いでスタート地点への坂道を下り始めました。おおおおお! 勢いが止まりませんね! 中間地点を越えましたが、一向にスピードが衰えません。これは下り坂道のせいで足の回転が止まらなくなっているな。怪我する前に光魔法Lv.1……ヒヒーーンと鳴きながら下っていきます。はい到着ーーーーー!
「聞いた話とだいぶちがうようだが?」
そうさね。飴の効果が我の光魔法Lv.1より2~3倍強いのかもしれん。あと、下り坂で一度光魔法を使った。ああしないと走りながらこける可能性があるからな。
「よし、次だな。イロハは抜け。モミジが入る。それで、飴をスタート前に食べさせるぞ」
飴玉をもらったカエデとモミジはブヒヒーーーンと嘶きます。よ、またスタートじゃーーーー!今度は中間地点でモミジがばてそうになったがカエデはずんずん走っていく。モミジに光魔法を当て、休憩なしで頂上を目指す。頂上に着くと、また飴玉を食べさせる。下り坂を下りる…… やはりモミジが中間地点を過ぎたあたりからばててきてるので、光魔法を使う。そしてゴール。今度はカエデアウト、イロハイン。飴を食べさせスタート。今度はモミジも中間地点でばてることなく頂上に到着。飴を食べさせ、下りスタート。モミジに光魔法を使うことなくゴール。これで1セット終わり。1時間もかからなかった。光魔法を使わなくなったのであとはボルちゃんだけでやってもらう。3セットを終えるころ日が傾いてきた……。飴を最初に一つ食べさせただけで栗毛たちは坂を往復できるまでになった。すごいのかどうかはわからない。
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暗くなったので馬たちの訓練を終え水と飼い葉とあとニンジンやら大根やら馬たちが好きそうなものをたっぷりあげます。あと岩塩も。喧嘩しないで仲良くお舐め。馬部屋にいたら、ハンナちゃんがやってきて水桶に水をたんまり入れた。今日はたくさん走ったからなぁ。
「スネークちゃん。ちょっと聞きたいことがあるのですが?」
はい、なんざましょ?
「スネークちゃんからもらった大き目の水晶玉、あれにはいくら魔力が込められるのですか?」
うーんと、螺旋蛇杖の宝玉の大きさのやつが100としたら、その径が3倍だから体積が27倍として2700ぐらい?
「私の倒れる前の魔力が、ラセンダちゃんの宝玉一つ分ぐらいで、今は二つの宝玉に魔力を込めてもまだ魔力枯渇になりません。私の魔力は少なくとも倍になった感じです!」
ふがふがと鼻息が荒い! そういや、体力飴を使ったら体力が倍増したりするのかしら?
「どうでしょうか? 体力過剰という現象はありませんし…… きちんとトレーニングをしてへとへとになった状態でから舐めた方が体力は増えるようですが」
うーん、なるほど。
「となると、あの大きな水晶玉経由で、ラセンダちゃんに一つの玉に27回の魔力が満タンに込められるというわけですね?」
計算上はそうなりますな。
「なるほど、そうすると魔力の使い放題ができそうですねーーー。詠唱もしなくて済みそうですね」
馬小屋で話をしていたら、ボルちゃん登場。
「二人ともそこにいたか。馬の世話は終わったか?」
終わったよーん!
「それでは話があるので、テーブルの方へ来てくれ」
テーブルに行ったらば、光る玉を目の前にして、リーちゃんが如意棒に魔力込めを行っていた。
「師匠。これってどのくらいの魔力が入るかわかる?」
うん。魔力に単位なんてあるんかね? 玉の大きさはハンナちゃんのと同じだから魔力100として考えてるけど。
「そっか。以前に僕の魔力量を計ってもらった時3万って言われたんだけど、7回で済むようだから、この宝玉には21万入るみたいだね」
「ちょっと待ってください。大きさで魔力量が変わらないとしたら私の魔力量は21万ということになります」
「この玉を基準にしてスネークが魔力を込めるとしたら、何回込められる?」
わからん。無限にできそうな気はするが?
「えと、確かスネークは魔力量は350万だったはずだが?」
「さ、さ、さんびゃくごじゅうまん? 隊長はどうしてそれを知っているのですか?」
「じ、尋常じゃない………」
「フランクフォートの宿屋でヴィンが手伝いをして抜けているときにそんな話になった。紙に書いておいたから見てくれ」
ボルちゃんがポーチから書付の紙をテーブルに置いた。二人ともそれを見て唖然とする。ああ、フランクフォートの宿”恋するマーメイド”の宿の奥さんで、ポーション屋”マーメイド・グッドバイ”の店長ババアがそんなこと言ってたね。でもそれもう古くなってると思う。なぜならあの後何回も気絶して魔力容量が増したと思うから。
「スネークが気絶していたのは魔力増大訓練をしてたからなんだな! なるほど腑に落ちた!」
いやいや、あーた、今魔力増大訓練をしようとするなよ?
「スネークちゃんの魔力量がわからないとなると、ボーデンさんの魔力量3万を基準にしてこの玉の魔力総量は21万ということになりますが、それはあり得ません」
「どうしてそう思うの?」
「私は昨年魔力総量がもうすぐ90万を超えると言われたからです。以前はこの玉に込められる量は1つだけフルにすることができる程度でした。つまり……」
「つまり……?」
「この玉一つで100万の魔力容量があるということです。スネークちゃんの100というのは100万と見た方がいいでしょう。それを踏まえると、ボーデンさんの魔力は12万から15万、最低でも10万は越えているものと思われます」
「そんなに? 魔力量が少なくても3倍になってる!?」
「私も倍になっているからそれくらいはできそうです」
「私も後で試してみることにするか。それでスネークに相談というのはだな、二つある」
なんやろ?
「フランメたちが起きたら、食事をして出発しようと思うのだが」
ふむ。
「一つは馬上で簡単に食べられる料理はないかというものだ」
そりゃサンドウィッチでいいんじゃね?
「それだとポーチの中に直接入れて置かないといけないので何かと不衛生になる」
なら、ランチボックスを作ろうか?
「頼む。それともう一点。あの光る玉を松明代わりにしたいのだがあれを片手で持っていると手がふさがってしまうのでどうにかできないか?」
なるほど。懐中電灯(電気はないけど)みたいなのが必要なのね。ようがす。それも作りましょう。
「頼んでばかりで悪いな。あとヴィンはサンドウィッチと出発前の夕食を作ってくれ」
「了解しました」
「隊長、私は?」
「ボーデンは私と稽古だ」
「了解」
ボルちゃんはホント、トレーニングがお好きなようです。
本日はこれにて。
お読みいただきありがとうございます。




