栗毛馬の訓練
いつもはこれくらいの分量だった気がします。
遅い昼食が終わりましたが、寝ている三人が起きてくる気配がありません。
「急に暇になったな」
「だけど、魔力を使った特訓はやれませんしね」
だったら、乗馬を鍛えたらどうだ? 君らの乗ってる馬は汗血馬に比べた体力がないみたいだけど?
「そりゃあのでかい馬に比べたらなぁ」
ボルちゃんの話によると、鍛えて疲労したころに我の回復魔法を使えば鍛える前より強くなるらしいのだが?
「でもどうやって鍛えるんですか?」
そうだね、あの栗毛の3頭は汗血馬たちを怖がっているみたいだし、汗血馬たちに追い回されたら必死で走るだろう? 走って走って疲れ切ったところに我の光魔法を使うというのはどうか?
「でも、3頭いるし……」
1頭は騎馬の状態、もう一頭は何も載せない状態で。2頭を汗血馬に追い立ててもらう。それを何セットか繰り返したらいいんじゃね? 残った二人は見張り続行で。汗血馬たちには我が乗ります。
「なんだかわからんが暇よりいいか。よし、やろうぜ!」
こうして、汗血馬はⅤ3号、栗毛の1頭にヒーちゃんが乗り、もう一頭をお仲間にします。よし、頼むぞⅤ3、あいつらを追い立てて鍛え上げてくれ! Ⅴ3はぶひひひひーーーーーんと嘶きました。うむ、いい返事や! それじゃ、先頭を頼むぞ、ヒーちゃん。
「おう、任しとけ!」
こうして、坂道を駆け上っていきます……やはり登りは相当きついようですが、後ろから汗血馬ちゃんが追い立てますので栗毛の馬は一生懸命走らざるを得ません。走らざるを得ませんが、だんだん足が重くなっていきます………あ、止まった。それじゃここで光魔法や! 癒せ、我の光魔法Lv.1疲れの癒し。元気になったので、また追い立てます。追い立てること5回にして頂上に到着。大体20分ぐらいか。その中で5回光魔法を使ったから、帰りもその感覚で……いや、下り坂だからもう少し早めにかけるか……そんじゃヒーちゃん、下りましょか!
「よし、お前ら! いくぞ!」
坂道を下ります。下りは早いよ!15分もしないうちに着くかもしれない。早め早めに光魔法を使って回復させていきました。下りは8回の回復です。
「それじゃ、次は私の番ね?」
あ、そうなんだけど、馬たちの水を出したって。あと、我、おえっと塩を出します。十分水を飲んだら交代です。汗血馬は技の1号、ヒーちゃんが乗った馬は休憩、誰も載せずにいた馬にカーちゃんが、あと休んでた馬を連れてきて、もう一度特訓。走れ走れー!頂上に着いた! 戻れ戻れー! 休憩したら次交代。乗り手はエマさんで、我は力の2号に。そら走れ走れーーー。頂上に着いたら折り返し戻れ戻れー。これが1セット。これを3セットほど繰り返したところで、だんだん時間がかからなくなってきたことに気づきます。大体40回光魔法をかけたのかな? 最初は1回35分ぐらいだったのが3セット目の最後の方では25分ぐらいに、回復魔法掛ける回数も13回から10回になってきました。ヒーちゃんとカーちゃんも襲歩の騎乗がリーちゃん並みにうまくなったようです。3セット目を終えたとき、ボルちゃん達が起きてきました。大体5時間ぐらい寝てたんですかね?
「みんな揃っているか?」
「全員揃っています!」
「それじゃ報告してくれ。トレーネ、頼む」
「はい、カルラ・トレーネ報告します。隊長たちが寝た後、我らは一度風呂に入り体内の水分を出してポーション過剰状態を解消しました。そのあと昼食。昼食後は騎乗訓練を行いましたことを報告します!」
「ふむ…… それで、あれは何かな?」
「あれはスネークが作成した物であり、本人に説明してもらった方が早いかと。それと無断で額金をお借りしたことをお詫びします」
「ああ、その件はいい。私も失念していた。それでは返してもらおうか。フランメのはヴィンのだろう? ベッドで大騒ぎをしていたからな」
「ああ、黙って借りてすまねぇ、スネークと話をしないといけなかったからな」
「ああよかった。なくしたと思って焦ってしまいました」
「よし、君らも魔力ポーションを固めたものを飲んでくれ、あとは任せろ」
ボルちゃんよ。魔力は増えたか?
「ああ、たぶんな。今までにないくらいの爽快感だ」
魔力が増えると爽快なのかい?そうなのかい?
「すごい増えた感じがしますよ! 早く確かめてみたいです!」
「僕も同感だね! それであの石で出た建物は何?」
ああ、そうそう。平たいのが水洗トイレだ。背の高い二つの建物は水をろ過する施設だね。この辺の水って赤いからろ過したら飲めるかと思って。
「なるほど。水の件は置いておこう。スネークよ。トレーネたち用の魔力飴とやらを作ってくれ」
わかった。そんじゃ3人の持ってる魔力ポーション、全部出して宙に浮かせてくれる? 我、カーちゃんの作った、宙に浮いた水玉3つから水分を抜きます。唸れ、我の金魔法
金魔法Lv.1抽出!
“ン デデデデーン”
“なにをどうされますか?”
宙に浮いたポーション液から水分を抜き取って!
“テ・テ・テ・テーン“
水分を抜き取られたポーションが徐々に落下していきます。最後はコトン、とテーブルに落ちました。
「あ、あたしの額金、ボーデン先輩にお貸しししておきますねーーー」
「ありがとう、バウアー」
「どういたしましてー」
こうして3人は魔力飴玉の飲み込んで気を失った…… 気を失ったエマさんを運んだのはやっぱりボルちゃんだった……




