土用の丑の日
「それで、その{かば焼き}ってのを教えてくれるのか? 」
教えてもいいんだけどさぁ、ウナギのかば焼きやると部屋の中が煙だらけになるんだよなぁ。やるんなら外でやることになるんだが、その前に大将はウナギを捌けるんかよ? あれ、ぬるぬるしてて素人にはきついと思うぜ?
「なに抜かしてやがる? 生まれついての漁師、習い性にいった料理人、ゲバウト・リーベフィッシャー様とは俺のことよ! 」
そうですか、ならいいか。あとはタレと串、炭が必要だが…… タレはやはり味醂がネックですな。ハチミツで代用しますか。なあ大将、炭とか串はここら辺売ってるのか?
「ああ、それならバンブスの串と炭が大量に出回っているから大丈夫だ」
話をしていると、エマさん以外の人たちがやってきた。
「あ、お父さん、新しい料理教わったー?」
「おうともさ、だけど材料がいるそうだ。おまえ、買ってきてくれないか? えーと、炭と串でいいんだったか? 」
あー、あとは山椒があればいいんだが…… 名前なんて言うんか知らんが、スパイスの一種で緑色した、食べると若干舌がピリピリする奴、知らんか?
「未熟なニグラムとは違うのですか? 」
うん。ニグラムとは種類が違うかな? あれは蔓になってたけど、山椒は木になる奴だからね。若い芽も食べられるんだが……
「ひょっとして麻痺の実のことか?」
あれ?麻痺の実なんてあるの? マヒマヒの実じゃなかったっけ?
「マヒマヒの実の木はマヒの実の木と似た種類のやつだな。実が大きくマヒの効果の高いやつがマヒマヒの実だ」
そ、そーだったのかーーーーー!
「マヒの木は、ピぺリタムというのです。東方に行けば普通に生えているそうですが、こちらでは見たことがありません」
「あらそう? ピぺリタムなら抗マヒポーションの材料として取ってあるけど? あれって食べられるんだー! へー、いいこと聞いたわ!」
つうか、香辛料として使ってなかったんかい! 山椒はいいぞー! ウナギのかば焼きに良し、ブタニクに良し、魚に良し! あ、ウナギは魚だった! そんじゃ、ババアはそれもってこいや!




