普通なのに普通じゃない!
短め・・・・・・
ジレーネさんが飲み物を運んできた。ポットがあるからハーブティーだな。我の分もあるかな? とりあえずどんなハーブティーか飲んでもないとな。あ、でもドクダミ茶だけは勘弁な! あんな臭いのはちょっと無理っす! と思ったけど、それではなかったようなので一安心。ティーカップに注がれたのは、焙じ茶のような色をしていた。
「ミスペルティーです」
ジレーネさんが我を見て説明してくれる。ミスペルってこの辺りではよく取れるのかしら。
「ここいらは川に囲まれていますので、日当たりさえよければどこでも実を付けますよ」
ふーん。カップの中身は中々に熱そうですな。我、ちょっとすぐには飲めません。ボルちゃんが一啜りして口を湿らすと、すぐにカップを置いた。
「それで、エクストラハイ以上の魔力ポーションを作っていただけるのかな? 」
「まぁ、そう慌てるでないわ。ちょっと話をしようじゃないか。さっきの大きなあんたが持っているのはなんだい? 光ったように見えたけど?」
「これはー、状態異常を解消するやつですよーーー? おばあさん、私たちに魔法掛けちゃだめですよーーー?」
ボルちゃん、眉を顰める……
「客に状態異常の魔法をかけるとは感心しませんな? どういうつもりか、返答によってはこの店とやらもなくなる覚悟をしていただきたい」
「やれやれ、一番魔力の少ない子を放っておいたのは間違いだったかね? まさかそんなものを持っているとは思いもしなかったよ。状態異常と言っても、ただの躁鬱を激しくするだけの魔法さな」
「なぜ、そんな魔法をかける?」
「そうだな…… おぬしら…… 特にその従魔とやらがどのような性格をしているかを知るため? 」
我? 我の性格を知ってどうするのでしょうか?
「おぬし、従魔というにはおかしなところがあるのう? 従魔というのになぜ従魔契約をしておらぬ?」
げーん! こんなところでばれましたな!
「なぜ、おぬしはお前らエルフに従っている? 」
げげーん! そりゃボルちゃんに頼まれたからだ!
「頼まれただけでこのエルフに従っているのか? 単に利用されとるようにしか思えんが? 」
従っとるわけではないわ! 我は我の意思で動いとるねん! って、おい! 何で我の考えがわかるねん? ババアだからか? いや、いくらババアだからと言って基本人族にはそんなことできるわけ…… あったな。確かヤマンバは<見える>っていうのができてたな。あいつも基本人族って言ってた。ヤマンバと対になるカワンバなら何かそういう魔法なり技能なりある…… のかな?
「…… おかしい…… 魔力を感じないのに、そんなことができるのはおかしいです…… 何かがおかしい……」
ム! ハンナちゃんの灰色の脳細胞が動き出している! 体は子供! 頭脳は大人! まだ閃かないようですな……
「あらあら、何やら剣呑なご様子。川婆様もお客様も落ち着かれたらどうですか? 先ほどいただいたミスペルの実を持ってきましょう。試しにちょっと食べてみたのですが、甘くておいしいですよ?」
ジレーネさんがいったん引っ込んで、籠一杯の果物を持ってきた。それは昨晩我らが宿で見た品種改良したミスペル、そのままであった……




